アディダス社の最新工場「スピードファクトリー」がいま注目を集めています。この工場は「第四次産業革命」の一端を担うとまで言われていますが、その理由とはなんでしょうか? 今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で現役コンサルタントの梅本泰則さんが、その「スピードファクトリー」について詳しく紹介しています。

スピードファクトリーが指し示すこと

「インダストリー4.0」という言葉があります。近年ドイツで唱えられ、着々と実行されている産業政策です。日本では「第四次産業革命」と呼ばれています。遅ればせながら、我が国もその「革命」に向かって歩みを進めているところです。

小学館デジタル大辞泉には、第四次産業革命とは、

ドイツの産官共同プロジェクトが提唱した、新たな産業高度化の概念。蒸気機関を第一次、電気機関を第二次、製造業の自動化を第三次の産業革命とみなし、インターネットを通じてあらゆる機器が結びつく段階を第四次の産業革命と位置づける。

とあります。詳しいことは勉強をしていただくこととして、実は、その革命はスポーツ業界にも及んできているのです。ですから、このことはあなたのお店の将来に関係のないことではありません。その証拠に、今月の日経ビジネス誌に、ドイツの「インダストリー4.0」の特集が組まれました。その中で、アディダス社の「革命」が詳しく紹介されています。どんな「革命」かというと、「スピードファクトリー」のことです。

あなたも「スピードファクトリー」のことは以前から話題になっていますのでご存知でしょう。ドイツ国内に建てられたアディダス社の最新工場ですね。この工場で行われていることが、いわゆる「革命」の一端をになっています。この工場では、スポーツシューズが3Dプリンターによって製造されるからです。

そして、「スピードファクトリー」では、1足ずつ異なったシューズが生産できます。しかも、デザインから完成までに数日というから驚きです。そのうえ、決して高価格にはしない予定だとあります。なんでも、年内には生産を始め、来年には本格稼働するそうです。スポーツシューズが完全オーダーメイドの時代になります。まさに「革命」です。

■オーダーメイドのシューズ

なぜそれが「革命」なのでしょう。

今、「KiBERA(キビラ)」という新興ブランドの婦人靴が評判になっています。セミオーダーの靴で、左右別々のサイズで注文できるそうです。しかも、価格は9,900円。安いですね。

人間の足のサイズは、左右同じとは限りません。ですから、市販のシューズを買ってきても、両足がピッタリすることはまず無いです。そのため、スポーツショップでも、インソールを加工して足に合わせるというサービスを提供しているお店もあります。

とはいえ、「KiBERA」のように、左右別々のサイズで売ってくれることはありません。それを、とうとうアディダスは実現してしまいます。それも、足にピッタリさせるだけでなく、形や重心までも一人一人変えられるようになりそうです。

しかも、デザインから完成までに数日というのは驚き以外の何物でもありません。今のシューズの製法では、最低でも1年はかかるからです。それに、工場の生産ラインを効率よく動かすとなればおそらく1デザイン1,000足以上を作る必要があります。それを「スピードファクトリー」は、一足から生産できるのです。

実に時代の変化が速いことを思い知らされます。かつて、米国の未来学者アルビン・トフラーは「富の未来」でこう予言しました。

知識工作機器の性能が高まり、SF映画でしか話題にならない荒唐無稽な技術が荒唐無稽ではなくなる。

つまり、SF映画に登場する立体映像やバーチャルリアリティー、空飛ぶ自動車、人間型通訳ロボット、ロボット医師などのことを言っています。これらは、まさに「インダストリー4.0」の世界です。3Dプリンターによる製造も、その一つに数えられます。

■手に届く未来

ということで、時代は確実に未来に追いついてきました。ですから、日本のスポーツメーカーさんも、うかうかとはしていられません。

アディダス社は、「スピードファクトリー」の開発に当たってドイツ最大の重電メーカー「シーメンス」とドイツ一のソフトウエア企業「SPA」の協力を得ています。ここが大きなポイントです。

それに負けじと、ナイキ社もアディダスのような「カスタマイズ」製品の開発に力を入れています。アメリカにも「シーメンス」や「SPA」に匹敵する企業はたくさんありますから、いずれ「スピードファクトリー」のようなものが出てくるのは、間違いありません。

一方、日本のスポーツメーカーさんはどうでしょう。すでに何らかの行動に移しているでしょうか。直営店を作ったり、アスレジャー市場に力をいれることも良いですが「革命」に参加することも必要です。それが、メーカーさんの本来の仕事なのではないでしょうか。

そうすれば、プレーヤーそれぞれの技術や好みに合わせた商品を提供していくことができます。さらには、「デジタルブラジャー」のような用具で集めたトラッキングデータと組み合わせれば、選手の能力向上やけがの防止にもつながって行きます。その結果、スポーツがさらに盛んになっていくと思うのです。

そして、スポーツシューズばかりではありません。いずれ、3Dプリンターで、選手一人一人に合わせた野球バットやテニスラケットなど他の用具を製造することも可能になることでしょう。日本にも「シーメンス」や「SPA」のような優秀な企業はあります。ぜひ、それらの企業と手を組んで「革命」的な商品を開発してもらいたいものです。

そして、その未来はもう手の届くところにあります。そうなれば、10年後のスポーツショップの姿もきっと今とは違ったものになっているはずです。そのためにも、「インダストリー4.0」に着目していきましょう。

■今日のツボ■

・「インダストリー4.0 」はスポーツ業界にもやってきている。

・「スピードファクトリー」は、業界の未来を先取りしている。

・スポーツショップも、その「革命」に着目していくことである。

image by: adidas news stream

出典元:まぐまぐニュース!