福田正博 フォーメーション進化論

 J1デビュー戦で鮮烈なゴールを決めて以降、ヴィッセル神戸ルーカス・ポドルスキはイライラする姿ばかりが目立っている。


開幕戦以降、ノーゴールが続いているポドルスキ

 ポドルスキは7月29日の大宮アルディージャ戦で初先発すると、0‐0で迎えた後半4分、ペナルティエリアの外から強烈なミドルシュートをゴール右隅に突き刺した。同点に追いつかれた直後の後半17分には、右からのクロスを頭で合わせて勝ち越しゴールを決め、勝利の立役者になっている。

 今年3月に行なわれたロシアW杯予選を最後にドイツ代表からは退いたが、2006年から3大会連続でW杯に出場したストライカーは、年俸6億円ともいわれる実力の片鱗を見せてくれた。

 しかし、その後は苦しい戦いが続いている。

 2試合目の柏レイソル戦はシュート2本に終わり、3試合目の鹿島アントラーズ戦は後半開始直後にエリア内でパスを受け、DFをかわしてシュートを放つなど見せ場を作ったが、無得点のまま途中交代。続くFC東京戦、横浜FM戦でもゴールネットを揺らすことはできていない。

 デビュー戦からポドルスキの試合を観てきたが、彼は相当フラストレーションを溜めているように見える。

 Jリーグ初ゴールの強烈なミドルシュートが印象的だったため、ポドルスキは「ひとりで相手DFをかわして点を奪えるタイプ」と誤解されているかもしれない。しかし、彼はポジショニングで勝負してこそ真価を発揮するストライカーだ。

 デビューからの4試合、ポドルスキが中盤に下りてきてボールを触り、味方とのパス交換からリズムを作って、相手マーカーから逃れるようにしてゴール前へスルスルっと入っていく場面が目についた。自らが中盤に下がった後はボールをサイドで展開させ、その間にゴール前に入ってクロスをヘディングで合わせることをイメージしているのだろう。

 点取り屋としては「さすがだな」と思わせる動き方をしているし、彼の望んでいるタイミングでクロスが上がってくれば、ベストな結果につながりそうなのだが……。味方がそれに呼応できていない。

 攻撃のイメージを共有できていないことが、イライラの原因となっていることは間違いない。しかし、そこはシーズン途中に加入した難しさでもある。

 サマーブレイクでの中断期間があったとはいえ、チームには開幕前から練ってきたスタイルがあるため、ポドルスキが輝くスタイルを一朝一夕で取り入れることは困難だ。ヨーロッパのレベルの高いリーグに属するクラブならば、それに適応できる選手が揃っている。しかし残念ながら、Jリーグには急な戦術の変更に対応できるレベルの選手が少ない。

 それゆえ、世界的なビッグネームとはいえ、ポドルスキのように “使われる”ことで輝くタイプの選手は、Jリーグで本領を発揮するまでに時間がかかる。チームがポドルスキの動きの意図を理解して、彼を「使う」「使わない」の判断ができるようになった時、初めてポドルスキは「気持ちよくプレー」できるようになるだろう。

 本来であれば、ある程度長い目で見る必要があるが、ヴィッセル神戸は8月16日にネルシーニョ監督を解任し、社長も交代するなど揺れている。その中で、ポドルスキを活かすチーム作りを進めるのであれば、ぜひとも攻撃的な中盤のポジションに”世界的なビックネーム”を連れてきてもらいたい。

 サッカーはひとりでは輝くことが難しいが、世界最高レベルの選手がふたりいれば状況を打破することは可能だ。ポドルスキの”相棒”になれる選手を獲得することは、神戸にとってはもちろん、彼の加入で注目度が高まっているJリーグにとっても大きなプラスになる。

 一方で、ポドルスキがこのまま不発で終わった場合、他のクラブが大物外国人選手の獲得に二の足を踏んでしまう可能性が高くなる。2014年に、セレッソ大阪が南アフリカW杯の得点王&MVPに輝いたディエゴ・フォルラン(ウルグアイ)を獲得した時は、他のクラブがその補強失敗を冷笑する雰囲気があったが、同じ轍を踏んでもらいたくない。

 若い選手にとって、海外の大物選手と対戦したり、同じチームでプレーしたりすることで得られる自信は大きい。だからこそ、Jリーグ創設当時のように、複数のクラブに世界的なビッグネームの外国人選手がいるという状況を作ってもらいたいのだ。

 具体的には、ポドルスキ同様にドイツ代表から離れ、今年からアメリカに活躍の場を移したバスティアン・シュバインシュタイガーや、すでに現役を引退したフィリップ・ラーム並みの選手が来てくれることが理想だ。金銭面などを考えると難しいことは承知しているが、Jリーグのファンや選手たちを熱くさせる選手に「ひとまず交渉してみる」くらいの心意気を見せてほしい。

 まずは神戸がその”いい”前例となることで、ここ何年もの間、日本サッカーに漂っている停滞感を打ち破ってくれることを期待している。

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