最近整備された、テルアビブ沿いの海岸(筆者撮影)

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 イスラエルという国は、人が変われば、全てが変わると言っても過言ではない。日本のようにサービスの均質化とは程遠いが、人によるので人に合わせればいい。筆者も、このビジネスに10年以上関わるようになり、少しイスラエル化してきているかもしれない。

 さて、以前ビジネスマンから「イスラエル人は、みんな起業家なのですか?」と聞かれたが、さすがにそんなわけはない。起業家、いわゆる起業経験がある人は多く見積もっても2割程度であろう。ホテル、レストラン、公共交通機関だけでなく、公務員、お医者さん、教師など、言わずもがな普通の職業の人たちが、いくら起業家大国とはいえ大多数である。

 ただ、この質問、全員起業家ではないが、全員、起業家「精神」を持っているという答えは、「イエス」に近いだろう。

 例えば、イスラエルにいるとこんなことがある。私が宿泊しているホテルのロビーでお客さんを待っていると、ホテルのコンシェルジュらしき人が近寄ってきた。イスラエル人コンシェルジュの第一声は、私の見た目がアジア人だからだろう。

 「どこから来たのか?」と聞いてくる。私は、ヘブライ語で挨拶をし「ミヤパン(日本から)」と答えると次の相手からの一言は、「日本が大好きだ。去年2週間行ってきて、すごく良かった、また行きたい」とか言ってくれる。私もイスラエルはイイところで、食事もおいしいと会話が始まる。

 そうすると、次のタイミングでは矢継ぎ早に、「今回イスラエルに来た目的を聞かれる」私の仕事「日本企業とイスラエルを繋ぐ仕事をしている」と言ったら、最後で、根掘り葉掘りやっていることを聞かれる。ここまでは、2〜3分の出来事である。

 一通り聞かれた後は、「自分の同級生にすごい医者がいるから、もし医療技術を探している企業があれば、いつでも連絡してほしい」と売り込みが始まる。

 この時は、医療技術を探しているお客さんでなかったらよいが、これが、偶然にも医療技術を探していたりしたら大変だ。次の一言は、「今回のスケジュールの空きはないのか?是非紹介したい」「是非一度食事しよう」ということになる。このようなことは結構な確率でおこる。

 お客様と共に行く企業の訪問先のレストランのトイレなどででも、同じようなことに出くわしたことがある。したたかな人たちである。冷静に考えてみると、日本人が日本国内で同じようなシチュエーションになっても、海外の人にこうしたことを、話しかけることは、まずないだろう。

◆「日本で流行りそう」と言っただけで急展開に持ち込まれる

 以上のようなことが日常茶飯事なイスラエル。イスラエル人がすべからく起業家精神を持っているというのはこういう点なのである。

 また、こんなこともあった。

 あるお客さんと、タイ料理と日本食のフュージョンのお店に行き、帰り際にその店のオーナーと話す機会があった(イスラエルではある国とある国の料理を融合した、「フュージョン」が最近の流行でもある)。

 お世辞抜きの感想として、「こういう料理は今まで食べことがなく、非常においしかった。日本人の口に合うので、日本に進出したら、流行ると思う」そう言うと、ここで真に受けるのがイスラエル人である。

 「本当か、ありがとう。実は日本に展開したいと思って、今、日本に進出する料理の商品開発をした店を最近オープンしたので、味を見てらえないか?」とくる。

 そう、私たちは、夕食を一通り食べた後、もう1件の店で彼の招待で、夕食を食べることになってしまった。勿論ごちそうしてくれた。そこで行ってしまうのも、私たちではあるが、これがイスラエルである。

 私たちが普段生活する日常にチャンスは転がっており、隙あらばとチャンスを狙っているのは、素晴らしいハイテク技術を持った起業家ばかりではないのである。

【加藤 清司】
株式会社イスラテック代表取締役。1980年静岡県浜松市生まれ。2006年、「ある技術」に注目しそのルーツを調べ、イスラエルへと旅立ち2か月過ごす。現在、日本を代表するテクノロジー企業を対象に、イスラエルのスタートアップとのアライアンスを支援。2017年1月、『スタートアップ大国イスラエルの秘密』を出版。