クールなイメージが強い彼女だが実際にみせる表情はとても優しい

 アコースティックギターとパーカッションの生演奏のもとで歌い上げる板野友美。AKB48卒業後5年目の夏、自身初のアコースティックライブを終えた彼女は爽やかな表情を見せていた。先日、7年ぶりに写真集を発売することを発表した。「新しい自分を見たい」と思っていたタイミングでオファーがあり、快諾した。なぜ「新しい自分を見たい」と思ったのか。彼女の心境変化を伺わせる出来事は今年5月に発売した新曲「#いいね!」にもあった。これまで多かったダンスミュージックから一転、日常を描いたポップな曲調に挑戦、新たな一面を見せた。今年7月に26歳になった。彼女の心に何が起きているのか。その真意を確かめるべく本人に話を聞いた。

バンドで歌いたかった

板野友美

 激しい雨に見舞われたこの日、都内のホールでファンクラブイベントが開催された。やや緊張した面持ちでステージ中央に立った板野友美。辺りを見渡し一呼吸すると、パーカッションのリズムとアコースティックギターの音色に合わせてゆっくりと歌い出した。自身初のアコースティック編成での歌唱。なぜこのタイミングで生演奏のライブに挑もうと思ったのか。ライブを終えた彼女はこう答えた。

 「バンド編成でのライブは番組の企画ではありましたが、それ以外では経験がありませんでした。実は以前からバンド編成のもとで歌いたいと思っていました。それに向けた一歩としてアコースティックライブに挑もうと思い、最初に披露する場としてファンクラブイベントというアットホームな場所を選びました。今後はバンドを伴ったライブもやりたいですし、最終的には一つのライブでダンスナンバーも、バンドもやれたら良いですね」

 今回のファンクラブイベントは大阪と名古屋、そして東京で開かれた。前者2都市ではアコースティックギターのみ。最終日となった東京ではパーカッションが加わった。それぞれの楽器の音が際立つアコースティックライブでは歌唱に誤魔化しが利かない。そうした環境下で彼女はしっかりと歌い上げていた。ダンスパフォーマンスに頼らない“シンガー板野友美”がそこにはいた。

 「生演奏は、歌う人も演奏する人も呼吸が合わないと、たとえリズムが合って音も取れていても、音が綺麗に聴こえなかったり、聴き辛かったりします。逆にそれがピッタリ合ったら凄く感情移入した歌い方になります。(カラ)オケだったらそういうことは全然感じられなかったりして…。生演奏は楽器の音に心があるような感じで、聴く側も、オケに合わせて歌うよりも感じるものがより大きいと思うんです。バラードは特にそう感じますし、何だか心地良いです。ダンスナンバーもドラムなどでやったら凄くカッコいいと思います。歌っている側も<今の箇所、凄くリンクした>という気持ちになるので、それこそ人間らしさというか、生き物だなと。音楽も生きているなと感じます」

潜在的にあった変化

板野友美

 幼少期はSPEEDに憧れてダンスに目覚めた。幼少期からダンスを始め、小学4年生の時にダンス部に入り、その頃からダンススクールにも通うようになった。実力が認められ、2005年にはそのチームの一員として、『第54回NHK紅白歌合戦』でEXILEのバックダンサーを務めた。その頃、好きだったのはBoAだった。AKB48在籍中にソロデビュー。当時からハウスやダンス系の曲が多かった。それはルーツにSPEEDやBoAを持つ彼女の希望だったのか。

 「昔からダンスナンバーと言いますか、歌って踊れる人に憧れていましたので、ダンスもできて歌もできるようになりたいとデビュー当時から思い、ダンスミューミュージックのようにアップテンポの曲はやりたいと思っていました。それと、ライブをする上で踊って歌える曲をまずは増やしたいとも。なので、自然とソロ曲はアップテンポな曲が増えていきました」

変化が表れた「#いいね!」ジャケット

 バラード系はこれまでもアルバムには収録してきた。しかし、シングル表題曲で劇的な変化があったのは今年5月に発表したシングル「#いいね!」だった。これまでのダンスミュージックから一転、明るいポップス。ミュージックビデオもセクシーさは潜め、私生活を覗き込むような爽やかなつくりになった。

 「『OMG』や『Gimme Gimme Luv』に代表されるように、それまではダンスナンバーでクラブチューンな曲を立て続けにやってきました。実は<こういう曲をやろう>というのはあまり決めているわけではなくて、いっぱい曲を集めて、その中で<この曲をやりたいな>とピンときたものを選んでいます。今回も聴いた曲の中で『#いいね!』が一番ピンときて。とは言っても春だからちょっとポップな楽曲を聴きたいという思いがあったのは確かです。また、私の曲で爽やかな曲はあまりないなとも思っていたので。踊れるナンバーは沢山あるけど、こうした爽やかな曲、異なる曲調があっても楽しいのではないかと思いました。ただ、私のその時の心境が反映されているのも事実です。もしかしたら気持ちの変化が出ていたのかもしれません」

ルーティンからの脱却

板野友美

 「#いいね!」発売後から数カ月後、7年ぶりとなる3rd写真集『release』(講談社)が8月25日に発売されることが発表された。このとき「新しい自分が見てみたかった」とコメントしていたが、なぜそのように思ったのか。

 「AKB48を含めて芸能界で11年ぐらい活動してきて、自分の中で『(写真を)撮られたらこう写るんじゃないか』という私自身のイメージが出来ています。それはポージングもそうですし、顔の表情もそうです。客観的に見えると言いますか。『笑顔はこういう笑顔を求められているのかな』と思ってそういう笑顔をする。自分の中で決めている部分がありました。それは良いことなのかも知れませんが、そのイメージを沿ってしまう私もいて…。そうではなくて、新しい自分の一面が見せられたらいいなと思っていました」

 AKB48在籍当時は自身の描くアイドル像に強いこだわりもあった。しかし、プロデュースされる側であり、加えて、あまりの忙しさに仕事をこなすことで精一杯、自分自身と向き合う余裕がなかった。次第に「AKB48のファンであっても、私のファンではない、自分の名前だけで勝負したい」という思いが強くなった。在籍時は「表現者」だった。ソロはプロデューサーでもあり、歌詞を制作する作者でもあり、表現者でもある。ソロへの道、いま思う事は何か。

「新たな自分が見たい」と臨んだ3rd写真集『release』(講談社)

 「AKB48時代に、もっと自分でプロデュースしたいなと抱くようになり、ソロになってからは色んな自分を出していかなければいけないと強く思い、自己プロデュースを意識しました。実際に、自分で発信していくことが多くなりました。それはそれで良い事でしたが、私の中のイメージや考えを実行していくことで、次第に同じような事になってしまう事もあることに気が付きました」

 「今年26歳になり、誰かにプロデュースしてもらったり、私を誰かに変えてもらったりしたら、また新たな発見があるのではないかと考えるようになりました。曲調にしてもそうだし、自分が好きなことって偏っているから、そうではなくて違う人の力を借りた方が幅広く自分がいられるんじゃないかと、歳を重ねる毎に思うんです。そのときにちょうど写真集のお話を頂いて、私が知らない私が出せたらいいなと思って挑戦しました」

違う「私」と出会えた撮影

板野友美

 過去にソロ写真集を2冊出している。しかし、これまでとは異なり、水着選びや写真のセレクトを含めて全てを委ねたという。

 「実は企画段階で出版社に言われたのは<何を考えているかわからない><人間らしさをもっと見たい><板野友美を追求した写真集にしたい>という事でした。なので、私の内側を見て欲しいと思って撮影の時もあまりカメラを意識しないで自然な私を撮ってもらいました。メイクもナチュラルな感じで、着飾るというよりかは<本当のその人らしい部分が写し出されたら良いよね>という話のもとで撮影に挑みました」

 「これまでの私だったから一緒に写真を選んでいました。でもそこも含めて全部お任せしました。自分自身で選んでいないから<こういう顔が良いんだ>と思いましたし、写真を撮られるときの自分のキメ顔のようなものに慣れていましたから<こういう表情も自分の中にあるんだな><私ってこういう一面もあったんだな>と思いましたし、見ていて新鮮で楽しかったです。今のありのままの私の全てがそこに写し出されていると思います」

 自身のさら出すことは勇気がいることだ。そこに抵抗はなかったのか。

 「ありのままの部分を出すということは凄く勇気が必要でした。この写真集をみた人が<いいね>と言ってくれたら凄く嬉しい。逆に言うと今まではそれが怖かったんだと思います。でも挑戦するからには全てを出す、という感じでやろうと覚悟を決めていました。どう思われてるということをいちいち考えていたらそれはできなかったと思うから、どう思ってもらってもいいですという気持ちで、今の自分自身を前面に出せたらいいなという気持ちです」

誤解を受け入れる覚悟

板野友美

 この日のファンクラブイベントでは、素の板野友美が現れていた。どこかほんわかしていて、笑顔が絶えなかった。関わった人が口々にするのは<初めの印象とは異なり、優しく、気遣いの人>だ。しかし、世間一般にはストイックな仕事ぶりや誰にでも平等に、且つ飾らない態度がクールに映り、かえって誤解を招き批判を浴びることもあった。

 「<そういう風に思う人もいるんだな>と一意見として聞き入れるようしています。自分のことが好きではないという人がいたとしても、それは突っぱねるのではなくて<そういう意見もあるのだな>と受け入れています。でもやっぱり<好きだよ>という言葉は嬉しいです。色んな人の意見があって当然だと思うので、それに怖がって偏っちゃうよりも、どんどん色んな私を出して<好きだ>という人がより増えたら良いなと思ってやっています」

 「好きという意見にも<ナチュラルな私が好き>という人と、<キメキメな私が好き>という人と、色んな人がいると思います。なので色々やった方が両方の方に応援して頂けると思うから、色んな私が出していければいいなと思います。それは、自分自身がその自分をそんなに好きじゃなかったとしても、見せる仕事としては、そういうのも大事なんじゃないかと思っています」

 「昔の方がもっと<自分はこう見られたい>という気持ちがありました。でも今はどういう風に見られたいという思いはあまりなくて、その場に応じてありのままの気持ちでいたいとは思います。この仕事をしていると難しいですが、逆にそんなに自分自身を演じているというのはないかもしれません」

板野友美

 「だからけっこうクールと思われているのかもしれないけど、自分としては素直に思っていることを言っちゃうから、内に秘めて何かを隠しているという訳ではないです。誤解を受けるのは、クールなイメージだったり、あまり思っていることが顔に出なかったりとか、ポーカーフェイスなイメージがあるからだと思います。だからこそ人間らしいところがもっと出せる写真集がいいんじゃないか、と思ったんです」

 「日常の私を知っている人は全然私がクールではないということはわかっていると思うんですけど。ダンスナンバーだとキメキメの表情や踊りだったりするので余計そう見えてしまうのかもしれません。なので『#いいね!』は、歌でもMVでも普段の私に一番近いものが出すようにしました。それは今回の写真集もそうですし、これからはさらに女優業にも力を入れてやっていきたいと思うので、そうした部分では人間らしい私が見せられて、ダンスナンバーなどの方では決められた私が見せられたらいいなと思います」

 「みなさんが知っている私はAKB48時代などのイメージが強いと思いますので、今知っている方にとっても新たな発見を得て欲しいですし、昔のままのイメージを持っている方には写真集を見て頂いて<大人になったな>とか、<こっちも好きだな>とか<前の方が好きだな>とか、色々なことを思って頂けたらいいなと思います。何より、目に触れる人が多ければ嬉しいですね」

 曲調の変更、7年ぶり写真集、そしてアコースティックライブ。全ては意図的におこなったものではないが、自然と変化の流れがそうした変化は生まれている。昨年からは本格的に女優業にも挑んだが、26歳を迎えた彼女はこれらを行動をみても次のステージに向けて歩みを進めていることがうかがえる。一つひとつの出来事は<点>に過ぎないが、こうしてみると変化という「線」で結ばれている。外観だけでなく内観にも意識を強く置くようになった板野。そうした思いのうえで積む経験はきっと彼女は内側から更に輝かせることだろう。大人の女性へと。

【取材=木村陽仁/撮影=片山 拓】

撮り下ろし写真

板野友美 板野友美 板野友美
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3rd写真集『release』
3rd写真集『release』の一部 3rd写真集『release』の一部 3rd写真集『release』の一部
3rd写真集『release』の一部