ヤバイぞ、アジア最終予選5〜杉山茂樹×浅田真樹(後編)

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浅田 オーストラリアに引き分けるというのはかなりあり得る話ですよね。そうすると次のサウジアラビアはどうなんでしょう。


昨年11月に行なわれたサウジアラビア戦は2-1で日本が勝利を収めた

杉山 去年11月のサウジアラビア戦(2-1で日本の勝利)をビデオで見直したんだけど、やっぱり日本の1点目となったPKはハンドじゃないわ。日本の先制点はラッキーだった。そして試合の終わり方を見ると、2対0から2対1にされ、最後は結構、崩されていた。試合の終わり方が全然よくないんです。ホームとアウェーをセットの180分の戦いと考えると、前半戦の戦いは、これは結構ヤバいね、という終わり方なんです。それからだいぶ時間はたったけど、サウジアラビアにとって、感触は悪くないと思う。

浅田 今回の予選を見ていると、日本はすべての試合で先制できているんです。押し込んでいるのになかなか点が取れずに、どうやって守る相手から点を取るか、という時代があったけど、今の日本は先制できている。そういう意味では有利な流れで試合ができているにもかかわらず、結局追いつかれたり、迫られたりする試合をやっています。

 これが若いチームで、勢いもあるけどそういう危うさもある、というのならまだ分かるけど、結構ベテランも起用している。安定感にこそベテランの意義があるというか、そんなバカ勝ちはできないけど、落ち着いて先制したらきっちり試合を締めますというならいいけど、それもない。

杉山 ひと言で言うと、試合運びが大人げない。ベテランが多く出ているわりに、試合運びがドタバタしていて、何かあるとすぐにアタフタする。そこは日本の大問題です。

浅田 ある種、結論的なことを言うならば、別にオーストラリアもサウジアラビアも、ぶっちゃけ、たいしたことはない。今、日本の危機感みたいな部分にフォーカスしているから、ネガティブな話が中心になりますけど、じゃあW杯に行けるのか行けないのかと言われれば、僕は結構、行けると思っているんです。なぜかと言ったら、要は相手もたいしたことがないから。そういう意味で言うと、オーストラリアに仮に勝てなくて、アウェーでサウジアラビアとやることになっても、そんなに泡を食う必要はないというか。

杉山 僕もそう思うんだけど、そういうふうに監督や選手が思っているのかという話もある。選手たちのほうが「そんな簡単な話じゃない」と思ってしまっているフシがあります。だからアウェーで日本がバタついちゃう可能性はあるんですよ。

浅田 オーストラリアに引き分けると、ハリルホジッチは慌てるかもしれない。

杉山 慌てる、慌てる。

浅田 ハリルホジッチは明らかにアジアのことを分かってないじゃないですか。日本人はアジアという枠の中でやっているから、それこそ下の年代の代表時代に中東に行ったことがある選手もいると思うけど、ハリルホジッチにしてみたら、サウジアラビアなんて何がなんだか分からないかもしれない。そのへんもちょっと危うい要素ですね。

杉山 昔に比べて親善試合もすごく減っちゃったから、自分たちの力を確かめる機会がものすごく少ないんです。以前は年間8試合ぐらいやっていたのが、今は5試合ぐらいしかない。だから若手を使う機会もない。

浅田 それはA代表だけの話じゃないですね。今のU-20やU-17は東京五輪があるから明らかに特別扱いされているのですが、現在の代表で若手といわれる選手たちが下の年代だったときも、試合が圧倒的に少なかったから、中東に行ったことがあるという経験も少ないんです。だから、行ってみたら「こんなはずじゃなかった」みたいなことが起こり得る。免疫みたいなものが薄れている感じはすごくします。

杉山 練習試合といえば、8月の20日ぐらいになぜ1試合組まなかったのかという疑問があります。誰がスタメンで出るのかもわからないのに、このままオーストラリア戦に臨むわけですか、と。

浅田 国内組だけでいいからね。

杉山 そう。そういう準備をして、オーストラリアと余裕で引き分けて、「次、サウジアラビアです」というのがシナリオ通りだったらいいんだけど、たぶん、オーストラリアに勝てなかったら国じゅうがパニック状態ですよ。その状態でサウジアラビアに行くとやられる。実力とかではなく、そういうノリが危ないんです。

浅田 メンバーに関していうと、今回の予選は、初戦のUAE戦の大島僚太にしろ、イラク戦の井手口陽介にしろ、遠藤航も含めてもいいのかもしれないけど、わりと斬新な抜擢が、その試合に関しては失敗に終わっているという傾向がある。そこもいい流れじゃないですよね。どんどん裏目に出ている感じがあって、「新しい選手が出てきているから楽しみだ」という雰囲気はないですね。

杉山 メンバーのやりくりも結局、逆算してないんです。来年のW杯をゴールとするのか、今をゴールとするのかはともかく、最強のチームが今でき上がってなければいけないわけですよ。ところが予選の最後にきて全くかたちが見えなくなっちゃった。

 最後のオーストラリア戦、サウジアラビア戦でチームが固まってすっと抜けていくのだったら、「日本やっぱり強いね」と、本大会にも期待ができるけど、場当たり的な対応でここまで来ちゃったから、先発が読める人が3人ぐらいしかいませんというチームになっちゃった。それでも昔なら次から次へと選手が出てきたからよかったけど、今は出てこないから、その意味ではハリルホジッチも気の毒なんだけど。本当は次のワールドカップのほうがもっと心配ですけどね。

浅田 だから本質的に日本のサッカーを強化するということで言うなら、最も理想的なのはここで最終予選を突破しないでプレーオフに回り、あと4試合(アジア最終予選グループAの3位とホーム&アウェーの2試合、北中米カリブ海予選4位とホーム&アウェーの2試合)を戦って勝っていくことですよね。

杉山 逆に本大会を考えたらそっちのほうが期待できますよ。ここでうまいことオーストラリアに勝っちゃったりしてラッキーにも抜けちゃったりすると、学力がないのに試験に通過しちゃったようなものだから。

浅田 難しいのは、相対的に見ればアジアの中ではそんなに日本が弱くないということなんです。だから安穏としちゃうというか、危機感が生まれにくい状況でもあると思う。次の2試合で起こり得るのは、「オーストラリアに勝って出場が決まる」「サウジアラビアに勝って出場が決まる」「どっちにも勝てなかったけど出場が決まる」「プレーオフ」という4つの可能性があるわけですけど、たぶんどっちにも勝てずに出場が決まるという可能性は一番低くて、残りの3つは同じぐらいじゃないかと思っているんです。

杉山 だから、出られるか、出られないかで言えば、出られる確率は大いにあるんだけど、どういうプロセスで行くかが問題でしょう。

浅田 そうなんですよ。だから、負けたほうがいいというつもりはないし、言い方は微妙になるけど、どっちが本当の実力が身につくかといったら、プレーオフに行ったほうがいいと思うんです。

杉山 予選が混戦になるのは、ある意味で楽しいわけですよ。ドーハとかジョホールバルとか、それはそれで面白かった。案外それと似た状態になっているにもかかわらず、報道でもなんでも、目線がずいぶん上なんですよ。そこの反省がないまま通過したら、日本はどんどん弱くなっていくんじゃないですか。

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