連日トップニュースでグアム危機を伝えるCCTV

写真拡大

 北朝鮮のグアム攻撃予告で米朝関係が緊迫していた15日から中国は、北朝鮮からの鉄鉱石や鉄、鉛、海産物の輸入禁止処置を開始した。これは今月5日に国連安全保障理事会が採択した新たな対北制裁決議に基づくものなのだが、毎回効果があまり感じられないように思える。

 ただ、中国政府は今回の制裁効果に自信を見せているようだ。というのも、すでに中朝国境の丹東へ北朝鮮から入国するトラックの台数が昨年より多少減少したことや、海産物を扱う市場では15日以降値上げ傾向にあるなどが日本のマスコミでも報じられたからだ。どういうことかというと、これらの取材を見ると、市場関係者への取材は隠し撮りではなくマイクを向けてインタビューしていることから中国側は取材を黙認、むしろ、制裁効果をアピールするために容認したのだと推測できるのだ(丹東の街中には制服を着た公安以外にも私服公安が多く配置されており監視の目を光らせている)。

 もっとも、丹東の貿易関係者は、「貿易制限の効果があるのは最初の数か月だけで、すぐに形骸化して抜け穴が出てきていつの間にか元に戻る」と制裁効果は短期的なものであるとの見通しを語っている。

 今回の制裁開始については、中国の官製メディアも盛んに伝えており、中国は国連制裁をしっかりと履行していることをアピールしたいとの中国政府の意向が働いている。

◆国外に北朝鮮対応を盛んにアピールする一方で……

 今回のグアムへのミサイル発射について中国の国営『CCTV』は連日トップニュース扱いで報じてきた。7月の「ICBM」発射のときにはCCTVは、ほとんど報じていないことを考えると実に奇妙に感じるくらいだ。しかし、その内容はと言うと、淡々と北朝鮮がグアム近海へのミサイル発射を発表という事実のみを報じるのみ。ミサイル発射や北朝鮮自体への批判的な論調は見られない。

 また、通過することを予告された日本がアメリカと連携して防衛力を強化している点に触れ、アメリカの軍事力が増しているなど、アメリカについての言及が多い傾向が見られる。

 官製メディアの『環球時報』は、8月11日に「グアムは中国人が旅行しても安全なのか?」というコラムで、現在グアムは危険な状況であり、今や世界中へ旅行することができる中国人がリスクを背負ってまで行く必要はないという結論を研究者や旅行会社など複数の関係者の証言をつなぎ合わせる形で伝えているものの、どちらかというとグアムを危険に晒した北朝鮮への非難ではなく、「他にも行ける国はたくさんある」と呼びかけるような記事だった。

 他にも、人民日報をも含め官製メディアは共通してミサイル発射への批判はなく、15日からの経済制裁については報じているも北朝鮮が危ない、危険という報道はなく、中国人の訪朝を自粛させるような動きもない。現時点でも普通に中国人向けの北朝鮮ツアーは実施されているのだ。

◆一連の報道に見え隠れする中国政府のホンネ

 これら一連の報道を観察していると、中国も北朝鮮に警戒するというより、やはりホンネのところはアメリカ一国のみに強い関心を払っていることが感じ取れる。

 もう1つ官製メディアの報道からにじみて出ているのは、中国人をアメリカや日本へ行かせたくないという中国政府の意思も感じられるように思えてならない。

 というのも、2015年に海外旅行者が1億人を突破した中国だが、これでも全国民における出国者の割合は約7パーセントに過ぎず、今後まだまだ増えていくことは間違いない。

 これまで中間層のガス抜きに海外旅行を活用してきた中国だが、高度成長が終わり中成長時代へ移行し、中国共産党の求心力低下が課題となる中で、中央政府への不満分子となりかねない海外渡航者を減らしたいというホンネがあるのかもしれない。カナダやニュージランドへの移住者も増加しており中国政府は頭を抱えているのだ。
⇒【写真】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=149399

 特に、今年4月15日に「THAAD」配備を理由に韓国への団体旅行を全面禁止にし現在も継続されているという背景もある。『聯合ニュース』によると、訪韓する中国人は昨年比65パーセントほど減少しているという。2016年に、韓国を訪れた中国人の数は、全訪韓外国人の半分以上となる約800万人だ。しかし、仮にこのまま2017年が昨年比6割減となれば、単純計算で500万人近くの中国人が渡航先を他の国や地域へ振り替えることになる。

 2016年グアム島を訪れた中国人は約2万6000人で前年比11パーセント増だ(環球時報より)。韓国へ行けなくなった中国人の代替地がグアムを含むアメリカや日本になるくらいなら低リスクな北朝鮮へ行ってもらいたいというのが中国政府の希望なのかもしれない。

<取材・文・写真/中野 鷹>