あんなに暑かった7月から一転、梅雨に戻ったような8月でしたが、本日8月23日から二十四節気では「処暑(しょしょ)」。すでに暑さもおさまって、爽涼の時をいち早く告げる花が咲き、夕暮れともなれば鳴き出す虫の声が耳にすがしい頃。残暑が幾度ぶり返すとも、今年も過ぎゆく夏を、少し寂しく惜しむ時節です。


陽熱ふたたび来たりて、退くにはしばし待たれよ

8月の終盤にさしかかり、二十四節気で「処暑」となりました。暑さが止むという意味から処暑といい、暑さが落ち着き休まるという意味。暦便覧でも「陽気とどまりて、初めて退きやまんとすればなり」と記されています。
ところが今年は例外中の例外。立秋のころから雨が多く、気温が低い地域も多かった。それなのに、処暑である今日から猛暑がぶり返すという予報も出ています。
しかし、酷暑の日々も、あともう少しの辛抱でしょうか。昼間の蝉の声に夕暮れ後の秋の虫たちの声、一日中虫たちが騒々しいまでに歌を競い合うこのごろ。庭先でやさしく枝を揺らす萩も盛りを迎え、涼しい季節の到来を告げています。今時分はまた、暴風雨にも見舞われやすい野分(のわき)の季節。くれぐれも天候の急変や雷雨にはご注意を。


過ぎゆく季節。萩の風何か急かるる何ならむ

百日紅や木槿など夏の花の艶やかさが日々薄れ、過ぎゆく季節に気づかせてくれる、清楚な花たちが咲き始めています。女郎花や撫子、桔梗など秋の七草の中でも、萩の花の風情は格別。すっと冷涼な爽やかさを次第に帯びて吹く風に、ゆうらりと戯れるようにしなやかに動き、白や紫の豆科らしい可憐な花を咲かせます。
〜萩の風何か急かるる何ならむ〜
これは、萩を題材とした水原秋桜子の句。野分が吹かせる風に急き立てるように去り行く夏を、どこか思わせる一句です。
また、萩は古くから日本人に愛されていて、万葉集に登場する160種の植物中、最も多く歌に詠まれているのだとか。なかでも大伴家持には16首もの萩の歌があるそうです。
〜高円の野辺の秋萩このころの あかとき露に咲きにけむかも〜
萩の名所として名高かった高円山を望みながらでしょうか。家持が、明け方の露にうながされて咲いただろうかと思い描いた萩の花。今は庭に植えられ咲く萩を見つめれば、かつて同じ花が山や野、原や丘でたくましくも涼やかに風に揺れていた、万葉のときへ誘われるようです。


数珠たぐる京の夏の終わりを告げる地蔵盆

大文字の送り火も過ぎた処暑のころ、京都では六地蔵巡りが行われます。京都は、お地蔵さまが多い町。旧街道の出入口6カ所に地蔵菩薩が祀られていて、多くの人が巡拝するのです。
六道で苦しむ人々をも救済してくれるという、たいそう慈悲深い地蔵菩薩。子供を守ることから、同じ時期に行われる地蔵盆は、子供中心の行事になっています。
町の辻に祀られたお地蔵さまをきれいに飾りたて、子供に菓子をふるまったり、子供たちが長い数珠をたぐったり。この地蔵盆が終わったら、新学期まであと少し。夏の最後の思い出に興じる子供たちを、お地蔵さまが優しく見守ってくれるのです。

気温もお天気も不安定で、体調も揺らぎがちだったこの夏も残りわずか。間もなく、学問によし、美食によし、一年で最も過ごしやすい季節・秋の扉が開こうとしています。