画像提供:マイナビニュース

写真拡大

●インフラ以外の企業に気象情報活用を!

近年、社会問題のひとつとして大きく叫ばれるようになった「食品ロス」。これは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品、使い切れず廃棄される食品などのことを指す。この食品ロスの削減に意欲をみせているのが日本気象協会だ。

もともと日本気象協会は、経済産業省の「次世代物流システム構築事業費補助金」を活用した、「需要予測の精度向上による食品ロス削減および省エネ物流プロジェクト」に取り組んでいた。2014〜2015年に実証実験を繰り返し、2017年に事業化を目指すとしていたが、いよいよそれが実現した格好だ。

○人口減少による生産性低下をどうするか

まず、日本気象協会 事業本部 防災ソリューション事業部 専任主任技師 本間基𥶡氏は、「日本の人口が減少傾向になるなかで、いかに生産性を向上させるかが喫緊の課題」だとした。また、単なる人口減少ではなく、生産人口が減ることも大きな問題だと付け加えた。特に“経験と勘”を有した技能者が次々と引退し、国内の生産性に暗い影を落としているという。

そうした生産人口減少を補うものとして「IoT」「ビッグデータ」を挙げたが、「こうしたデータを持つ企業が十分に連携できていないのも問題」(本間氏)。複数の企業間でデータ連携を行っているのは1/4以下なのだそうだ。

では、この課題の多い生産性向上に対し、なぜ気象データなのか。もともと気象データは、電力や鉄道、自治体、海運といったインフラ企業・団体で活用されることが多かった。だが、日本気象協会によると全産業の1/3がなんらかの気象リスクを負っているが、気象データを活用している企業はごくわずからしい。そこで、インフラ企業以外の気象データ活用に向け、食品ロス削減に着目した。

●とうふを扱う企業で成果あり

まず、とうふをメインで扱う相模屋食品との連携実証を開始。とうふは賞味期限が短く、生産リードタイムが2日となる。小売業者からは納入の1日前に発注されることが多く、生産に2日間かかるとうふの製造業者は、見込みで生産しなくてはならなくなる。つまり2日前に100丁とうふを用意していても、90丁しかオーダーがなければ10丁のロスが生じる。さらに、天候や気温によって売れ行きが左右されやすい食品でもある。

そこで、日本気象協会の予測情報を小売業者が活用。小売業者が1日前に発注するのは、需要がどのくらいになるのかより正確に見極めたいためだが、日本気象協会の予測情報を使えば精度が上がる。そのぶん、1日前倒しして発注することで、製造業者側のロスを削減できる。2016年には見込み生産だった製造業者の誤差は8%だったが、2017年には0.4%までになった。一方、小売業者側の需要予測誤差も11.6%から9.2%になったという。

そして、この気象情報に人工知能を組み合わせて、さらに需要予測を高度化。天候や気温などから来店客数予測を行い、小売業者の発注精度向上、品出しの強化、適切な人員配置につなげるという。

○POSデータと気象データの組み合わせ

また新たなサービス構築にも取り組んでいる。それはPOSデータと気象情報との連係。POSデータは“消費者の購買行動”を可視化できる、企業にとって非常に重要な情報だ。販売実績からの需要予測やマーケティングなどに活用されてきた。そのPOSデータと気象情報を組み合わせることで、より需要予測の精度を上げるというものだ。

さらに、「製造」「配送」「販売」分野において、“気象✕データ”により需要予測を行う企業に対し、「eco✕ロジ」導入企業として認定するプロジェクトも開始。ecoはもちろん「ecology」の略、ロジは「ロジスティクス」(流通)のことだ。ねらったのか偶然なのかわからないが、eco✕ロジの「✕」を無視すれば「エコロジ」という発音になる。いかにもエコロジーを連想させるネーミングだ。

さて、日本気象協会といえば、気象衛星による日照量予測を太陽光発電事業者向けに提供するといった、単純な天気情報提供以外の事業を加速させている。今回の商品需要予測事業も、そうしたもののひとつ。前者は再生可能エネルギーの効率化、後者は食品ロスの削減と、メインで扱うのが気象情報だけに、環境問題解決の一助になるものに取り組みやすいのだろう。

最後に、まったくの余談だが、食品ロスを削減するこのサービスが広く普及したら、某テレビ系列の「○腕ダッシュ」の1コーナー、「○円食堂」での食材調達は、ますます苦労するだろうなと、素直に思った。