「経費で落とそうか?」 安易な拡大解釈は危険!

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「どこまでが経費として認められるか」、個人事業主であってもサラリーマンであっても、この判断に迷う場面は何度も経験しているのではないだろうか。個人事業主にとって、経費は使い方次第で節税にもなり得るし、サラリーマンにとっては会社のお金として処理できるという認識もあるだろう。しかし、なんでも経費として処理するわけにはいかない。「教えて!goo」にも「食事代が経費になるかどうか」という質問が寄せられている。

■食事もとある条件で交際費に?

質問者はサラリーマンとしての会社に勤めるかたわら、サイドワークとして自営業も営んでいる。この時間の食事代がなんとかして経費にならないか問うている。これに対して、経費にも限界がありむやみやたらな経費の処理に反発する回答が多く寄せられた。

「え!!?? 食事が経費になるのですか?なぜ、人が生きていく上で、最低必要な食事が『経費』になるのですか?それだったら、サラリーマンの食事も必要経費として、認めて貰いたい!」(ImprezaSTiさん)

一方で食事にある条件を付けることで、経費にできるという意見もあった。

「普通飲食代は交際費になります。でも2人以上いなければ交際費と認められません。会社によっては深夜残業のときや休日出勤の場合に福利厚生費で出す場合もあるようですが、毎日はおかしいでしょう」(papapa0427さん)

「通常の食事は、業務に関係なく必ず食べるものですから経費にはなりません。業務に必要なものでは無いですもんね。特殊な食事のみ認められる場合があります。業務関係の、、、接待・飲食、残業などで普段の食事が摂れない代わりの飲食等」(sebleさん)

回答者が述べるように、「業務に必要」という条件は、実際には曖昧な線引と言える。なぜ、こうも経費の問題がややこしくなっているのだろうか。

■経費解釈のターニングポイント?「弁護士必要経費訴訟」

経費の解釈や、その条件を探るには、経費化の可否を巡る裁判を紐解いてみるのが良いだろう。そこで、元国税調査官で税理士の松嶋洋氏に解説していただいた。

「2011年に『弁護士必要経費訴訟』という裁判が起こされました。弁護士の経費について問題になった税務訴訟で、従来の個人事業の必要経費について、その通説を覆した判例として知られています。具体的には、従来の通説は、『事業に直接必要な経費しか経費にならない』とされていたものを、直接という要件は不要として、『事業に必要な経費であれば経費として差し支えない』と判断した事例です。直接という要件が不要になれば、従来よりも幅広い経費が認められることになります。従来は取引先との一次会の費用は経費として落ちるものの、二次会の費用は経費にならない、などといったうわさがありました。取引先との関係を円滑にするのであれば、一次会だけで足りるはずであり、二次会までは『直接必要』とはいえない、などといった話もあったのです。『直接』が条件でないのであれば、二次会についても問題なく必要経費として認められるはずであり、この点からも『弁護士必要経費訴訟』のインパクトは大きいと言われています」

要約するならば、従前は経費と事業の因果関係が要求されていたのに対して、この訴訟後には、この2つが緩やかに連関していれば良いと解釈され直したということだ。しかし、松嶋氏は、こうした安易な拡大解釈は、さらなる解釈の隔たりを生む危険があると指摘している。

「このような事例があるからと言って、必要経費を甘く考えると痛い目に遭います。ある税務雑誌に掲載された国税当局の見解を見ますと、この判例は個別事案として説明されているからです。国税が個別事案という言葉を使う場合、それはほかのケースには影響を与えない、ということを意味します。短絡的に考え、この判例によって通説が大きく変わったと宣伝される方もいますが、通説が本当に変わるかどうか、国税当局の対応を見つつ慎重に判断しなければなりません」

「経費で落とす」ということは、自分の財布を傷めずにお金を使えるという魅力とともに、税法上の説明責任やリスクを背負うことだとも認識しなければならない。本当に業務に必要なものか、万が一、国税当局に説明を求められた時には、自信を持って答えることができるか、常に意識するクセを付けたいものだ。

●専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋

東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供中。

ライター 樹木悠

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)