旧証券取引所

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 パリから高速鉄道TGVで1時間。ベルギー国境に近いリールは、フランスの北の玄関だ。パリとは異なる建築様式や、老舗パティスリーのゴーフル、展示作品の規模はルーブルに次ぐといわれる宮殿美術館…。パリから日帰り圏内だが、何泊かしたくなるほど、見どころは多い。

 オスマニアン建築が建ち並ぶパリから来ると、リールはベルギーに似て、色彩を感じる町並みだ。さまざまな建築様式が混在しているのも面白いところ。発着する駅も二つあり、雰囲気は対極だ。フランドル駅は、歴史を感じさせる19世紀の建築、そこから歩いて数分の距離にあるユーロップ駅は、メトロに通じるリール・タワーのL字型が特徴の、近代的な建物だ。駅前の広場には、草間彌生さんの花のオブジェが明るい色を添えている。

 フランドル駅の正面からまっすぐ伸びる道を歩くと、オペラ座前の劇場広場にたどり着く。オペラ座の向かい側にあるのが、旧証券取引所。フランドル建築の傑作だ。回廊の内側では古本市などが開かれていて、戦前の新聞などを売っていたり、市民がチェス盤を挟んで向かい合いゲームに興じていたりする。このタイムスリップしたような回廊を通り抜けてオペラ座と反対側に出ると、グラン・プラスがある。別名、シャルル・ド・ゴール将軍広場。第二次大戦後、大統領になったド・ゴールはリールの出身だ。

 この広場から伸びる旧市街にはさまざまな店が並んでいて、そぞろ歩きが楽しい。中でもスイーツ好きが逃せないのは、18世紀創業の老舗パティスリー、メール。店の主役は、創業当初から人気のゴーフルだ。マダガスカルのバニラやピスタチオのクリームなどを挟んだ手作りのゴーフルには、店名のMEERTが刻印されており、お土産に買っていく人の列ができている。ド・ゴールの好物だったとも伝えられている。店の建築様式自体、歴史がにじみ出る重厚なもので、列に並んでいる間も、店内の美しいフランボワイヤンを見上げて楽しめる。サロンが併設されており、焼きたてのゴーフルをその場で食べるも良し、店のウインドーに並ぶケーキでお茶するも良しだ。

 旧市街のもう一つの見どころは、ノートル・ダム・ド・ラ・トレイユ大聖堂。財政難や戦争の影響を受け、今の形に出来上がったのは1999年。ファサードは110枚の“半透明”の大理石で出来ており、この薄い大理石を通して入る光が、内部を神秘的な空気で満たしている。近代的な外見と内側の見事なステンドグラスの対照が、他の教会にはない魅力だ。

 この近くには、1237年に建てられたコンテス施療院もある。いったんは火事で損傷したものの1468年に再建され、17〜18世紀に増築。施療院から孤児院へとさまざまな役割を担ってきたところだ。今は地域の歴史美術館として、食堂や作業場などが当時のままの状態で公開されている。

 そしてリールに来たら見逃せない、もう一つのこの町の誇りは宮殿美術館だ。ルーブル美術館に次ぐフランス第二の規模の作品群が、12,000平米の館内に、年代順に展示されている。フランドル絵画はもちろん、中世からルネッサンス、近現代に至るまでの各国の絵画や彫刻、陶磁器などもゆっくり見ることができる。

(text by coco.g)