99年ぶりの皆既日食 米国横断! アメリカをひとつにしたサイエンス

写真拡大

皆既日食(total eclipse)がアメリカ本土で見られるのは38年ぶり、アメリカ本土西海岸から東海岸を横断するのは99年ぶりとあって、私の周りでも、皆既日食の通り道のホテルやキャンプ場を1年以上も前から予約していたツワモノもいれば、皆既日食の通り道でないシアトルでも、部分日食を見ようと外に出た友人知人がたくさん。おかげで、日食の間はタイムラインが写真で埋め尽くされ、アメリカがサイエンスでひとつになったかのようだった。



アマゾンで販売されていた一部の日食メガネが不良品と発表されて大騒ぎとなったのは日食の約1週間前。日食メガネはどこも完売との報道があり、ある店に別件で電話したところ、「お電話ありがとうございます。日食メガネは完売しておりますので、それ以外のご用件を承ります」というような挨拶をされた。顧客サービスも大変だ。

そして、日食を直接見たら目にどんなダメージがあるか、日食メガネがなくても見られる方法はこれだといった情報が次々と拡散され、当日、メディアは朝から皆既日食で持ちきり。トランプ大統領夫妻がホワイトハウスで日食メガネをかけて空を見上げている映像も主要メディアで流れたが、そこはアメリカ。トランプが日食メガネをかけずに空を見上げて指差している瞬間をとらえた写真も同時にどんどん拡散されて、すっかり新しいインターネット・ミームとなっている。

かく言う私は、日食の2日前からカナダにいて、アメリカでの一連の動きはネットで見ていた。冬季オリンピック開催地にもなったスキーリゾートとして有名なウィスラーのシーズンパスにゴンドラが1日乗り放題という特典が含まれていたので、ハイキングをするためにやって来たのだが、部分日食を山頂で見たい人のために、この日だけいつもより早く営業を開始したゴンドラで、標高6千フィート(1,850メートル)まで上がり、あちこちで太陽を見上げている人たちに混じってみた。

あいにく息子が早朝から体調が思わしくなく長居はできなかったのだが、日食メガネをシェアしたり、手作りの日食観察ボックスを見たりしていると、部分日食のピーク時に太陽がほとんど月に隠れ、赤くて細い三日月のようになった様子に感動した人たちと会話が始まった。

「見た?すごいよね!」「見た、見た」「やっぱり山は寒いね」「やっぱりちょっと暗くなったのを感じる」「これ?日食のタイムラプスを撮ってるんだ」「どこから来たの?」「シアトルから?あっちの方がもっと皆既日食に近いんじゃない?」

赤ちゃんからシニアまで、いろいろな人種が日食メガネをかけて楽しんでいる現場にいて、自然に会話が生まれるって、なんだかいい。

山から降りるチェアリフトに乗っていると、「Eclipse がピークの時に、寒くなったよ。太陽さんはありがたいねえ」と、息子がしみじみ言った。天文ショーを自分の目で見て、肌で感じれば、人間がいかにちっぽけなものかとつくづく感じさせられる。しかし、そのちっぽけな存在が地球を住めない場所にしつつあるほどの破壊力を持っていることもしっかりとリマインドさせられるのだが……。

大野 拓未大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材コーディネート、リサーチ、ウェブサイト構築などを行う。家族は夫と2010年生まれの息子。