ヘタフェに移籍した柴崎岳が、スペイン1部リーグデビューを飾った。その開幕戦、対アスレティック・ビルバオ戦にスタメンで出場。後半28分、交代でピッチを退くまで、まずまずのプレイを披露した。

 岡崎慎司、長友佑都も開幕した新シーズンで、下り坂とは言わせないとばかり、元気な姿を見せているが、やはりまず触れたくなるのは柴崎だ。ランキング的にも、技術的にも、欧州最高のレベルにあるスペイン。そこで日本人選手、とりわけ中盤系の選手が活躍する意義は大きい。画期的な出来事だ。

 この嬉しいニュース。来る8月31日と9月5日にオーストラリア、サウジアラビアとの大一番を控えた日本代表にも、勢いとして反映させたいところだが、簡単にはいきそうもない。ハリルジャパンの問題点を垣間見る気がする。

 柴崎が代表選手として最後にピッチに立ったのは2015年10月。テヘランで行われたイランとの親善試合だ。それとて4試合ぶりの出場だった。代表チームから柴崎は、かれこれ2年近く遠ざかっている。

 全10戦中6試合に出場したアギーレ監督時代と比較すれば、監督からの評価の違いは一目瞭然だ。ハリルホジッチからダメ出しされて久しい柴崎。その彼が、2試合のうち1つは必ず勝たなければならない代表チームの大一番を前に、眩しい存在になるとは皮肉だ。間の悪い出来事とはこのこと。代表に招集され、ピッチに立って欲しい思いもあるが、約2年ぶりの代表で、周囲と良好なコンビネーションを保つことができるのかという疑問も残る。

 そうした経緯のある選手を、監督が前言を翻すように、ピッチに送り込んでいいものか。それはそれで問題なのだ。

 セレッソ大阪で、ここ最近、ハイペースでゴールを記録している杉本健勇も、ストーリー的に難を抱える選手だ。過去にハリルジャパンはおろか、代表チームにも一度も選ばれた経験がない。

 センターフォワードは、ここ何試合かでスタメンの座を掴んだ大迫勇也が、怪我から復帰できていないので、席が空いていると言えば空いている。杉本と大迫は、タイプ的にも似通っているので、大迫の代役に杉本をとの声が一部で高まりを見せている。だが、オーストラリア、サウジアラビアとの大一番に、いきなり代表デビューさせていいものか。杉本が代表チームの1トップでプレイする姿は、柴崎が先発を飾る姿以上に、想像することが難しいのだ。

 繰り返すが、これは本番も本番。4年間の中で最も重要な試合になりそうな戦いだ。親善試合なら話は別。弱小相手との公式戦もしかり。どんどん使えと言いたいが、いまはそのタイミングではない。

 これまでの流れでいえば、大迫の穴を埋めるべき選手は岡崎慎司か小林悠になる。ポストプレイを優先するなら、軍配は後者に挙がるが、それとてテストした機会は多くない。

 いまこの時点から、逆算して強化プランを立てるのが代表チームのあるべき姿なのだ。予選突破の可能性が8割ぐらいあったこれまでなら、逆算の始点をW杯本大会に据えてもいいが、日本のチーム力が下降線を辿っている現実を直視すれば、今回はアジア予選のラスト2試合がそれにあたると読んでいなければならない。

 確かに選手の怪我は誤算だが、想定内だと言い切る力が代表監督には欲しい。それが優秀な監督か否かの分かれ目だ。

 少なくとも柴崎の場合は、ハリルホジッチに見る目がないことを象徴する一件とは言えまいか。2年近くも起用しなかった選手が、ヘタフェでいまプレイする姿を見て、何を思っているだろうか。

「海外組>国内組」。それはそうかもしれないが、決めつけすぎはよくない。昨年12月のクラブW杯決勝対レアル・マドリー戦で2ゴールを挙げ、スペイン界隈で、その名を知られるようになった柴崎。テネリフェでコンディション不良に陥り、足踏みしたが、そこから数か月後にはスペインリーグ1部でプレイすることになった。国内組から海外組への転身は、きっかけさえあれば、一瞬にして成せるのだ。

 日本代表監督ならば、レアル・マドリー戦に2ゴールを挙げる力を柴崎が潜在的に備えていること、すなわち、国内組でありながら海外組クラスの力があることを、早くから認識しているべきなのだ。レアル・マドリー戦後ではなく、それよりだいぶ前に、それなりの評価と反応を示していなければならない。代表監督の見る目というのは、そうでなくてはならない。

 もっとも、ハリルホジッチを擁護するなら、かつてに比べ親善試合が激減したことについて触れなければならない。テストする機会は、ここに来て大幅に減っている。

 8月31日のオーストラリア戦にいきなり臨むのは危ない。その前に親善試合を行うべしーーとは、かねてから述べてきたこちらの意見だ。国内組だけでもいい。一度、慣らしておくべきだ、と。代表歴のない杉本健勇に、キャップ1を与えるような試合である。

 かつてたびたび行われた国内組だけで戦う代表戦は、なぜなくなってしまったのか。ハリルホジッチの国内組軽視が原因なのか。協会にマッチメイクする力が足りないのか。そのツケがいま現れている。僕にはそう見えて仕方がない。