「2億2200万ユーロ(約290億円)」

 ブラジル代表のFWネイマールがバルセロナからフランスの名門パリ・サンジェルマン(PSG)に移籍した際に発生する天文学的な移籍金が明るみになったとき、世界中が驚愕したことは記憶に新しいところだろう。


PSGホームお披露目試合で2ゴールと大爆発のネイマール

 たったひとりのサッカー選手の獲得に、本当にそれだけのお金を使う価値はあるのか――。カタールマネーをバックに非常識とも言える金額を投資したPSGに対しては、一部から批判の声も上がったほどである。

 しかし、そんな批判の眼をよそに、さっそくパリを中心とするフランス国内では「ネイマール・フィーバー」が巻き起こり、シャンゼリゼ通りにあるPSGメガストアにはネイマールのユニフォームを求めるファンで長蛇の列。クラブも1日で1万枚以上のユニフォームを販売したことを発表するなど、その熱狂はエスカレートする一方だ。

 とはいえ、サッカーファンがもっとも注目している点は、移籍金の金額でもなく、ユニフォームの売り上げでもなく、ネイマール・フィーバーの過熱ぶりでもないはずだ。

「ネイマールとPSGの相性はどうなのか?」

 FWクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)とFWリオネル・メッシ(バルセロナ)の時代が長らく続く現在、次世代のサッカーシーンを牽引するはずの至宝ネイマールが、まだヨーロッパ制覇もしたことがないフランスのクラブで輝けるのかどうかは、パリサポーターでなくても大いに気になるところである。

 そんななか、8月13日に行なわれたリーグ・アン第2節、ネイマールはアウェーでのギャンガン戦でフランスリーグデビューを飾ると、さっそく1ゴール1アシストと大活躍。初めてのリーグながら、新しいチームでプレーすることの違和感をまったく感じさせない見事なパフォーマンスで、自らの実力を証明してみせた。

 そして迎えた8月20日、本拠地パルク・デ・プランスでの第3節トゥールーズ戦。ネイマールにとっては地元ファンの前での「お披露目試合」となったわけだが、 結論から言えば、この試合は「ネイマール・ショー」とも言うべき最高の舞台となったのだった。

 PSGのウナイ・エメリ監督は前節に続いて昨シーズンから採用している4-3-3を選択し、前線3人には右にMFアンヘル・ディ・マリア、1トップにFWエディンソン・カバーニ、そして左ウィングにネイマールを起用。右からアルゼンチン代表、ウルグアイ代表、ブラジル代表が並ぶ、いわゆる「南米トリオ」である。奇しくもバルセロナ時代のMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)とまったく同じ出身国の並び方だ。

 試合はPSGペースで進むも、一瞬の隙を突かれて18分に失点。PSGは1点のビハインドを背負った形で戦うことを強いられたが、31分に追いつくことに成功する。

 左インサイドハーフのMFアドリアン・ラビオから左のネイマールにパスをつなぐと、ネイマールが中央にドリブルで仕掛けてDFを引きつけ、ふたたびラビオにヒールパス。これをラビオが左足でシュートを放ち、GKが弾いたボールをネイマールがプッシュした。まるで長年プレーしているかのようなコンビネーションを見せ、いとも簡単に自身のお披露目試合で先制ゴールをマークしたのである。

 さらにこのふたりは、その直後にも絶妙なハーモニーを奏でる。中央でボールを受けたラビオがネイマールとのワンツーパスでマーカーを外すと、ラビオがペナルティエリア外から強烈な左足シュートをネットに突き刺して逆転に成功。ネイマールと22歳のフランス人選手との相性は抜群だ。

 2-1として後半を迎えると、69分、PSGはMFマルコ・ヴェラッティが2枚目のイエローカードをもらって10人での戦いを強いられる。ところがその後も、4-1-3-1の布陣で攻撃の手を緩めないPSGの攻勢は続いた。

 74分、ネイマールが右サイドからドリブルで仕掛けると、マーカーのトゥールーズFWアンディ・ドゥロールがたまらずバックチャージ。このプレーに主審は迷わずPKを宣告すると、ネイマールはチームの調和を意識したのか、昨シーズン得点王のカバーニにPKを託す。これをカバーニが決めてPSGは3点目をマークしたわけだが、ここまでの全ゴールにネイマールが絡んだことになる。

 そして試合終盤、「ネイマール・ショー」はクライマックスを迎える。

 MFハビエル・パストーレのスーパーゴールから2分後の左コーナーキック。一瞬ゴール前をチラ見したネイマールが突然、シュートさながらのライナー性のスピードボールをゴール前に入れる。そのボールを左サイドバックのDFレイヴァン・クルザワがジャンピングボレーし、左足のインステップでジャストミート。直後、ネイマールはスタンドに向かって雄叫びを上げた。

 仕上げはアディショナルタイム。ペナルティエリア内でボールを受けたネイマールが華麗な足技で次々とDFをかわすと、最後は振り向きざまに左足でシュートを突き刺し、この日2ゴール目をゲット。これぞネイマールと言わんばかりのテクニックに、満員のパルク・デ・プランスが割れんばかりの歓喜に包まれたことは言うまでもない。

 試合終了後に巻き起こった「ネイマール・コール」は、ネイマールが早くもパリサポーターの心を鷲づかみにしたことの証(あかし)だと言える。サポーターにとっても、それは2012年から4シーズンにわたって「パリの王様」として君臨したFWズラタン・イブラヒモビッチ(前マンチェスター・ユナイテッド)の衝撃度をはるかにしのぐものだったに違いない。

 まだ2試合を消化したにすぎないが、ネイマールとPSGの相性が悪いわけがない。チームメイトにはキャプテンのDFチアゴ・シウバを筆頭に、DFダニエウ・アウベス、DFマルキーニョス、MFルーカス・モウラ、MFチアゴ・モッタ(ブラジル出身イタリア代表)という多くのブラジル出身選手がいるため、チーム内にはポルトガル語が日常的に飛び交っている。

 サッカーのスタイルにしても、ローラン・ブラン監督時代に構築された「プティ・バルサ(小さなバルセロナ)」がチーム内に今も浸透しているため、ネイマールも気持ちよさそうにプレーできている。あとは本人がコメントしているように、もっとコンディションが上がってくれば……。

 PSGのネイマールが途轍(とてつ)もないことを成し遂げる可能性は十分にある。2億2200万ユーロが高いか安いかの結論は、意外と早く出るのかもしれない。

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