“ネクスト・ムバッペ”を探せ◆屮札螢A編」

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ともに18歳で1億ユーロ超えの値札がついているムバッペやドンナルンマの成功は、U-20の価値を再認識させた。今日のサッカー界で最も資産価値が高い選手は「トップレベルの経験を積んでいる10代」だ。若ければ若いほど大きなお金が動く。早期のトップチームデビューのトレンドは今後ますます加速していくはずだ。ここでは“ネクスト・ムバッペ”となり得るU-20の有望株をリーグごとに紹介。未来のスターを、いち早くチェックしよう。

文 神尾光臣

キエーザ家の教えは文武両道。急がば回れで同世代を追い抜く

Federico CHIESA
フェデリコ・キエーザ
1997.10.25(19歳)175cm/70kg ITALY
フィオレンティーナ

 エンリコ・キエーザ。かつてサンプドリアやパルマ、フィオレンティーナに所属し、セリエA通算138ゴールを挙げて“セブン・シスターズ”時代に主役の1人となったストライカーだ。その息子フェデリコは、父親の特徴をよく受け継いでいる。スピードあふれる縦への突破に、左右両足の強力なキック力。16-17シーズンには27試合出場を遂げトップチームで主力の一角となり、U-21欧州選手権でも活躍したエリートである。しかし、実は育成カテゴリーでは遅咲きの部類だった。フィレンツェ近郊のサッカースクールを経て、10歳でフィオレンティーナの下部組織に加入。ところが同年代には強力なFWがいたため主力扱いではなく、時には1歳下のチームでプレーさせられたこともあった。

 今となっては信じられないが、足踏みには理由がある。キエーザ家の方針がまず学業ありきだったからだ。「サッカーにもきっと役に立つ」という理由でフィレンツェのインターナショナルスクールに通学させ、授業を英語で受けさせるなど学業の面でもハードな道を歩ませた。

 すると、インテリジェンスを鍛えられたフェデリコに転機が訪れる。当時の監督がシステムを[4-3-3]へと変えると、たちまち戦術を理解し守備もこなすウイングとして評価を確立。そしてプリマベーラ(U-19)へと抜擢された彼は、すぐさま同級生たちを追い抜いてトップチームに定着した。人格の成熟に伴い実力が開花。キエーザの血筋は、そうして本物となった。

ウディネ育成部門の最高傑作。ドンナルンマの良きライバル

Alex MERET
アレックス・メレト
1997.3.22(20歳)190cm/82kg ITALY
SPAL

 4年前、ウディネーゼで当時17歳のスクフェットがセリエAデビューを果たし「ブッフォン2世の登場」と世間が沸き立っていた頃、同クラブの育成部門ではプリマベーラに所属する別の若手GKのことが密かな話題となっていた。「スクフェットよりも技術的に完成され、パーソナリティも確立している」。それこそが、アレックス・メレトその人だ。かつてウディネーゼに所属していたハンダノビッチを模範とし、正確なキャッチング技術を誇る正統派GKとして成長。近年はノイアーのようにペナルティエリアを飛び出して最終ラインのビルドアップに加わるプレースタイルが流行りだが、彼は基本的にゴールラインに構える。しかし敵がエリア内に入れば、積極的に前へ出て「ボールにアタックする」。

 15-16シーズンはスクフェットのレンタル移籍に伴い第2GKとなるが、「自分にはプレー経験が必要だ」とレンタルを志願し、16-17シーズンからセリエBのSPALへと活躍の場を移した。すると、これが大きな飛躍へと繋がった。正GKとしてトップチームの公式戦に出るのは初めてにもかかわらず、反応の良さと安定感でシーズンを通して活躍しクラブをA昇格へと導いた。

 3月には、セリエB所属選手としては異例のA代表招集を受ける。次世代の代表正GKを争う相手はあのドンナルンマだが、「彼と違ってトップレベルでの実績はないけれど、少しずつ自分も成長していく」と気後れはない。満を持して、俊英はセリエAへと挑む。

戦術家のサッリぞっこん。玄人好みの守備的レジスタ

Amadou DIAWARA
アマドゥ・ディアワラ
1997.7.17(20歳)183cm/75kg GUINEA
ナポリ

 ギニアのコナクリにあるキリスト教会が運営するサッカーチームで、トゥーレ・ヤヤに憧れて技を磨いた少年がいた。父は教員で、サッカー選手になりたいと言ったら引っ叩かれたのでこっそりプレーしていたという少年は、やがてイタリア人スカウトの目に留まる。その才能に惚れ込んだスカウトは自ら後見人となってまで海を渡らせ、敏腕SDとして知られるパンタレオ・コルビーノが自らレッチェで運営するサッカースクールに紹介した。ナポリ加入1年目にして頭角を現したアマドゥ・ディアワラは、こうして見出されたのだ。

 ポジションはレジスタ。DFラインの前に陣取ってボールを拾う守備寄りのプレースタイルだ。だが、真骨頂はボールを奪った後にある。正確かつクイックなパス出しでフリーの味方へと確実に繋ぐ。シンプルだが高度な技術と戦況判断を要するプレーは、戦術に厳しいイタリアのサッカー関係者をたちまち唸らせた。

 3部のサンマリノから1年でセリエAのボローニャに引き抜かれ、昨夏サッリが指揮を執るナポリへステップアップ。19歳の若者は戦術家の指揮官をも驚かせた。CLグループステージ第3節ベシクタシュ戦で初出場を果たすと、緊張をまったく見せずノーミスで終えたのだ。「CLの試合なのに、まるで木曜日のミニゲームのようだ」。その後、彼は時にジョルジーニョをベンチに追いやり多くの試合で先発起用された。プロデビューからわずか3年。今後、いったいどこまで伸びていくのか。

ホームレス生活から一転…。規格外の逸材、セリエAに見参

Mamadou COULIBALY
ママドゥ・クリバリ
1999.2.3(18歳)183cm/75kg SENEGAL
ペスカーラ

 昨シーズン、ペスカーラのクリバリは最も話題を呼んだティーンエイジャーの1人となった。プロサッカー選手としての公式戦わずか3試合目(!)でセリエAデビューを果たしたシンデレラボーイは、アフリカ難民からホームレス生活を経てペスカーラに拾われた変わり種だ。

 2015年10月、成功を求めて生まれ故郷のセネガルを離れ、移民船でフランスへと流れ着いた。そこからグルノーブルにいた叔母のところに身を寄せたのち、サッカークラブの仲介人を名乗る人物の誘いに乗ってイタリアのリボルノへと渡った。ところがその人物が消息を絶ち、路頭に迷うことになったクリバリはあちこちを転々とするホームレス生活を強いられる。パン1個で1日を過ごすもついにお金が尽きて、テーラモ近郊のサッカー場で野宿していたところを警察が保護。ペスカーラ近郊の青少年養護施設に送られた。そこでサッカーに興じていると、ペスカーラのスカウトマンの目に留まり加入が決定。18歳の誕生日を待って選手登録を行い、晴れてサッカー選手となった。

 もっとも、難民出身選手は彼が初めてではない。同郷のセネガル出身のババカルもクリバリと同じ養護施設に収容された経験を持つ。それでもクリバリが他と異なる注目を浴びたのは、その潜在能力の高さゆえだ。中盤で複数の相手に囲まれてもまとめて振り回すパワーは、経験不足を補って余りある。このまっさらな逸材に質の高い指導を施せば、いったいどこまで化けるのか楽しみだ。

U-20の新世代タレントをリーグごとに紹介!

8月22日(火)公開: 屮廛譽潺▲蝓璽以圈
8月23日(水)公開:◆屮札螢A編」
8月24日(木)公開:「リーガ編」 「特別編:ダニ・セバージョス」
8月25日(金)公開:ぁ屮屮鵐妊好蝓璽編」

Photos: Getty Images