“おなら”なんてただの生理現象だろう…と放置していると、思わぬ病気が隠されていることも…?

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日常的に思わず出てしまう“おならの音”問題だが、前回紹介したおなら芸人・市川こいくち氏が勧める“スカしテク”でかなり改善できることがわかった。

だが市川氏いわく、単純に音や「ちょっとやらかしちゃった」だけでは済まない深刻なケースもあるという。

「昔、ある番組で、おならのせいで恥ずかしい思いを何度もしてきたという20代の女性に話を聞いたんですよ。食べ物に注意しても、ところ構わず出る。『仕事中、自分のデスクでも、接客の時でも出てしまう』と、涙ながらに語っていました」(市川氏)

気恥ずかしい思いもさることながら、一度の失敗がストレスやトラウマとなってしまうケースも少なくない。また、その根本には病気という可能性も隠されているのだ。

「たかがおならで…」は済まないこの問題。これまで多くのおならに悩む人々の相談を受けてきた、埼玉県さいたま市の『心と体のクリニック』院長の大林正博医師「おならは心身ともに自分の健康状態を知ることができるひとつのバロメーター」と語る。大林医師の元には、今も月に平均30人ほどが相談に訪れているという。高校生や大学生など若い人も多い。

■電車も乗れない? 過敏性腸症候群のガス型とは

「最近やたら緊張するとおならが出るな…」「下っ腹がやたら張る」という場合、もしかするとそれは、“過敏性腸症候群のガス型”という病気の一種かも知れない。

「主にストレスや腸内環境の悪化など様々な要因で便秘や下痢を繰り返す“過敏性腸症候群(IBS)”ですが、頻繁(ひんぱん)におならが出たり、ガスで下腹部が異常に張ってしまう症状を“ガス型”と分類しています。

特に緊張する場面などで悪化する人も少なくなく、実際に相談に来た方の中には『大事な会議中にガマンできずにおならをしてしまい、それ以来、またやらかしてしまうのが怖い。さらに、満員電車に乗ると何度も途中下車してトイレに駆け込んでしまう』というケースもある。失敗がさらにプレッシャーやストレスとなって、症状を悪化させてしまうのです」(大林医師)

また厄介なのが、IBSの下痢型とガス型の混合タイプだ。今回20代から40代の男性を対象にしたアンケートの中でも、下記のような深刻な訴えがあった。

「片道1時間かかる通勤の電車の中で、おならと同時に思わず“実”が出てしまい、ぎゅうぎゅう詰めの車内中に強烈な臭いが充満した。周囲の白い目が忘れられず、『またいつかやらかすんじゃないか』と、電車に乗るたびにいつもかなりの緊張感に襲われる」(32歳・男性)

この男性は「元々、人よりおならが多いタイプだとは思っていたが、まさか病気だとは考えもしなかった」という。その後、毎朝電車に乗ることが怖くなり、遅刻も増えて日常生活に支障をきたすように。そこでようやく病院に駆け込み、初めて現状を知ったという。

■常に自分が臭う気がする“自臭症”という病

さらにIBSと併発しやすいのが、“自臭症(じしゅうしょう)だという。精神疾患のひとつで、存在しない臭いを感じてしまったり、「周りの人はきっと臭いと思ってる」など自分の臭いに悩まされる病気。大林医師いわく「自臭症と過敏性腸症候群のガス型の両方に陥っている人も多い」という。

「これまで過敏性腸症候群のガス型と自臭症は全く別の病気とされてきましたが、実際は両方持っている患者さんも多いという報告があります。ガス型の症状としては軽くても、おならが出ることを過剰に心配してしまうようになり、その結果、自臭症にもなりやすい。また、特徴としては、他人の咳払いや鼻をすする(臭いをかぐ)ようなしぐさを見ると『自分のせいだ』と思い込んでしまう傾向があるようです」

この他にも、無意識に空気を多く飲み込んでしまい、おならが出やすくなる“呑気症(どんきしょう)”という病気もあるが、これもストレスが大きく関係しているといわれている。これらは少々極端なケースかもしれないが、病気ということに気が付かず人前で失敗を繰り返し、それが大きな心の傷となって、より状況を悪化させてしまう可能性も十分あるので、早めの治療が大切だ。

大林医師いわく、IBSガス型の治療は整腸剤や漢方・食物繊維の摂取などで腸内環境を改善させると同時に、ストレスを軽減できる環境を作ったり、リラックスすることも大事とのこと。自臭症に至っては、対人関係に対する恐怖や不安、自信のなさも関係しているので、緊張を緩和する薬を使うことも。人の中に入る練習や、「自分は臭い」という思い込みを取っ払って、客観的な視点で状況を把握する治療も行なうという。

「おならなんて、ただの生理現象だろう」と放置するのではなく、気になった場合はまず病院へ行ってみるのもいいだろう。また、根本的に腸内環境を見直すことも重要だ。一般的に腸内の善玉菌が優勢になれば、便もおならもそれほど臭わなくなり、過度に出ることもなくなるという。

「そもそも、肛門から排出されるおならの量は平均して1日100ccから300ccと言われています。その場しのぎで“なんとか誤魔化したい!”と思う気持ちもわかりますが、自分に合った整腸剤を探して試してみたり、食物繊維の多い食材をとってみたりと、根本的に腸内の健康状態を保つように心がけるのが一番ではないでしょうか」(大林医師)

たかが、おなら…されど、おなら…。実はこれほどまで悩んでいる人が多いということ、またその深刻さにも今回の取材を通して改めて気づかされた。

「音を消すテクニックも、知っているのと知らないのではストレスが全然違うと思うんです。それが自信にもなるし、ストレスもちょっと減るんじゃないかなと思います」(市川氏)

音や臭いを軽減するテクニックを押さえつつ、悪循環に陥る前に改めて自分の屁と向き合ってみてもいいかもしれない。

(取材/青山ゆか、鯨井隆正 文/青山ゆか)

●大林正博

さいたま市「心と体のクリニック」院長。うつ病やパニック障害など一般的に知られる精神疾患以外にも、“おなら”に悩む患者も多く診察している http://www.kokorotokarada.net/

●市川こいくち

おならを自由自在に操り、吹き矢やピアニカ演奏などをこなす“おなら芸人”。2017年4月より“福島県住みます芸人”に。「げっきんチェック」(テレビユー福島)ではMCを務める