労働生産性を上げろというけれど……

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残業時間の上限が年720時間、月平均60時間に規制されると、残業代は最大で年8兆5000億円減少する――。シンクタンクの大和総研が、政府が導入を目指す「残業時間の罰則付き上限規制」についてこんな試算をまとめた。

規制が導入されれば、個人消費に影響しかねないとみている。

「雇用者報酬全体を下押しするリスクをはらむ」

「残業時間の罰則付き上限規制」が実現すれば、原則として「年360時間、月45時間」の上限が残業時間に設けられる。繁忙期などには特例が設けられるが、月平均60時間の「年720時間」に制限される見通しだ。

大和総研の試算によると、1人あたりの残業時間が月60時間に制限されれば、労働者全体で月3億8454万時間の残業が減少する。年間の残業代に換算すると、これは雇用者報酬の3%にあたる8兆5000億円に相当するという。

残業時間の削減分を新たな雇用者で補うためには、毎月160時間働けるフルタイム労働者240万人か、毎月100時間働けるパートタイム労働者385万人を確保する必要がある。

しかし、大和総研経済調査部のエコノミスト、小林俊介氏は「労働力率の上昇の余地も限られており、これ以上の大幅な就業者の増加は望みにくい」としており、「労働生産性の上昇は急務であるといえる」と結論付けた。

「残業時間の罰則付き上限規制」は、政府が推進する働き方改革の一環ではあるが、小林氏は「所定外給与の削減を通じて、雇用者報酬全体を下押しするリスクをはらんでいる」と分析している。

なお、大和総研の試算は2017年8月17日に発表した「第194回日本経済予測」で明らかにしている。