『打ち上げ花火』不発の一方で『キミスイ』は大健闘 SNS時代のティーンの映画の選び方

写真拡大

 お盆休み明けの先週末、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』と『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』、夏休み中のティーン層から20代を主なターゲットとする期待作2本が公開されたことで、「2017年の夏休み映画」が一通り出揃った。

ランキングはこちら

 動員でも興収でも堂々初登場1位を飾ったのは、HiGH&LOWプロジェクトの劇場版長編映画の第3弾『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』。土日2日間の動員26万6000人、興収3億5150万円という数字は、昨年7月に公開された、今作の直接的な前作にあたる『HiGH&LOW THE MOVIE』との対比で動員は76%、興収は73%。少々目減りしている点は気になるものの、関連作も含めて、EXILE TRIBEのファンだけでなくシリーズの固定ファンもしっかりついていて、近年ヒット作に乏しい配給の松竹にとっては貴重なドル箱シリーズへと順調に発展している。

 一方、岩井俊二監督の実写ドラマをシャフトの新房昭之総監督がアニメ映画化した『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は、土日2日間で動員22万人、興収2億9500万円で初登場3位に終わった。予告編が公開された段階から『君の名は。』との類似が指摘されていた以上、興行面においてもその比較は避けられないだろう。昨年同時期公開の『君の名は。』の初週土日2日間の成績は、動員68万8000人、興収9億3000万円。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』はその3分の1以下の動員と興収ということになる。そしてこの段階で予想してしまうのは少々残酷だが、最終的には250億円以上の興収を記録した『君の名は。』の10分の1以下の成績に終わることだろう。

 まだ記憶に新しい『君の名は。』現象。累計興収250億円という記録は世代、性別問わず幅広く支持されなければ成し得ないものだが、公開当初に劇場に押しかけた客の中心的な層は中高生及び大学生、つまり夏休み中の学生だった。本コラムでこれまでもしばしば触れてきたように、現在、ティーン層の一定数の観客は、日常的なレジャーの一環として「友達と映画を観に行く」というのがライフスタイルとして定着している。だからこそ、その層をターゲットとする主に実写のティーンムービーがここ数年量産されてきたわけだが、その「一定数の観客」は限られているため、同じ時期に同傾向の作品が公開されると、どうしても観客が分散してしまう。昨年のこの時期、その層を総取りしたのが『君の名は。』で、その割を食ってしまったのがその前後に公開された『青空エール』や『四月は君の嘘』だった。

 『君の名は。』はただティーン層を総取りしただけでなく、作品を観た後の観客の熱もとても高かった。そして、それがSNSや夏休み明けの学校で伝播していって、前週超えを連発するという異常な高推移で大記録を打ち立てていった。今年の夏休み興行の流れを見ていると、そこまでの熱ではないものの、確実にSNSや口コミが効いて、その層における動員を増やし続けているのが、現在公開4週目に入っていまだトップ5をキープしている『キミスイ』こと『君の膵臓をたべたい』だ。

 既に興収21億円を突破して、今年の少女コミック、及び少女向け小説原作実写映画のトップとなっている『君の膵臓をたべたい』。浜辺美波と北村匠海、主演に抜擢された2人の若手俳優の好演が印象的な作品だが、公開前は決して「客が呼べる」とされている俳優の主演作品ではないこともあって、ここまでの健闘を予想していた人は少なかったはず。自分も作品自体には好印象を持ったものの、作中で炸裂している浜辺美波の魅力は、同年代の同性からの支持を得にくいものなのではないかと読み違いをしてしまった。

 公開後にSNSを見ていて気づかされたのは、黒髪で清楚で優等生タイプでいかにも「おじさん好み」のしそうな浜辺美波が、意外にも同世代の女子中高生からもとても強い共感をもって迎え入れられていることだった。過去の作品を振り返ってみると、主人公の女の子=それを演じる女優への同性からの高い支持というのは、ティーンムービーがヒットする上での鉄則。その上で、10代、20代の一般層の観客にとっての「いい映画」の条件としてお約束の「泣ける」という評判も広まって、『キミスイ』はロングヒットに結びついているようだ。一方、SNSでは『君の名は。』的な作品を期待していた観客から失望の声も上がっている『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』。もちろん、SNSにおける作品の評判が絶対ではないが、特にティーン層においては、同世代の間での評判があっという間に顕在化されて強い影響力を持ってしまうのが、今の時代の怖さである。(宇野維正)