今季の浦和レッズはリーグ戦で苦しい戦いを強いられているが、ACL制覇のチャンスはまだ残っている【写真:Getty Images】

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12試合で3勝、監督交代…低迷するレッズ

 浦和レッズの今シーズンのここまでの戦いぶりは、控えめに言っても残念なものだと言わざるを得ない。筆者自身も含めて多くの者がJ1優勝候補に挙げていたチームは、残り11試合となった段階で首位鹿島アントラーズに13ポイント引き離されての7位につけている。

 4月末からのリーグ戦12試合でわずか3勝しか挙げられず、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は7月30日にクラブを追われることになった。長年コーチを務めていた堀孝史が今季末までの指揮を引き継ぎ、成功から遠ざかる一方のシーズンを何とか立て直そうとしている。

 49歳の新指揮官は、2-1の勝利を収めた19日のFC東京戦も含めて就任から3試合連続の無敗を守っているとはいえ、これだけの残り時間でJ1での本格的な追い上げを見せるのは容易ではないだろう。だがチームをアジアでの成功へと導くことができれば、より長期間の指揮を任されるという希望を実現させることも可能かもしれない。

 レッズは23日に行われるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝の1stレグで川崎フロンターレと対戦する。今シーズンを失敗から救い、評価を取り戻すチャンスがアジアにあることは、選手たちも十分に認識している。

 アジア王者への大会が後々まで語り継がれる偉業であることは、先月行われた鈴木啓太の引退試合でも存分に示された。田中マルクス闘莉王やロブソン・ポンテ、ワシントンなど2007年のACL優勝メンバーの多くが再び埼玉に集い、ファンからの敬意をもって迎えられていた。

「リーグ戦やACLで優勝できなければ評価を高められない」(堀之内)

 だが同時に、その勝利からすでに10年が経過しており、レッズがその後ただひとつのメジャータイトルも獲得できていないという事実も改めて浮き彫りになった。今シーズンの選手たちにのしかかる重圧も、これが彼らにとってキャリアで一度だけのチャンスとなる可能性も強調された。

「昨年はようやくルヴァンカップで優勝できましたが、リーグ戦やACLで優勝できなければ評価を高めていくことはできません」と堀之内聖氏は語る。2007年ACLでレギュラーとしてプレーしていた彼は、現在レッズで裏方のスタッフを務めている。

「もちろん、周囲からの称賛を受けるためにタイトルを目指すわけではありません。それでもタイトルの獲得が本当に嬉しい瞬間であることは、今日の啓太や他のみんなを見てもわかったと思います」

「(2008年以降に)一度か二度(ACLで)優勝できて、もっとファンを喜ばせることができていれば最高だったと思います。現実は現実ですが、今年はまだ勝ち残っていて、次は川崎との対戦です。当時と同じ結果を残すことができるかどうか、あとは今の選手たちやスタッフ、サポーターの番です」

 ACLの優勝メンバーではなかったトミスラフ・マリッチも、レッズに栄冠をもたらすことの意味は熟知している。2005年の天皇杯決勝清水エスパルス戦では、73分に決勝ゴールを挙げた。44歳となった彼は、タイトルを手に入れるためには精神面の強さが必要となる場面が多いと感じている。

「チャンピオンになれるかなれないかは、精神の強さで決まることもある。時にはそういう部分も大事になる。欧州のチャンピオンズリーグを見ても、レアル・マドリーとユベントスのような試合は本当に高いレベルの戦いだが、そういう試合もメンタルの状態が勝負を分けることがある。ある場面で1対1の状況に勝つことができれば、それが試合の勝利に繋がる状況かもしれない」

「100年後でも語り継がれる」チームになるために必要なこと

 2007年11月14日には、永井雄一郎がそれを実現させた。セパハンと対戦したACL決勝2ndレグの22分に合計スコアを2-1とする勝ち越しゴールを奪い、レッズを栄光へと導いた。だがその後のレッズがさらなる勝利を積み上げられなかったことには、彼も他の者たちと同じく驚いている。

「あの勝利は何かの始まりになるように感じられましたが、何らかの理由でそうはなりませんでした」と、現在ザスパクサツ群馬に所属するFWは語る。「難しいものですね。それがサッカーです。今年はチャンスがあると思います。2007年には僕らがACLで優勝しましたが、2008年にはガンバに負けてしまって、ガンバがそのまま優勝しました」

「同じ国のチームと対戦する方が難しいんじゃないかと思います。お互いをよく知っていますからね。もちろんどのチームも常にスカウトはしていて、全ての相手について知ってはいますが、知っているレベルが全く違います。だから本当に難しいゲームになりますが、そういう試合に勝つことができれば、さらに上へ行くために大きな後押しになる可能性があります。勢いをつけることがすごく大事かもしれません」

 一方で闘莉王は、観客席から与えられるエネルギーこそが10年前のレッズにとって決定的な意味を持っていたこと、そしておそらくはそれが今のレッズに欠けていることを感じている。「率直に言えば、当時の埼スタはいつも満員でした。今と比べてしまうと、サポーターの熱気には差があると感じられますね」と、J2の京都サンガでプレーする元日本代表のスター選手は語った。

「ファンとチームが本当にひとつになった時には、相手にもそれが感じられると思います。埼玉に来て勝つことはできないと。彼らに囲まれてピッチの中に立つと、選手として本当にリスペクトされていると感じられました。そういうチームを実現するのは簡単ではないですし、そういう選手たちやチームは100年後でも語り継がれるでしょうね」

 それは確かにその通りだろう。今年の選手たちが当時と同じ偉業を成し遂げられれば、リーグ戦での低調な戦いも帳消しとなり、彼らの名前はクラブの歴史に刻まれることになる。

(取材・文:ショーン・キャロル)

text by ショーン・キャロル