経済産業省と情報処理推進機構は8月21日、IT業界に関する調査結果を発表した。国を越えたIT人材の獲得競争がし烈化する中、日本に優秀な人材を集めるため、国内IT企業の給与水準や評価制度、採用実態を明らかにする目的で実施された。

対象となった1550社のうち368社と、ウェブアンケートで集まった個人5000人が回答した。

現在年功序列型の企業に所属する人の過半数は「能力・成果重視型」での評価を希望

調査ではIT企業の給与制度を「年功型」、「能力・成果重視型」、「中間型」の三種類に分類。それぞれの企業群における年齢別の給与水準を比較した。成果主義が導入されているアメリカやインドでは30代で年収水準のピークを迎えるが、日本ではどの企業群でもそうした傾向はみられず、どの企業にも年功的な部分があると分かった。

55歳時点での最高年収を見ると、「年功型」も「能力・成果重視型」も800万円台と差は開かなかった。また、それぞれの企業群での最低年収・最高年収の差を見ても、「年功型」は1.4倍、「能力・成果重視型」が約1.6倍と、格差は2倍未満に収まっている。

経産省が昨年実施した調査では、日本のIT企業人材の年代別年収分布は、20代で150万円〜1250万円、50代で100万円〜2250万円だったのに対し、アメリカの20代は114万円〜4578万円、50代でも286万円〜3702万円と、日本よりはるかに幅が大きい。

IT企業は、国内の他の産業と比べて実力主義な印象を持たれがちだが、年功序列による評価が根強いのが実態のようだ。日本では、完全な成果主義で給与が決まる企業は全体の12%しかなく、無回答を除いた残りの85.6%は、程度の差はあれ年功序列をベースにしていた。

ただ、こうした現状を変えたいと思っている労働者は多い。評価方法に関する質問で「年功より能力や成果が重視されるべき」が67%、「年功で上がるよりも、成果が大きいと大幅な給与アップが望める給与制度がよい」が60.7%と、「能力・成果重視型」の評価を望む声が強かった。また、所属企業別に見ると、現在年功序列型の企業に所属する人の過半数が「能力・成果重視型」での評価を希望していた。

やればやっただけ給与に反映される評価方法のほうが、働く上でのモチベーションも上がり、労働者の満足にも繋がるのだろう。調査でも、自社の給与水準が成果主義の人のほうが、現在の給与水準に対する満足度が高くなる傾向が見られた。

情報系学部や専門学校の教育は「即戦力にはならずメリット小さい」との声も

採用に関しては、半数の企業で十分な人数を確保できていないと答えている。同時に、大学の情報系学部や専門学校に対する不満の声も上がっている。

ある企業は、採用した情報系学部出身者のうち、入社時にプログラミング能力が身に付いている人は「3割以下」だったと感じているという。「情報系以外で採用した学生より多少知識がある程度」の実力しかなく、

「情報系の学生でも即戦力にはならないので採用する側から見てメリットが余り感じられません。もっとプログラミング能力を高めるような教育をしても良いのでは?と思います」

と、教育内容の工夫を求めていた。他にも

「基本情報の資格は保有しているが、専門知識が身についていない情報学部系の学生が見受けられる。プログラミングやUNIX系OSの扱いなど実践的な教育に力を入れてほしい」
「ITの専門学校や学部を出ていても数年何を学習していたんだというレベルの人が多すぎる。高専のような即戦力を世の中は求めているように思う」

などの苦言が呈されている。業界の人手不足改善には人材の育成が不可欠だが、若手の育成を担う教育機関での学習内容と企業ニーズとの間には、解離があるようだ。

調査結果を受けて経産省は、「高い能力・成果を持つ人材にはこれまで以上に高い水準の報酬を提示していくことも、我が国IT関連企業において求められるようになってきているのではないか」と分析している。