「人が旅をするのは到着するためではなく、旅をするためである」

これは、ドイツの詩人・ゲーテによるものだが、本作『50年後のボクたちは』は、まさにこの言葉を体現したような映画だ。

物語の主人公は、14歳の少年ふたり。変人扱いされてる冴えないマイクとヤバい匂いのする転校生チックだ。クラスのはみ出し者同士は、いつの間にか意気投合。夏休みには、無断で借用したオンボロ車に乗って旅へと出発する。

目指すのは、ドイツ語で“地図にのっていない未開の地”を意味するワラキア。つまり、目的地なんかテキトーであり、ふたりにとっては旅そのものが目的なのだ。一生忘れることができない14歳の旅。スクリーンの中でハチャメチャなことをしでかす少年たちに触発され、あなたもかつて抱いていた冒険心が蘇り、彼らと一緒に旅をしているような気持ちになれることだろう。

原作は
ドイツの大ベストセラー小説

この映画の原作は、ドイツ国内で220万部以上を売り上げた大ベストセラー小説『14歳、僕らの疾走』。ドイツ児童文学賞をはじめ多くの賞を総ナメにして、舞台版でも最多上映作品になるなど驚異的なヒットを飛ばした文学作品だ。ドイツだけではなく26ヶ国で翻訳されていることからも、世界中で共感を呼んでいるといえるかもしれない。

14歳という年齢はどこか不安定だ。それは、映画の主人公だけではなく僕ら自身も味わったはず。子どもから大人への階段をのぼる過程では、誰もが内なるエネルギーを持て余したり、好きな異性の前でもどかしい想いをしたり、思い通りにいかない経験を味わったに違いない。だからこそ、この等身大の物語は多くの支持を得ているのだという気がする。

旅は人を成長させる

旅は、いろいろな意味で人を成長させてくれるものだ。それは、単純に視点が拡がるからであり、多くの見知らぬ人たちとの出会いを通じて、これまでの自分の人生には存在しなかった様々なものがインプットされるからだと思う。

ティーンエージャーのマイクとチックもしかり。ふたりは、追いかけてくる警察を振りきったり、ガス欠になったり、野宿をしたり…日常では想像もつかないような出来事に遭遇する。それでも、ピンチを切り抜けて旅を続けることで、たくましく成長していく。

痛快だと思えたのは、自分には興味を示さないクラスメイトの女の子と彼女に恋したマイクの関係が逆転するところ。旅から帰ってきたマイク自身が、もう彼女のことなんてどうでもよくなっているシーンだ。心なしか、マイクの表情が男っぽくなり、身体全体からも自信がみなぎっているようにも見受けられる。旅は様々なことを僕たちに教えてくれるのだ。

作者のアナザーストーリー

これ以上、書くとネタバレになってしまうのでストーリーについてはこのへんで止めておく。最後に、この小説を書いた作家ヴォルフガング・ヘルンドルフについて。

じつは彼、2013年に48歳という若さで他界している。異変に気づいたのは2010年のこと。脳腫瘍と診断され、もともと書きあげていたこの青春小説に加筆する決断をしたようだ。

死を強く意識しながらも、自分自身を疾走するマイクとチックに重ねて、全身のエネルギーを注いで物語を編み出したとのこと。個人的な想像ではあるが、人生の終焉を見据えながらヘルンドルフは、14歳の頃に戻りたかかったのではないだろうか。彼自身が、オンボロ車に乗って、不器用に、まっすぐに、どこまでも走り続けたかったのではないだろうか。

そんな背景をインプットしながらスクリーンに向かえば、よりエモーショナルに物語を堪能できるだろう。

『50年後のボクたちは』
2017年9月16日(土)よりヒューマントランスシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー。公式サイトはコチラ

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