ボクシング元5階級制覇のフロイド・メイウェザー(40=米国)と、総合格闘技UFCで”同時2階級制覇”を成し遂げたコナー・マクレガー(29=アイルランド)が、8月26日(日本時間27日)に米ラスベガスで激突する。ボクシング・ルールの12Rで行なわれるこの試合は世界中の注目を集めており、両者のファイトマネーはそれぞれ1億ドル(約109億円)と予想されている。

 日本ではDAZN(ダゾーン)で独占中継されるこの”世紀の一戦”を、かつてUFCやK-1で活躍し”変幻自在のトリックスター”と呼ばれた須藤元気氏に大胆予想してもらった。49戦無敗のメイウェザーにボクシング・ルールで挑むマクレガーに勝機はあるのか?


元格闘家。現在は書家、作家、パフォーマー......とさまざまな肩書を持つ須藤元気氏

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「メイウェザーが有利、とみな言っていますが、僕はマクレガーが来るんじゃないかな、と思いますね」と、須藤氏は言う。

 須藤氏はかつて総合格闘家としてUFCやHERO’Sで活躍し、ヒクソン・グレイシーの弟ホイラーにKO勝ち、”地獄の風車”と呼ばれたオランダのキックボクサー、ラモン・デッカーに一本勝ちした実績を持つ。総合格闘家でありながら、打撃しか許されないK-1にもチャレンジし、K-1王者の魔裟斗やアルバート・クラウスと対戦、”韓国のテコンドー王者”金珍優(キム・ジンウ)には、バックハンド・ブローでKO勝ちしている。


「メイウェザーは40歳で、引退して約2年経っています。重量級だと、ある程度年齢がいってもできますが、軽中量級はスピード勝負で、年齢が意外と響くんです。だからこの2人は、イーブンな気がします」

 総合では43歳でUFC王座に返り咲いたランディ・クートゥアや、ボクシングでも49歳でWBAスーパー王座を獲得したバーナード・ホプキンスの例もあるが、ともに重量級だ。

「もちろん、この2年間をメイウェザーがどういった生活をしていたかによっても変わりますが、そんなに走り込みとかはしていなかったと思うんですよね」


■小さいグローブへの変更もマクレガーに有利

「それにグローブも10オンスの予定だったのが、8オンスになりました。8オンスだと総合のオープン・フィンガー・グローブとさほど変わらないんです」

 総合格闘技のオープン・フィンガー・グローブは、相手の腕や体を掴めるように指が出ており、通常4オンスだ。

「僕もK-1のグローブをはめたとき、総合とほとんど変わらなかったという記憶があります。K-1やボクシングのグローブは、指をすっぽり覆うから大きいだけで、拳の当たる部分の厚さはUFCのグローブとそんなに変わらない。そしてマクレガーには一発のパワーがあります。2ラウンドKO予告をしていますが、メイウェザーの目がマクレガーの動きに慣れる前の短期決戦なら、マクレガー勝利もあり得るでしょう」


 UFCフェザー級で”絶対王者”と呼ばれ10年間無敗だったジョゼ・アルドを、マクレガーは得意の左フックで、わずか13秒でKOしている。総合で21勝のうち18のKOがあるが、そのほとんどはパンチによるものだ。

「もちろん、メイウェザーは無敗の男ですから、必ず研究してくると思います。どこまで研究できているのかがポイントですね」


■マクレガーはボクサーにない技術で勝負!

 須藤氏は両者の”離れぎわ”についても指摘する。

「マクレガーが勝つにはクリンチだとか、”キワ”の部分で勝負することですね。普通にオーソドックスな戦い方をしたら、勝てないのはわかっているはずですから、いかに変則的にいくか。ボクシングでは反則になるギリギリくらいのところまで考えていると思います。クリンチの際、ボクサーがやらない、組み技系の人特有の崩し方があるんですよ。わからないようにヒザを使ったりして」

 須藤氏は立ち上がって実演してくれた。


腕とヒザを使って、相手の体勢を崩す。「組み技系」なら、このような手もあると指摘

「クリンチした時に、ボクサーは崩し合いをあまりしませんが、僕がやっていた(レスリングの)グレコローマンだと、こう崩すんです」

 そう言って須藤氏は、腕で相手の頭を制し、ヒザで相手のヒザを引っかけて崩してみせた。

「倒しにいくのではなく、バランスを崩させて、そこでパンチにいくんです」

 クリンチで崩し、そこからアッパーやフックにいくのは総合格闘家が得意な攻撃だ。そして、メイウェザーがマクレガーの挑発に乗り、グローブを10オンスから8オンスに変更することに応じたので、相手のガードの隙間からパンチが入りやすくなった。


「ただ、メイウェザーも百戦錬磨なんで、そういうのに付き合わない頭の良さがあります。メイウェザーは自分を相対化できているからこそ49戦無敗だったんです。若い時は結構KO勝ちしていましたが、年齢がいってKOできなくなってからは『アウトボクシングに徹して勝ちにいく』スタイルに切り替えた。並の選手だと、KOできなくなっても勝負にいったりしてしまうけど、メイウェザーは自分自身のポジションをちゃんとわかっている。

 ですからマクレガーとやるときに『何をやったらリスクがあるか』、相当計算してくるはず。マクレガーが勝つには、その裏をかく戦略・戦術が必要です。だからこそ”総合”的に、ボクシングにないもので戦うことです」

 須藤氏がK-1に出た際も、K-1ファイターたちが見たことのないような戦法で幻惑した。

「最初にK-1に出たとき、僕は”異物”でした。みなキックボクサーなのに、僕は総合格闘家で、打撃ルールだけの試合はしたことがなかった。だから、他の人がやっていなかったことを考え、『背中や後頭部を殴ってはいけない』というルールを逆手にとって、相手に背中を向けて戦ったりしました。ルールの盲点を突くと、相手にとっては想定外なので、結構戸惑う。躊躇させたり考え込ませたりしたら、こっちのペース。マクレガーは意表を突いたりして、メイウェザーをいかに考え込ませるか、ですね。ただそれは、あくまで”飛び道具”。ちゃんとした実力があってこそ奇襲が生きてくるんですが、マクレガーもパンチは強いですしね」


■ボクサーとは違う総合格闘家の”間合い”

「マクレガーのもうひとつの強みは、ボクサーと違う”間合い”です。総合だと蹴りがあるんで、ボクシングより間合いが遠い。で、遠いところから一気に入ってくる。だからタイミングもボクシングとは、ちょっとズレるんです。メイウェザーが、その間合い対策としてマクレガー並みの選手とスパーリングできているかどうかは疑問です。さらに、引退して2年、40歳になったメイウェザーの目がどこまで生きているか、どこまで相手のパンチを見切れるかということもある。マクレガーも目がいいので、そのへんで年齢的な差が出てくるかなと。10歳以上違うので」

 ボクシングと違う、遠い間合いから入ってくるパンチというと、総合格闘家の山本”KID”徳郁(のりふみ)が2004年にK-1ルールで魔裟斗と対戦した際、1ラウンドにダウンを奪ったパンチが、まさにそうだった。また、マクレガーは変則的な構えで、かなり腰を落とし、左右をスイッチしたりもする。

「ただ、マクレガーもかなり試合をしてきているので、彼の独特なクセは、ある程度研究されていると思うんですよね。それとマクレガーが、しっかりしたボクシング技術をどこまで身につけているか。王道のボクシングをやることで、初めて変則が生きるので」


■メイウェザーもKO宣言。まさかの激しい打ち合いも?

 先週、メイウェザーは「プロボクシング初試合のマクレガーと12R判定までいったら負けと同じだ」という意見を、どう思うか問われ、「そうだ。判定までいったら俺の負けだ」とハッキリ答えた。つまり、事実上のKO宣言をしたわけだが、メイウェザーはここ7試合、すべて判定勝ちだ。KOを狙うことで、得意の”鉄壁の防御”にスキができる可能性もある。

「精神的プレッシャーは、メイウェザーの方があるでしょう。5階級を制覇して無敗で引退したのに、ここで負けたら自分のキャリアに傷がつく。そう考えると、追われる側はメイウェザーです。

 ただ、逆にメイウェザーは、KO勝ちならもちろん、KO負けでも評価されると思います。ずっとアウトボクシングをして、引退まで『つまんない試合だ』と言われながらやってきましたが、ここで勝負に出てマクレガーと打ち合いで勝負すれば『こいつは男だ!』って評価されるんじゃないか、と。そういった意味では、まさかの打ち合いが見られるかもしれません。

 そういういろんな可能性があるから、今回の一戦は楽しみです。ジャンルは違いますが、アントニオ猪木vsモハメド・アリ戦みたいになるのか、PRIDEのドン・フライvs高山善廣戦みたいに真っ向から打ち合う肉弾戦になるのか」


■メイウェザーの2ラウンド KOも?

 メイウェザーが宣言通りKOで勝つとしたら、後半だろうか? 1、2ラウンドでのKO勝ちが多いマクレガーは、長い試合になるとスタミナ切れを起こす可能性もある。逆に12R判定勝ちの多いメイウェザーは長丁場に慣れている。

「こればかりはなんとも言えないですね。マクレガーが早い段階で仕掛けてきたら、もちろんメイウェザーはカウンターを狙うでしょう。ボクサーから見たら、マクレガーには甘いところが絶対あるはずですから。メイウェザーの2ラウンド、もしくは1ラウンド KO勝ちの可能性もありますね。そう考えるとワクワクしますよね!」

 もしそうなればメイウェザーの評価がまた、一気に上がるはずだ。

「それでもう、引退撤回して完全にカムバックし、インファイターになって打ち合いをガンガンやるようになったりして。で、パッキャオとも再戦してガンガン殴り合ったり(笑)」

 逆にマクレガーがボクシング・ルールのこの試合でメイウェザーをKOしてしまったら、総合格闘技界にとどまらない、とてつもないスーパースターになるだろう。

「そういう、いろいろな想像が膨らむところが、この試合の面白さです」

 ちなみに、アメリカでこの試合の有料視聴料金は約1万円という高額。それが日本では「DAZN」で27日午前10時から独占生中継され、1ヵ月無料トライアルを利用すれば、このビッグマッチを無料で見ることができる。

「これは見ないわけにはいかないです。まさに、『本物の異種格闘技戦を見るなら、この試合だ!』という一戦ですから」と須藤氏もいまから興奮気味。

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