残るは一誌のみ…「小学一年生」-「小学六年生」などの部数動向(2017年4-6月分)
社団法人日本雑誌協会が2017年8月18日付で発表した、「印刷証明付き部数」の最新データ(2017年4月から6月分)を基に、多様なジャンルに渡り、各種雑誌の部数動向を精査し、個々の雑誌だけでなくそれぞれのジャンルのすう勢を精査している。今回は一連の記事の締めくくりとして、小学生向け、さらには幼稚園児向け雑誌の部数動向を確認していく。少子化やメディアの多様化に伴い市場の縮小が危惧される中で、これらの雑誌の部数動向はいかなる動きを示しているのだろうか。

残存誌は「小学一年生」のみ


データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般注意事項、バックナンバー的記事はまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】上で説明済み。必要な場合はそちらで確認のこと。

社団法人日本雑誌協会の公式サイト上でデータが取得できる2008年7月-9月分以降の、「小学一年生」から「小学六年生」までの「印刷証明付き部数」を取得し、その推移を示したのが次のグラフ。「GAKUMANPLUS」は「小学五年生」「小学六年生」の統合・刷新版として登場した雑誌のため、あえて今グラフに含めている(すでに休刊しているが)。また後述する「小学8年生」は印刷証明付き部数が計上されていないので、当然グラフには登場しない。

↑ 小学一年生から六年生の印刷証明付き部数推移(2017年4-6月期まで対応)
↑ 小学一年生から六年生の印刷証明付き部数推移(2017年4-6月期まで対応)

子供は歳を重ねるにつれて好奇心が旺盛になり、また手段や知識が多様化する。そのため定番雑誌以外の雑誌や媒体を求める欲求が増し、保護者もそれに応えるようになる。

昨今では子供が小学生、さらには幼稚園・保育園児の時期からスマートフォンやタブレット型端末を貸し与える保護者も少なくない。子供への情操教育などまで合わせ、子供向けの学習用タブレット型端末をパッケージ化した教育プログラムも多数の関連企業から展開されており(ベネッセの「チャレンジタッチ」が好例)、それらが学習用も兼ねた子供向け雑誌の代替品として扱われる面もある。結果、高学年向け雑誌になるほど購買対象種類は増え、一雑誌あたりの購入部数は減っていく。今グラフではその実情が見事に現れた形となっている。

その上、昨今の雑誌業界全体の不況のあおりを受け、該当雑誌は次々に休刊。かつてこれらの雑誌で育ってきた大人にはショックな話ではあるが、すでに「小学三年生」「小学四年生」「小学五年生」「小学六年生」が休刊しており、これまで発行を続けているのは「小学一年生」「小学二年生」の2誌のみ「だった」。

そして【小学二年生の休刊が公式に発表、残るは小学一年生のみ】でも伝えたが、「小学二年生」も2016年12月26日発売の「2・3月合併号」を最後に休刊。残りは「小学一年生」のみなのが現状。

直近期における前四半期比、つまり季節変動などによる影響がありうる動向は、「小学一年生」ではマイナス42.1%。お世辞にもかんばしいとはいえない。ちなみに季節変動を考慮した上での変化が分かる前年同期比はマイナス37.3%で、低迷感は否めない。「妖怪ウォッチ」特需による部数底上げの影響はすでに無く、再び慢性的な下落基調に転じている。

「小学二年生」の休刊後はその代替…というよりは、「小学二年生」も含めた小学生全体に向けた雑誌とのコンセプトで、増刊号的立場の「小学8年生」が展開を開始している。直近では2017年6月号が4月27日に発売された。付録もあわせ非常にリッチで、部数面でも大いに期待できそうな内容ではある…が、部数公開はなされていない。

幼稚園関連誌を追加し状況を再確認すると…


「小学●年生」の現存誌が現時点では1誌でしかなくなったことを受け、当サイトの一連の記事では幼稚園児向け雑誌を加え、精査を行っている。対象として「入学準備学習幼稚園」「幼稚園」「たのしい幼稚園」の3誌を加え、再構築したのが次のグラフ。タイトルに「など」が入っていることに注意。

↑ 小学一年生から六年生などの印刷証明付き部数推移(2017年4-6月期まで対応)
↑ 小学一年生から六年生などの印刷証明付き部数推移(2017年4-6月期まで対応)

追加した幼稚園関連の3誌の動向を「小学●年生」シリーズと重ねたが、幼稚園向け雑誌では小学生向け雑誌のような、「春に伸び、冬に落ちる」といった年単位での季節変動的な特性は確認できない(ここ数年に限れば「たのしい幼稚園」がややその傾向があるように見える)。一方で、幼稚園児向け雑誌もまた小学生向け同様に、中期的にはその部数を減らしているのが分かる。あえてポジティブにとらえれば、「幼稚園」が下落から横ばいに移行したと解釈できるぐらい。

このグラフから休刊中のものを除外し、記事執筆時点で刊行中のものに限定し、グラフを再構築したのが次の図。

↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園回り(一部)の雑誌・印刷証明付き部数推移(2017年4-6月期まで)
↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園回り(一部)の雑誌・印刷証明付き部数推移(2017年4-6月期まで)

休刊誌による情報ノイズ的なものが無くなり、見た目はすっきりとしたものになった。無論それで刊行中の雑誌の状況が変化するわけでは無く、全体的にはじわじわと部数が削られていく状況が改めて分かる。そして一方で最近における一部雑誌における特異な上昇ぶりが一時的に生じていた、それが直近では失速したのも認識できる。

また、実線は「小学●年生」、破線は幼稚園向け雑誌で構成されているのだが、実線が1本のみの実情には、もの悲しさが募るばかりではある。

ともあれ、部数動向を一層分かりやすくするため、各年の同四半期の動向に絞ってグラフを再構築したのが次の図。季節変動を考慮せずに済む、年ベースでの動向を推し量ることができる。

↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園回り(一部)の雑誌・印刷証明付き部数推移(各年4-6月期のみ)
↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園回り(一部)の雑誌・印刷証明付き部数推移(各年4-6月期のみ)

一部イレギュラーはあるもののほぼ右肩下がりで推移してきた現存誌において、2014年から2015年にかけて、明らかにこれまでとは異なる動きを一部(「小学一年生」「小学二年生」「幼稚園」)で示しているのが一目でわかる。これが「妖怪ウォッチ」特需によるもの。しかしそれ以降はあえなく失速し、再び下落基調に転じている。

また2017年の「小学一年生」の減退ぶりが非常に大きなものであることも確認できる。過去の各誌の最終防衛ライン的な部数は5万部との経験則があるものの、そのラインが見えてきた感は否めない。最後の砦的存在には違いなく、手立てを講じてほしいものだが。



子供向け教材の不調さの一因として良く語られる「少子化」だが、状況として存在する以上、その影響がないわけでは無い。しかし今記事グラフの領域時期に該当する期間中に、幼稚園児や小学生が半減するようなスピードで少子化が進んでいるわけではなく(【小学生や中学生の数の推移をグラフ化してみる】で確認済み)、少子化だけを理由とするのには無理がある。

「小学●年生」で現存しているのは、現時点では1誌「小学一年生」のみ。経験則から死活ラインとなる5万部切れは阻止されているが、直近の部数減退ぶりから先行きは明るいとはいえない。

該当雑誌各誌でも付録の充実化やインターネットとの連動企画の積み増し、現在の子供の趣向に合わせた特集記事の展開やイベントの実施など、努力を重ねているのは間違いない。付録のアイテムの中には、大人でも物欲を駆られそうなものすら登場するほど。

しかしながら現状の手立てでは、状況を改善させるまでには至っていない。ライバルとなるメディア、具体的にはタブレット型端末やスマートフォン、そして【小学一年生・二年生などの子供向け学習雑誌の不調と、ライバルらしきもの】や本文でも指摘した「チャレンジタッチ」のような、競合他社の総合メディア型学習システムに太刀打ちできるだけの訴求力を持ち合わせていないと、保護者に判断されていることになる。しかも今ジャンルでは一様に部数減退を続けており、参考になりそうな雑誌が存在しないのも難儀なところ。

「妖怪ウォッチ」特需を良い経験とし、今後はいかにこのタイプの特需となるネタを活用して部数底上げに活かすか。その施策を断続的に続けることができるか。感度の高い子供市場に向けたレーダーの実装と、即時に対応できる機動力、そして企画力の高さが求められる。子供を育てる立場にある保護者の納得がいくものを創り上げるのはもちろんだが、子供自身が興味関心を抱き、保護者にねだるほどの魅力を創生し盛り込み続けるのも、職人ならではの使命であり、状況改善の道の一つに違いない。

あるいは「小学8年生」が堅調な部数推移を見せれば、その様式が一つの成功方程式となるのだが、部数が非公開では、外部からはその精査もかなわないのが実情ではある。