働き方改革実現のキーワードは「管理職層の動き方」だ(写真はイメージ)


 連載第7回となる今回のテーマは、前回(「業務・マネジメントの見直しで生産性を向上させる」)に引き続き「業務・マネジメントの見直し」である。

 前回は、働き方改革の上位目的である「生産性向上」の定義と、労働投入時間を減らしていくことで生産性を向上させる考え方・視点について解説した。

 前回に説明した“業務量(労働投入時間)低減による”生産性向上の実現キーワードを改めて挙げると、

[1] 「生産性向上」の目的・ゴールの明確化
[2] 仕事の中身および働く実態の見える化
[3] (見える化によって)認識した業務上の問題解決

となる。

 また、業務の問題解決のためには、

(1)仕事量の徹底的な低減(対象を止める、半減する、など)
(2)中の分担の見直し・忙しさの分散化
(3)仕事発生タイミングのコントロール

という3点の実現がポイントだと説明した。

 これらの「仕事の見方・考え方」について、具体的な行動が求められる立場は誰かというと、それは大きな目的・ゴール設定し得るトップマネジメントであり、また職場を管理・コントロールすることがミッションであるミドルマネジメント・管理職層だということはお分かりいただけると思う。

「働き方改革」を論じる有識者(学者、諸官庁政策担当、著名な経営者など)は、そのほとんどが「働き方改革実現のキーワードは、管理職層の動き方である」と言及・提言する。つまり、「働き方改革の成功の鍵」はズバリ、職場の働き方を決める「マネジメントを変えること」と断言して良い。

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管理職はなぜ働き方を改革できないのか

 しかしながら実際には、とりわけ社内・職場の管理職層(部長、課長クラス)が、こういった活動に対して積極的に行動できていないのが現実であり実態ではなかろうか?

 その理由・背景は大きく分けて3つあると考えている。

【1】「管理職の役割定義」に問題がある

 管理職が、自部門の業績向上・成果物レベルアップのために、時間投入して“頑張る”しかないと思い込んでいる。特に日本企業では、管理職が自ら実践するプレイングマネージャースタイルが当たり前化している。“やり方の手本を見せる”ことがマネジメントであり、管理職の職務だということが暗黙の了解になっている。

 大・中小、規模にかかわらず、多くの日本企業では「職場を管理・コントロールする」ことが管理職の重要な役割であるとあまり認識されていないか、あるいは無自覚である印象が強い。

【2】そもそもマネジメント・管理方法の「教育」を受けていない

 オフィスワークに従事するおおよその中間管理職層には、上記のような考え方・視点を学ぶ機会・場がない。製造現場では当たり前の、自部門の見える化や問題解決(改善活動)を実施した経験がない。方法論が分からないため、管理・改善活動に着手できていない職場が多い。

【3】過去の業務改革・組織統合の弊害(管理職負荷オーバー)

 2000年代前半から、業務改革活動による効率化活動では、似たような活動目的の組織を統合し、かつ管理職の権限委譲、管理スパンを拡大することで、意思決定スピードを速める施策を打ってきた。しかし、結果的にマネジメントする対象者数が増えたことや、内部統制やコンプライアンスといった新たな管理業務も追加されたことで、管理職の負担・業務負荷が拡大し、狙いどおりの効果が出ていない職場が多い。

 最近の若い層が「管理職になりたくない」と答える傾向が強くなっている理由もこれにあたると考える。

管理職の意識改革をどう実現するか

 では、どのような対策を講じればいいのか。

 まず、【1】の「管理職の役割定義」だが、「個々にそれぞれ気づいてくれ」ではなく、やはり会社・組織として明確化していくべきだろう。

 例えば、飲食チェーン大手のグルメ杵屋では「働き方改革=意識を変える」と明確に定義している。椋本充士社長は「これからは店長自らが頑張って実績を上げることは期待していない」「店長は教育者であるべき」と役割を明確に伝えている。その理由は明白で、“店長自らの頑張り”や“無理のある働き方”は、アルバイトや他の従業員に良い影響を与えないからだ。会社の事業継続のためには店長クラスの意識改革が欠かせないと位置付け、教育活動や第三者の評価・支援を行っている。

 【2】の教育についてだが、むろんマネジメントスキル向上を図りたい管理職への教育・研修という方法論もあるが、むしろ部署単位で、改善を目的とした会議を定例化する“鍛錬の場”を作ってしまうことが極めて有効的効果的である。

 この場(会議)で取り上げられるテーマは、各部署が取り組む仕事の特性によって様々だが、必ず取り上げるべきテーマは「組織で取り組むタイムマネジメント」である。

 継続していくと必ず「どの仕事の優先度を上げて取り組むのか?」あるいは「優先度を下げるべきなのか?」といった議論になる(下の図)。

 その場合、管理職と部署担当者の考える優先度が異なることが極めて多い。「何が正解」ということではなく、会議を通じてこの差異を埋めていくことで、組織的優先度を決める、あるいは管理職の意識向上や優先度指示といった具体的行動を促進するのだ。

 また、この会議を通じて、【3】の「管理職の負荷オーバー」という課題にも取り組んでいただきたい。例えば、何もかも管理職が抱え込むスタイルから、一般担当者に割り振れる仕事を探したり、次世代リーダーにあえて管理職の仕事を委嘱することを試みるのも可能だ。

 現在の職場は10年前、20年前のそれとは大きく異なる。仕事の特性の違いに加え、そこで働く従業員の働き方意識も様々だ。そこには男性・女性がおり、雇用形態の違い、ライフステージの違い、経験やスキルの違いなど、実に多様である。その場で仕事の管理職の成功体験が活かされるとは限らない。抱え込まず、できるだけ「任せる」「考えさせる」ことを進める行為が管理職には求められる。

 働き方改革の要諦は、中間管理職の「意識改革」を組織的に図り、“場(例えば改善のための会議)”を通じて管理職の意識改革とスキルアップを実践させること、このようにまとめたい。“場”の定例化は、マネジメント・PDCAを回すエンジンとなり、またそこに所属する従業員自らのチェック・アクションを促進するアクセルともなり得るのだ。

筆者:田中 良憲