福田正博 フォーメーション進化論

 昨年9月から始まったロシアW杯アジア最終予選も、8月31日に埼玉スタジアム2002で行なわれるオーストラリア戦、9月5日にアウェーで臨むサウジアラビア戦を残すのみとなった。


残るアジア最終予選2試合に向け、招集が期待されるC大阪の杉本

 グループB首位の日本代表は、この2試合のうち1勝できれば6大会連続のW杯出場が決まる。しかし、”王手をかけている”という余裕はない。オーストラリア、サウジアラビアと日本の勝ち点差はわずか「1」なのに加え、今の日本代表が”満身創痍”の状態にあるからだ。

 選手のケガやコンディション不良は、サッカーに限らずどんなスポーツにもついてまわる。ご多分に漏れず、日本代表も最終予選が始まった頃からこの問題に悩まされてきたが、現在ほど主力選手が不安を抱えていることはなかっただろう。

 今夏にメキシコのパチューカに移籍した本田圭佑は、ケガの影響でデビュー戦が8月下旬にまでズレ込み、香川真司は6月に行なわれたシリアとの親善試合で左肩を脱臼し、今はまだ回復の途中の段階。同ポジションを争うはずの清武弘嗣は、右太もも裏を痛めて復帰までまだ1カ月はかかるという。

 また、右足首靭帯を負傷した大迫勇也も、復帰が8月末になると見られている。昨シーズン終盤にヒザを痛めて手術した長谷部誠は、8月20日のブンデスリーガ開幕戦でフル出場したものの、何とかプレーできる程度なのか、万全の状態に戻ったのかは微妙なところ。さらに、昨年に日本代表の救世主となった原口元気は、移籍問題からヘルタで構想外ともいわれ、開幕戦は途中出場したもののプレシーズンに満足な実戦の場を得られていない。

 そうした中、守備陣の要である吉田麻也が故障したという情報が8月上旬に入ってきた。これは吉田本人が自身のブログで誤報であると明かしたが、オーストラリア戦を吉田抜きで臨むことになっていれば、”絶体絶命”の状況に追い込まれていただろう。

 日本代表のセンターバック陣はただでさえ層が薄いうえ、代表経験が豊富な森重真人もケガを負って長期離脱中。仮に吉田が本当にケガをしていて出場できず、森重も間に合わないとなったら、前回のイラク戦で代表デビューを飾ったばかりの昌子源が、植田直通や三浦弦太といった代表出場経験のない選手とコンビを組むことになっていたからだ。

 吉田は所属するサウサンプトンで元気な姿を見せているが、故障を抱える選手たちがどの程度まで回復しているのかを見極めることは重要だ。練習に参加できるレベルなのか、試合で激しい動きをしても問題ないレベルなのか。オーストラリア戦を前に招集されたメンバーの状態がよくなければ、必然的に”新戦力”に頼ることになる。

 オーストラリア戦に向けて明るい話題は少ないが、攻撃陣には主力の代わりとなる選手が揃っている。サイドアタッカーのポジションには、宇佐美貴史やスペインで存在感を増す乾貴士がおり、ここ数試合で大迫が担ってきた1トップには、プレミアリーグで開幕2連続ゴールを決めた岡崎慎司が再び起用される可能性が高いだろう。

 岡崎の他にも、マインツの武藤嘉紀やシュツットガルトの浅野拓磨といった若手FWがいるが、今回はセレッソ大阪の杉本健勇を招集してはどうかと考えている。今シーズンは23節終了時点で14得点を挙げ、直近の7戦で8ゴールと絶好調。優勝争いに加わっているチームを見事にけん引している。

 杉本はセレッソのユース育ちで技術も高く、若い頃から注目を集めていた。しかし、これまでは波に乗ると目を見張るプレーをする反面、調子が悪くなると、がむしゃらさが消えて淡白さが目立ってしまっていた。

 それが、今シーズンはどんな試合展開になってもゴールを奪うためのプレーに徹している。身長187cmと高さがあり、体を張ったプレーを厭わなくなっているのも頼もしい。体格に勝るオーストラリア相手には、攻守のセットプレーでも貴重な戦力になるため、岡崎との併用で先発起用させることも視野に入れてもらいたい。

 代表メンバーが集合してから試合まで、他の選手とプレーをすり合わせる時間は少ない。だが、ハリルホジッチ監督が志向する”縦に速いサッカー”は、緻密なコンビネーションを必要としないため、本番までに間に合わせることは十分に可能なはず。

 オーストラリアには過去のW杯予選で0勝5分2敗。次戦は日本のホームでの戦いとなるものの、これまで1度も勝ったことがない相手から勝ち点3を奪うのは至難の業だ。しかし、ここで引き分け以下に終われば、より条件が厳しいアウェーでのサウジアラビア戦で勝利をもぎ取らなければならない。まして、グループA3位とのプレーオフ、その先の北中米カリブ地区4位との大陸間プレーオフに回ることになった場合は、これまで以上のプレッシャーがチーム全体にのしかかることになるだろう。

 日本代表は、グループ下位の国との試合を残しているオーストラリアやサウジアラビアよりも条件は厳しい。決して万全な状態ではない日本代表だが、まずはオーストラリア戦での勝利に全力を傾ける必要がある。8月24日に発表される代表メンバーを含め、ハリルホジッチ監督には今の戦力を最大限に活かすことができる準備を期待したい。

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