リマスターと未発表曲によって、プリンスの本質が立体的に明らかになる『パープル・レイン』デラックス盤(Album Review)

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 オリジナル盤のリリースから33年の時を経て、この6月にリリースされた『Purple Rain Deluxe』は、天に召されたプリンスからの贈り物のような作品だ。同名の半自伝的映画のサウンドトラックとして製作されたこのアルバムは、かつてリリースの1か月後に彼にとって初のビルボードNo.1アルバムとなり、その後24週に渡ってトップに君臨し続けた。プリンス&ザ・レヴォリューションとしてのバンド名義のアルバムも、本作が初めてであった。

 『Purple Rain』のリマスターは、そもそもプリンス自らが作業に携わる形で、2014年に制作が報じられていた。「Let’s Go Crazy」や「Computer Blue」の激しくソリッドなギター・サウンドがダイナミックに響き渡り、リズムトラックは一層パワフルに、そして「When Doves Cry」のベースレスなアレンジによるスリリングなバランス感覚も明瞭に立ち上ってくる。ミネアポリス・サウンドのエレクトロニックな質感が、不思議なほどに厳かな響きを演出する「The Beautiful One」や、繊細なギターのタッチからふくよかなハーモニーまでをじっくり確認することができる「Purple Rain」に至るまで、素晴らしいリマスターと言えるだろう。

 ディスク2は、厖大な未発表トラックを残していると言われるプリンスのライブラリから、当時の楽曲群が収録されている。「The Dance Electric」は、旧友のミュージシャンであり本バンドメイト=アンドレ・シモンに提供した楽曲のセルフ・カバー。「Computer Blue (“Hallway Speech” version)」や「We Can F**k」と並んで、10分越えの熱い陶酔感へと誘う長尺トラックになっている。また、当時のライブでもレパートリーに挙げられていた「Pessessed」は、エキゾチックなフレーズも散りばめられた妖艶でエクスペリメンタルなナンバーであり、正式な音源化は本作が初めて。『Purple Rain』と関わる楽曲が多く、世界観の広がりを伝えるディスクになっている。

 さらに、CD3枚組+DVDのエクスパンデッド・エディションでは、ディスク3がシングル・ヴァージョンやB面曲を収めた内容となっており、「Let’s Go Crazy」や「I Would Die 4 U」のダンサブルな長尺ヴァージョンも楽しめる。DVDは、1985年に『Prince and the Revolution LIVE』というタイトルで本国リリースされたライヴ・ビデオ。「Purple Rain」ツアー終盤、ニューヨークのキャリアー・ドーム公演の模様が収められている。驚異的な熱量をもって歌にギターにダンスにと大車輪の活躍を見せるプリンスだが、「Do Me Baby」辺りからの照明を控えめにした演出と集中力を惹きつけるパフォーマンス、そのスピリチュアルなムードの構築が凄い。「I Would Die 4 U」から始まるアンコールの爆発的な熱狂も、そのムード構築を前提にしていることが分かる。

 生前のプリンスの手によって、より現代的にクリアになった音像。自ら選曲した貴重な未発表トラック。そしてシングル音源や当時のライブ映像も加えられることで、30年以上前の『Purple Rain』という現象には、新たな命が吹き込まれることになった。自らをポップ・スターと位置付けることで、濃密かつ豊かなコミュニケーションを目指したプリンスの本質が、より立体的に明らかにされる。そんな天国からの贈り物だ。(Text:小池宏和)


◎リリース情報
アルバム『パープル・レイン DELUXE』
WPCR-17821/2 2,800円(tax out.)
アルバム『パープル・レイン DELUXE – EXPANDED EDITION』
WPZR-30757/60 4,800円(tax out.)
2017/06/23 RELEASE