アイルランド戦の会場でラグビーの魅力について熱く語ってくれた伊藤華英さん【写真:編集部】

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年20試合以上観戦の“ラグビー女子”…個人競技の元スイマーだから感じる魅力とは?

 いよいよトップリーグが開幕し、本格的にシーズンが到来したラグビー界。15年に初の大会3勝を挙げ、空前の盛り上がりを見せたワールドカップ(W杯)は19年に自国開催を控え、さらに熱気は高まりを見せている。

 そんな15人の熱いスポーツに魅了された元五輪選手の女性がいる。伊藤華英さん。北京五輪、ロンドン五輪に出場した競泳の元日本代表選手である。可憐な名スイマーと屈強なラグビー。意外な組み合わせに思えるが、「多い時には年間20試合以上、観戦に行きます」という筋金入りの“ラグビー女子”だ。

 果たして、彼女を魅了する理由は、何なのだろうか――。

「ラグビーは多様性のスポーツ。ポジションごとに役割も体格も違う。自分が前に出ないでパスをつないでいかないと、トライを奪うことができない。人間的に魅力的な選手も数多くいます」

 時を遡ること、1か月半前。伊藤さんは6月24日、日本代表のアイルランド戦(味の素スタジアム)の客席にいた。熱戦が繰り広げられた舞台で、ラグビーの魅力について語り始めた。

 興味を持ったのは現役時代。故障したことがきっかけとなった。

「2009年のリハビリ中にラグビー選手と知り合ったんです。三洋電機(現・パナソニック)にいたスクラムハーフ、茂木大輔選手。それまでラグビーに興味はなかったんですが、試合に誘ってもらって、初めて観戦に行きました」

 その時の感想は「ぶつかり合う音が凄い」「痛そう」など、初めてラグビー観戦したファンが誰もが思うであろうものだった。しかし、個人競技の競泳の世界を生き抜いてきたから感じる、おもしろみがあったという。

「競泳にはない部分」に魅了され、本場・豪州でも観戦…“本業”に迫る熱烈ぶり

「トライは1人ではできないということ。トライをするためには何度も何度もパスをつないで仕掛けていく。それは個人競技の競泳にはない部分。加えて、いろんな選手とも交流させてもらう機会を中で、一人ひとりがラグビーという競技を広めたいという気持ちを持った選手が多い。そこにすごく感動しました」

 ラグビーは16年のリオデジャネイロ五輪から男女7人制が採用されたが、野球、サッカーなどと比べると、日本では普及段階にある。オリンピアンとして競技の普及・発展にかける思いに動かされる面もあったという。

 一人の選手をきっかけとして、現在は大学、社会人はもちろん、代表戦もチェック。ラグビーの強豪・オーストラリアで観戦したこともある。さらに、ラグビーのコラムも執筆。日本代表選手との交友関係も広く、一度語り出せば、もう止まらない。

 その姿は、もはやファンの域を超え、水泳の“本業”に迫る勢いだ。

「15年のW杯はエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が『ハードワーク』をモットーにやり続けました。すごくストイックなチームとなりましたが、今はジェイミー・ジョセフHCの下、エディーHCが遺したレガシーをアップデートしてどう戦っていくのか、注目しています。進むべき道を迷うことなく、歩んでいってほしいと思います」

 では、すっかりラグビーの虜となった伊藤さんのように、新たにファンに楽しんでもらえるだろうか。

「まずはナマで一度見れば、おもしろいと感じてもらえると思います。ルールは今、会場(の電光掲示板など)で解説もしてくれますし、見ていくうちに自然と覚えられます。1人が突破して50メートルくらい突破してトライすることもあるし、ダイナミックな展開で観客が一瞬にして沸くことも魅力の一つです」

 加えて、ラグビー選手のキャラクターについてもアピールする。

「スタジアムをファンで満員に―」…元オリンピアンのラグビー普及・発展への願い

「ファンを大事にする、人間性のある選手が多い。だからこそ、ファンも選手と同じ気持ちで一喜一憂していってほしい。今の代表には山田章仁選手(パナソニック)などW杯で活躍した選手も残っているけど、20代の若い選手も増えてきた。野口竜司選手(東海大)、松田力也選手(パナソニック)など、これから飛躍が期待できる選手もいて、応援のしがいがあるチームだと思います」

 日本にとって次なる目標は自国開催の19年W杯。選手たちについては、世界の第一線で戦ってきた競技者目線でエールを投げかけた。

「こうして注目されるようになったのは15年W杯で3勝という価値を残せたから。まずは予選リーグを突破してほしい。そうすることで、世界の目も変わってくると思う。さらなるトップを目指してやっていってほしい。そして、味の素スタジアムをファンで満員にさせてほしいです」

 このように話し、日本代表に期待を込めた。競泳の元オリンピアンであり、大の“ラグビー女子”である伊藤さんは選手と同様に競技の普及、発展を心から願っている。

 ◇伊藤 華英(いとう・はなえ)

 2008年女子100m背泳ぎ日本記録を樹立し、初出場した北京五輪で8位入賞。翌年、怪我のため2009年に自由形に転向。世界選手権、アジア大会でメダルを獲得し、2012年ロンドン五輪に自由形で出場。同年10月の岐阜国体を最後に現役を退いた。引退後、ピラティスの資格取得。また、スポーツ界の環境保全を啓発・実践する「JOCオリンピック・ムーヴメントアンバサダー」としても活動中。現在は「THE ANSWER」で競泳の解説も務める。