本人が言う通り、良いことも悪いこともあるであろうシーズンで、何を得られるか!? 21歳の異国での挑戦を見守り続けたい。 (C) Getty Images

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 ブンデスリーガ開幕戦。昨シーズンの主力だったメキシコ代表マルコ・ファビアンが負傷で長期離脱したフランクフルトでは、ニコ・コバチ監督が誰を代役として指名するのかが注目されていたが、フライブルク戦でピッチに立ったのは、プレシーズンで好調ぶりをアピールしていた鎌田大地だった。

 
 今夏、サガン鳥栖から移籍した21歳の鎌田は当初、ドイツの全国紙『ビルト』からも「プレシーズンの勝ち組」のひとりとして取り上げられ、以下のように評されていた。
 
「ほとんど知られていなかったが、すぐにその状況も変わった。信じられないほどボールをしっかりと操り、賢いパスを通し、運動量もトップレベル。激しい競り合いで、どれだけできるかが問われるところ」
 
 ただ、DFBカップ1回戦のエルンテブリュッケ(4部リーグ)戦でスタメンとして出場した際、多くの競り合いで負けるなど、フィジカルについて疑問視する声が多く上がったため、ブンデスリーガ開幕戦ではメンバーを外されることが予想されていた。
 
 それだけに、鎌田がフライブルク戦のキックオフをピッチ上で迎えたことを、ビルト紙は「驚き」と評したほどである。
 
 これらの評価に対し、好パフォーマンスで応えられたらベストだったが、デビュー戦の鎌田は残念ながら、見せ場をあまり作ることができないまま、同じく新加入のケビン=プリンス・ボアテングとの交代を命じられて、67分で終わってしまった。
 
 試合後、まず日本人選手がよく指摘する「ブンデスリーガ特有の速さ」について訊ねてみたところ、次のように答えてくれた。
 
「うちがやりたいのは、(ボールを)奪ってからできるだけ速く前に攻めるっていうこと。日本みたいにゆっくりするシーンはなかなかないです。常に切り替えて、スプリントで前に走るというのは、練習からやっています。でも、その部分でまだ身体が慣れてないというか、90分やり通せるという感じではない。やっていけば、身についてくると思います」
 鎌田が語るように、フランクフルトでは「運動量」「1対1の強さ」「素早い攻守の切り替え」が重要視され、必然的に起用される選手には、フィジカル能力が高く、何度も激しい上下動ができることが求められる。
 
 一方で、カウンター以外の攻撃バリエーションは乏しく、相手に守備を固められるとなかなかゴールチャンスを作り出せないという問題を抱えていた。
 
 他の選手のように、鎌田がひとりで状況打開をすることはまだ難しい。フィジカルコンタクトで相手に潰されてしまうシーンも散見される。
 
 ただ、鎌田が前を向いてボールを持つと、そこでタメができ、攻撃のリズムに変化が生まれるのは見逃せない点ではないだろうか。監督の期待も、そこにあるに違いない。
 
 確かにFWで起用されたフライブルク戦では、あまりそうした場面を作り出すことはできず、周囲との連係もかみ合っているとは言い難かった。次節からは、鳴り物入りで加入したボアテングがスタメン起用されると見られている。しばらくは、出場機会が訪れないということもあるかもしれない。
 
 とはいえ、シーズンは長い。まだ始まったばかりだ。本人も、そのことはよく分かっている。
 
「まだまだこれから長いんで、しっかりと……。良い時も悪い時もあるでしょうし、1年間、しっかりとサッカーができたらいいなと思います」
 
 8日20日、鎌田のブンデスリーガでの戦いはスタートした。ここから慌てることなく、少しずつ順応しながら、自分の居場所を作り出していきたい。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。