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text:Fumio Ogawa(小川フミオ) photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

2年連続の「AUTOCAR Awards」

常識やぶりは英国人の得意芸といっていいかもしれない。ジェットエンジンやカーボンファイバーの発明にはじまり、ベントレーのようにレースで速い高級車もまた英国ならでは。

超がつくぐらい高級で高性能なSUVも、ベンテイガとしてベントレーがまっさきに量産化した。

2015年に本国で発表されたベンテイガ。日本でもすかさず発売された2016年に「AUTOCAR」の「AUTOCAR Awards」を受賞している。カテゴリーは「Game Changers」賞。

「ぜいたくさと高性能とSUVの多様性を併せ持った存在で、唯一の、そして最高のラグジュアリー4×4」と受賞理由が述べられていた。

2017年にベンテイガは2年連続で受賞。今回は日本への導入も検討されているともきくディーゼルによってだ。「より好燃費で、より使い勝手がよくなったラグジュアリーSUVで、ガソリンエンジン搭載のW12なみに洗練されている」と評された。

日本でも乗れるガソリンエンジン車は新開発の気筒休止システムを備えた6ℓW12ツインターボを搭載。608psの最高出力と91.8kg-mの最大トルクを発生する。

これに8段オートマティックトランスミッションと、フルタイム4WDシステムを組み合わせている。

メーカー発表の燃費は高速と市街地混合モードという欧州値でリッターあたり11km。全長5150mm、全高1755mm、重量2530kgの車体を持つクルマとしては異例に良好といえる。

ベンテイガが好まれているのは、このうえなくぜいたくなインテリアのしつらえと、他を圧倒する外観的な存在感だけが理由ではないだろう。

大事な操縦性の面でも際立っているのだ。往年の名ドライバー、デレック・ベルがおもしろいことを言っている。

デレック・ベルの「10 tenths」

「AUTOCAR Awards 2017」を受賞したベンテイガ。このクルマはプロのドライバーを魅了するパワーをもっているようだ。

ルマン24時間レースで5回、デイトナ24時間レースで3回優勝し、数多くのF1マシンも操縦したデレック・ベルはベンテイガを気に入っているひとりのようだ。

「わたしはこのクルマの持てる力を出し切った状態で走らせてみたこともあります。プロのドライバーはそういうことをするものなのです。はたしてベンテイガは十分に期待に応えてくれました」

かつてベントレーのプレスリリースで読んだ談話である。

「持てる力を出し切った」という個所は原文では「10 tenths」とある。これはひねった表現で、通常では「9 tenths(10分の9)」という。それだけベンテイガのポテンシャルが高いと言いたいのだろう。

これが強く印象に残っているのは、SUVでありながらそれを(おそらくオンロードで)めいっぱいテストする気にさせたというベンテイガのポテンシャルゆえだ。

W12気筒モデルはトルクのかたまりのような感覚だ。91.8kg-mものトルクを1350rpmから発生しはじめるのだから、たとえ発進時でもジェットコースターが下りに向かうような加速感が味わえるのはとうぜんなのだ。

しかもハンドリングはレスポンシブで、車体のコントロール性はばつぐんだ。車高がそれなりに高いSUVのためスポーツカーのようなロール特性ともちがうが、凡百のSUVとは一線を画す。

大きなトルクを4つのタイヤに配分するフルタイム4WDシステムを持つベンテイガ。トルクのうち60%を後輪が受け持つ設定となっている。

コーナーには気持ちよく入っていき、頂点をすぎたあとアクセルペダルを踏むと出口に向かって後輪が車体を強く押しだす感覚はすばらしいものだ。

日常的に操縦しているうちに、ベルが言う「力を出し切った状態」をちらとでも体験できる機会が訪れるかもしれない。なにはともあれ、街角でも山道でも、一瞬「あ、いい!」と思える瞬間が持てるクルマである。

50年代といま 共通する「あのライン」

ベントレー・ベンテイガは圧倒的な存在感のあるフロントマスクを特徴とする。いっぽうでサイドビューでは、クーペであるコンチネンタルGTを思わせるキャラクターラインが目をひく。

フロントからリアにかけてすっと伸びる直線(パワーラインとベントレーでは呼ぶ)が後席ドアのところで、後輪を強調するふくらみを感じさせるラインと出合う。

思えばベントレーは50年代のコンチネンタルやシルバークラウドあたりから後輪の存在感を強調してきた。それを意識しているのだろうか。

現在のベントレーのラインナップでは2003年に発表された初代コンチネンタルGTで同様のテーマが「再展開」された。これがベントレー車のスポーツ性を特徴づけている気がする。

ベンテイガも同様だ。側面のボリュウム感はたっぷりあるのに、キャラクターラインのおかげで意外なほど軽快感がある。

もうひとつ、デザイン的にみるべきところは、プロポーションのよさだろう。Cピラーが後輪のほぼ上にくるように配されている。それによって均整のとれたスタイリングができあがっているのだ。

「パワーラインとリアホイールのふくらみとすっと落ちるルーフラインがベントレーのスタイリングの特徴」。デザイン部門をひきいるシュテファン・ジーラフ氏はかつて語っていた。ベンテイガも例外ではないかんじだ。

さらにもうひとつ大きな魅力がベンテイガにはある。

ベンテイガ もうひとつの「大きな魅力」

「AUTOCAR Awards 2017」を受賞したベントレー・ベンテイガ。オンロードとオフロードともにこなす実力と、ベントレー車に共通するパワフルともいえるスタイリングが大きな魅力だ。

加えて、このクルマでしか手に入らないものをあげるとしたら、ぜいたくなインテリアである。

ベンテイガのインテリアは、およそ考えつくかぎりのぜいたくな素材で構成されている。アルミニウム、ウッド、レザー、場合によってはカーボンファイバー素材といったぐあいだ。

シートをとっても、使う革の質もさることながら、感触やデザインはユーザーの希望に応じて選択の幅が広い。

ぱんっと張ったレザーが好きなひともいれば、ゆるいかんじの張り方が好きなひとも。またモケットのようなファブリックを好むひともいる。家具とおなじだ。

ダッシュボードの造型はスポーティな印象が強い。運転席と助手席、ふたつの峰ができている。コンチネンタルGTとおなじテーマが採用されているのだ。この雰囲気もかなりよい。

ライフスタイルカーという言葉があるように、ベンテイガは持ち主の趣味性を如実に反映するモデルである。オーダーメイドの余地が多くあるからだ。

内装の仕立てかたはそのひとつ。さらに荷室をどう使うかもベンテイガのオーナーに許された楽しみである。

ゴルフをはじめスポーツに出かける機会が多いひとはできるだけ広い空間を確保したほうがいいだろう。いっぽうピクニックが好きなら、ここにピクニックハンパーを収めて、引き出し式テーブルを設けるオプションを選べる。

いっぽうフライフィッシングが好きなひと向けの仕様もある。4本のロッドケースやネットが収められ、さらに毛針や魚の状況に応じてその場で毛針を巻くためのタイイングキットなどが収納できるのだ。

河原まで降りていくことはないが、近くのパーキングスペースまではできるだけ速く疲れずに行きたい。そんな釣り好きにとってベンテイガはまたとないパートナーになりそうだ。

総括するとユニークな存在感が光るベントレー・ベンテイガ。2017年もその個性で一頭地を抜いた存在だったのである。

https://www.bentleymotors.jp/models/
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