鈴木 そうですね(笑)。やっぱりセンターバックには、一番自分が求めている要素があると思います。人間として成長させてくれたり、自分がどんな人間か分からせてくれます。
 
岩政 私の考え方とよく似ていますね。突き詰めて考えるのが好きなタイプですか?
 
鈴木 好きですね。考え過ぎになりがちというか(笑)。岩政さんは、いろいろ考えて戦ってきた人なので参考になります。今は選手として活動以外にもいろいろやられていますよね。
岩政 私の場合、サッカー選手が人生のすべてだとは捉えていませんでした。そもそも、学生時代はプロになれるとは思ってもいなかったので。異色のセンターバックと言われたのも、おそらくサッカー選手が私の天職ではないからでしょう。
 ただ、だからこそ、できることもある。私は大学で教育について学んだので、そういう方向にも興味があります。日本の育成組織で何を伝えればいいのか。それが整理できて体系化できれば、もっと日本全体の底上げができるかなと考えているんです。
 
鈴木 それは、何歳くらいから考えていたんですか?
 
岩政 最近ですよ。鈴木選手は引退後のことを考えますか?
 
鈴木 具体的なアイデアはありませんが、何が自分にとって一番成長できるのかは考えますね。ただ、今は日々の練習を頑張ることに集中しています。先のことを考えずに、全力で取り組めば目的のほうが自分に寄ってくるのかなと。岩政さんはどう思いますか? どうやって自分の道を見つけてきたのか聞きたいです。
 
岩政 見つけた、とは感じていません。今は与えられた仕事や、自分がやるべきことを一生懸命やる。そこに100パーセントの力を注げば、それだけで次につながると考えています。一生懸命の先に道ができていくというか。100パーセントの力を注ぐ姿勢を持ち続けるのが大事。先の自分を描くよりも、それが一番ではないかなと思っています。
 
鈴木 それで今はトライしているわけですね。
 
岩政 そうですね。いろんな場所に顔を出しながら、自分がどうなるのかを見ています。
 
鈴木 めっちゃ楽しそうですね。
 
岩政 楽しいですよ。サッカー選手の時より、楽しいかもしれません。選手の時は、無失点で勝った試合の夜くらいしか、幸せな日がなかったですから(笑)。
 
鈴木 確かに(笑)。
 
岩政 シーズン終了後や優勝後に1年を振り返って「充実していたな」と思うのがセンターバック。それまでは、ひたすら下を向きながら山道を登っているだけ(笑)。今はちょっと違う気持ちです。
鈴木 そうなんですね。周りに左右されず、目の前の仕事を100パーセントでやり続けられるのは凄いな。そういう信念は自分がセンターバックを続けていくなかでも、セカンドキャリアでも必要だなと感じます。
 
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【プロフィール】
鈴木大輔(すずき・だいすけ)/1990年1月29日、石川県出身。各年代の日本代表に選出され、数々の国際大会に出場。2012年のロンドン五輪では、センターバックのレギュラーとして吉田麻也とコンビを組み、ベスト4進出に貢献した。13年に新潟から柏に移籍し、16年にスペインへ。トライアウトでヒムナスティック・タラゴナとの契約を勝ち取り、現在もスペイン2部でプレーしている。
 
岩政大樹(いわまさ・だいき)/1982年1月30日、山口県出身。J1通算290試合・35得点。J2通算82試合・10得点。日本代表8試合・0得点/鹿島で不動のCBとして活躍し、2007年からJ1リーグ3連覇を達成。日本代表にも選出され、2010年の南アフリカW杯メンバーに選出された。2014年にはタイのBECテロ・サーサナに新天地を求め、翌2015年にはJ2岡山入り。岡山では2016年のプレーオフ決勝に導いた。今季から在籍する東京ユナイテッドFCでは、選手兼コーチを務める。