マンチェスター・ユナイテッドが開幕から絶好調。ポール・ポグバも昨季とは見違えるようなプレーを披露している【写真:Getty Images】

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「ノリノリ」のマンUが身につけた「威圧感」

 マンチェスター・ユナイテッドが絶好調だ。プレミアリーグ開幕から2試合連続で4-0の快勝を収め、新戦力も存分に力を発揮している。中でもルカク、ポグバ、マティッチらに象徴される圧倒的なフィジカル能力はチームの武器となった。このままいけば今季の優勝有力候補であることに疑いはない。ではなぜ、昨季6位だった名門は復活を遂げられたのだろうか。(取材・文:山中忍【ロンドン】)

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 今季開幕から間もないイングランドでは、マンチェスター・ユナイテッドの強さが話題。計8得点無失点での2連勝スタートを受け、メディアでは「威圧感」や「風格」といった言葉が用いられている。

 国内各紙の報道によれば、この風潮はクラブの地元にはとどまらない。国民の間には、全国区の人気を誇る伝統の強豪に「らしく」あってもらいたいとの願望もあるのだろう。

 ユナイテッドを率いるジョゼ・モウリーニョは、「騒ぎなさんな」とでも言いたげに「昨季も開幕2連勝だった」と反応している。実は新FWの好スタートも同様。今季のロメル・ルカクと同じく、昨季のズラタン・イブラヒモビッチも開幕2試合で3得点だった。筆者も、昨年の今頃は「早くもモウリーニョのユナイテッドらしい」と思っていた口だが、指揮官も言及していたように昨季プレミアでは「6位に終わった」。

 ただし、そう言いながらも、今季は開幕前から「ノリノリだ!」と報道陣の前でおどける余裕さえあった監督の表情には自信がありあり。となれば、懲りずに「すでに昨季とは違う」と思わされてしまう。

 最大の理由は、やはり自信。昨季はモウリーニョに勝るとも劣らぬ自信家のイブラヒモビッチが、唯一にして最大の自信の源に感じられた。それが、今季はチーム全体から自信がみなぎる。

 指揮官にすれば弱点が補われた事実が大きいのだろう。故障者続出にも泣いたCBでは、昨季開幕戦でマン・オブ・ザ・マッチ級のインパクトを見せたエリック・バイリーが、前半戦途中での怪我をとうに過去のものとしている。若く頑強なビクトル・リンデロフという駒も加えられた。

チームの武器となった圧倒的フィジカル能力

 中盤中央には、モウリーニョがチェルシーでの前回優勝時に信頼を置いていたネマニャ・マティッチを獲得。ウェストハムに圧勝(4-0)した今季開幕戦でマン・オブ・ザ・マッチに輝いた新ボランチが、守備範囲の広さと起点としてのパス能力で、昨季開幕戦で先発したマルアン・フェライニからのグレードアップであることに疑いの余地はない。

 コンビを組む相方の信頼度が増せば、ポール・ポグバが攻め上がる頻度と自由度も増す。第2節スウォンジー戦(4-0)、終盤82分にハーフウェーラインから駆け上がってチップキックでネットを揺らしたシーンが好例だ。

 そのチーム3点目を右足アウトサイドによる絶妙のパスで演出したヘンリク・ムヒタリアンは、今季の自信を体現し、かつ発言もしている選手の1人。第2節後のヒーローインタビューでは、チームの「スピリット」と「一体感」を好スタートの理由として挙げてもいる。彼自身、昨季は開幕をベンチで迎えた身。その後も怪我の不運と結果重視を余儀なくされた戦術の影響で、創造性の持ち主には不本意なシーズンとなった。

 だが今季は、指揮官からして「相手チームの方が戦力的に上だとか、1ポイント獲得でも悪くはないなどと考えて試合に臨むことはもうない。どの試合でも勝ちにいく」と公言している状態。本領を発揮しやすいチャンスメイカーは、昨季プレミアでの1アシストを上回る4アシストを開幕2戦で記録済みだ。

 そのうち2度のアシストを受けているルカクは、得点面でもリーグ戦17ゴールだったイブラヒモビッチの穴は埋るという期待と共に、チームのパワーアップを示す象徴でもある。グレアム・スーネスのように「所詮モウリーニョは、苦しくなればロングボールでダイレクトに攻めるつもりだ」と否定的な識者もいる。だが、フィジカルをチームの武器の1つとして持っているに越したことはない。

格下が恐れおののくマンUの迫力。今季の優勝有力候補に

 引いて守る格下との対戦や実力拮抗の強豪対決では、高さや強さが物を言うセットプレーが勝敗を分けるケースもある。今季のユナイテッドは真剣にデカい。例えば、奮闘していたスウォンジーからハーフタイム前に奪った先制点。コーナーキックからの得点には相手のゾーンマークを問題視する向きもあるが、マンマークで対応できる駒が足りないチームは他にもあるはず。

 あの場面では、ヘディングがバーを叩いたポグバの他にルカクとマティッチも身長190センチ台。リバウンドを押し込んだバイリーとマーカス・ラッシュフォードは180センチ台だが、平均身長188センチのユナイテッド選手5名が相手ゴール前に並んでいた。

『スカイ・スポーツ』のスタジオ解説を務めたティエリ・アンリは、試合後に「対戦相手はユナイテッド戦で1-0にはされたくないだろう」と言っていた。昨季ならば逃げ切られる恐れを意味していたところだが、今季は「打ちのめされる恐れ」を意味する発言だ。90分間を眺めれば4点差で負けるほど悪くはなかったスウォンジーにしても、終盤の4分間で3点を追加されてノックアウトされた。

 開幕戦でやられたウェストハムのスラベン・ビリッチ監督が「あのフィジカルとスピードの共存は恐ろしい。他チームもウチの二の舞になるだろう」と言っていた通りの結果となった。

 スウォンジーは先制機を逃してもいたのだが、追う展開となった場合の今季の精神力はまだ試されていない。いわゆる強豪同士の対戦も10月半ばのリバプール戦までお預けだ。とはいえ、現実主義の指揮官らしい強靭さと、クラブ伝統の攻勢が共存しつつあるチームは末恐ろしい。格下を圧倒し、同格からも勝利をもぎ取り得る「モウリーニョ率いるユナイテッド」は、今季プレミアの優勝有力候補だ。

(取材・文:山中忍【ロンドン】)

text by 山中忍