今年結成15周年を迎え、メジャー3作目となるフルアルバム『遥』を発売するLACCO TOWER

 ロックバンドのLACCO TOWERが23日に、メジャー3作目となるフルアルバム『遥』を発売する。この作品は今年結成15周年を迎えた彼らが、敢えて変化を惜しまない部分と、ブレずに進化した部分の両面が記録された1枚だ。この新譜について、LACCO TOWERのボーカル・松川ケイスケとベース・塩崎啓示の2人にインタビューをおこなった。バンド史上初めての外部プロデューサーとして亀田誠治を招いた事や、結成15周年を迎えた事などを質問する中で、松川は「15年やってきたので、何をやってもLACCO TOWERはLACCO TOWER」と振り切れている様子。結成から15年、本作の制作時にはメンバー同士がぶつかる場面もあったという。塩崎は「もっと深い所に踏み込めた瞬間だった」と当時を振り返る。紆余曲折を経て完成した本作や、これからのバンドの活動について語ってもらった。

知らぬ間に凝り固まっていた僕たちがいた

――今回のアルバムタイトルはリードトラック「遥」から?

松川ケイスケ そうですね。アルバムのタイトルは最後に付けたので。「『ここを目指していこう』とストーリーが始まって、全然違う方向に展開されていって、最終的にこうなった」という様なものになったと思います。そう意味で、最初に思い描いていたものとは全然違う作品になりました。

 僕らの作品は毎回「こういう風にしよう」という様な明確なイメージがあるわけではないのですが、「こんな風になるんじゃないかな?」というのは自分達のマンネリもあって、何となくわかってもいました。映画のパート1からパート2、3と順に観ている様な感じで。そういうものが自分たちの中で良くも悪くもありましたが、でも今回は全く想像していない物になりました。

塩崎啓示 去年やったツアー『Major 2nd Album「心臓文庫」リリースツアー“心造旅行”』のファイナル(11月)の1週間前くらい前からレコーディングが始まっていました。3月に出したミニアルバム『薔薇色ノ怪人』とほぼ同時期でした。どれがミニアルバムになるのか、アルバムになるのかもその時は決まっていなかったのですが。

 でも、基本的なスタンスは今までと変わらないです。真一ジェット(Key)が作った曲についてイメージを伝えてくれるのですが、それがアルバムの方向性に繋がるかと言えば別の話で…。とりあえず、作っては録ってを繰り返していきましたね。それでミニアルバムのコンセプトなどを話し合った時に、自ずとフルアルバムの色も見えてきました。ミニアルバムを僕らが「黒」と呼んで、割とロックでエッジが効いている曲をメインにしようと決まったので、フルアルバムは真逆な「白」でいこうと。

――「遥」はいつくらいに出来たのでしょうか?

松川ケイスケ 意外と早かったですね。元々出来上がって、レコーディングもしていました。その後に、亀田(誠治)さんに1曲プロデュースで入って頂く事になって、僕らの曲を聴いて貰ったところ「『遥』をもう一度アレンジしてみよう」という事になって。そこでもう1度歌詞や、全体的なアレンジを見直しました。最終的に今回のアルバムでは、最後に完成した曲になりましたね。

塩崎啓示 亀田さんのプロデュースについては、色々なご縁がありました。これまで僕らはセルフプロデュースにこだわってやってきました。今年で結成15周年ですが、外部の方と一緒に制作したのは今回が初めてです。今回が大きなターニングポイントになるな、と感じたのはそこです。知らぬ間に凝り固まっていた僕たちがいたのかなと。

 0から1を一緒に作るのではなくて、もう出来ていたものに対して「LACCO TOWERはこれで良いんだよ」という事を言って貰えたというか。いじくられるよりも「良い物は良い」と言って貰えた上で、そこに対して「歌詞を少し変えてみようか」「構成、アレンジを増やしてみようか」という事を教えて頂けたのもとても勉強になりました。今回は、亀田さんだったからやろうと思えたのかもしれません。

――亀田さんの印象的だったディレクションなどはありますか。

松川ケイスケ とにかく優しかったですね。「相手がどういう人間で、どういう事を考えているかという事がわからないと本質的な話ができない」というスタンスの様で、最初はくだらない話やお互いの人となりがわかる様な話をしてから、歌詞の話をしていきました。

 「ここはこうのほうが良いと思うんだよね」みたいに。逆に「このワードが良い」とか「これは駄目」というのは全くありませんでした。「こういう目線から見ると、こういうのも良いんじゃない?」という提案ばかりでした。

 一番印象的だったのは、「サビを全部同じ歌詞でやってみようよ」という事でした。今まで100曲以上作ってきて、それは今までやった事がなかった。「そういう事もして良いんだ」と感じました。

塩崎啓示 そういうのは普通と言えば、普通ですよね。“LACCO TOWERっぽさ”は、1番2番で言い回しを変えたりするのが当たり前というか、「普通でしょ」と思っていた。亀田さんの提案は、僕らの引き出しの1番手前にあるアイディアだったりするわけですよ。でも今まで僕らにとってそれは、自信をもって投げられる1球ではなくて。

 例えば、最後のサビが続いて一カ所ブレイク(演奏休止)があって、キメ(リズミックに演奏が合う箇所)の場所があります。そこは凄くシンプルになっていて、それは亀田さんの案です。今までだったら、ギターでスライド入れたり、鍵盤でバーッとやってしまったり、ブレイクに何かを入れたがっていた。でも「何にもしなくて良いから」、「ここはこういう場所。音を伸ばして、それからドーンと入る」とディレクションが入りました。あまりにシンプルで「本当に良いんですか?」と(笑)。そういう切り口はとても新鮮でした。

 自分のベースに関しても、普段から亀田さんが演奏する、同じ楽器なので「甘い」とか厳しく言われると思ったのですが。意外とそのままで、逆に「自信もっていこう」と言ってくれました。あとは、皆の顔色を見て士気を高めてくれましたね。普段はドラムとベースから録音していくのですが、今回は全員で録るという事にも挑戦しています。

松川ケイスケ 変なこだわりだったな、と(笑)。自分が思っているこだわりと、ただ凝り固まっている事というのは紙一重な気がします。そこに対する考え方やプライドというものを、大先輩だからこそ溶かしてくれたのではないかな、と思います。そこは本当にありがたかったです。

――メジャーデビュー時に取材させて頂いた際も「変なプライドが無くなった」とお二人がおっしゃっていたことを覚えています。

塩崎啓示 メジャー1発目のリリースの時は「インディーでもメジャーでも、ブレないLACCO TOWER」という狙いがありました。割と尖ったまま挑戦して、インディーの頃からのお客さんも一緒に皆でメジャーに行く、という感じの1枚でした。今回「白」の方に楽曲を寄せたのは、間口を広げるという狙いがあります。『ドラゴンボール超』のエンディングテーマということもあって、お茶の間に「とりあえず1回入ってごらん」みたいな。「中にはめちゃくちゃ『黒』の曲もあるけど両方ともLACCO TOWERだから」という感じで。

――今後もプロデューサーを迎える、という事は考えていますか?

塩崎啓示 機会があれば是非ともやってみたいです。

松川ケイスケ とても勉強になりました。

制作時の衝突と一致団結

『遥』ジャケ写

――アルバムには、3曲目の「純情狂騒曲」の様なプログレ調の楽曲も入っていますね。

塩崎啓示 そうですね。この曲は真一ジェットがギリギリの精神状態まで追い込んで生まれた曲でもあるので「おいおい、大丈夫か」と思ったりもしましたけど(笑)。まず曲の構造を理解するのに時間がかかりました。彼は寡黙であまり語る人ではないので、デモを最後まで聴いて、聴き終わった瞬間に皆で大爆笑しました。どストレートな曲もあったり、変拍子やBPMや調が変わったり、また戻ったりを巧みにしれっと使ったりするところが彼の良さでもあって。この曲も最初は、完成版よりも、もっと難しかったです。ワクワクする曲ですね。

――他の曲も同じように制作していった?

松川ケイスケ 一番歌詞を作るのが早かったのは「夕顔」という曲でしたね。これは凄く早かったです。真一ジェットが曲を持ってきた段階で最初から最後までさらっと書けてしまう、というのがアルバムを作っている時にたまにあります。そういう意味で、この曲は印象に残っています。

 曲を聴いた時に「不倫の曲にしよう」と思いました。そこから早かったです。僕が不倫の曲を書くのが得意というのもあるのですが(笑)。アルバムでも結構艶やかさは出ていたりして。さらっと聴いて頂ける様な物にもなっているのですが、好きな人はたまらないだろうなと。

 中高年の男性の方は、その人の生き様だったり、何をしてもお洒落だったりするじゃないですか? それは背格好や外見的な物は勿論あると思いますが、その人が今まで通ってきた道程だったり、声のトーンや雰囲気だったりします。僕らは今まで「どう見てほしいのか」「どうあるべきか」という事をある意味で意識的に前に出してやってきました。それで今年結成15周年目を迎えて、これから「ロックバンドとしてどういう風に音楽を届けていくか」という事を考えた時に、ある程度、姿形で片付く年齢は終わったと考えました。

 やはり説得力だったり、滲み出る感情だったり、感覚だったり…。僕が言うからこその何かだったり、LACCO TOWERが弾くからこその何かだったり、が出ないと駄目だなと。

 そういう意味で全体を聴くと、さらっと聴ける内容かもしれませんが、そこから僕らの本質が自然に出ているのではないかと思います。歌詞に関しても「これを書いてやろう」というのはあまりなくて、割と素で出てきたものが多いです。結局、自分の知っている範囲内の言葉しか使えないですしね。本当に使いたい言葉や表現というのは、今までの自分の知ってきた中で滲み出てくるものだと思います。割と表層的なところよりも、「自分が今何をやっているのか」「自分が何でロックをしたいのか」ということを自問自答している様な制作期間だった感じがします。

――それは、何か心境的な変化もあったのでしょうか。

松川ケイスケ メジャーデビューして3年経ちました。僕らは10代の頃からバンドをやっていて、とにかく「きらびやかな世界で自分がそこにいる事」が大切だった。でも僕は小難しい事を考えることが好きなので、「僕らが音を鳴らしている事は皆にとってどんな意味があるんだろう?」という事を考える様になりました。そういう心境の変化はありましたね。あとは、このアルバムを出すタイミングで折角なら今までと違う領域でチャレンジをしたい、ということも勿論ありました。

 15年やってきたので、何をやってもLACCO TOWERはLACCO TOWERです。だから表層的な事はどうでも良くて、本質を見てくれれば、そういう意味で、今作はあまりこだわりがないというか。だから衣裳も全然違うものにしてみましたし、ジャケットも将来沢山の人々に聴いてもらえるものを想像できる様なデザインにしています。

塩崎啓示 今作に関して僕はバンドが変われた曲として「遥」は勿論推しています。あとは、「喝采」という曲が印象的ですね。これも制作期間の後半にできた曲です。僕たちが地元でやっているフェス『I ROCKS 2017 stand by LACCO TOWER』が4月に終わって、すぐにアルバムの最終のレコーディングでした。でもフェスで一杯一杯で、その曲ができていなかった。それで不安が凄くありましたね。

 でも、そのフェスに際してバンドというか会社(塩崎が代表取締役を務める、株式会社アイロックス。LACCO TOWERメンバー自ら所属し、運営している)の皆で向き合って、話し合いをしました。ぶつかり合いましたね。実は15年やっていても、何となくで進んできたコミュニケーションがあった事に気づきました。「実はこう思っていた」と言うのは中々言いづらいですよ。もっと深い所に踏み込めた瞬間でした。そのタイミングで皆、爆発した感じです。

 それが終わって、真一ジェットがすぐ“ぽんっ”とこの曲を上げてくれて。それから寡黙な彼が「この曲は『I ROCKS』の曲です。だからBPMを169にしました」と。それだけで凄く気持ちが伝わりました。そこから皆、言葉無しにその想いに向かって「絶対良い曲になる」と制作しました。集中力が凄まじかったです。そこで初めて「もう言葉はいらない」と思いました。だから想い入れが凄くあります。その話し合いがあって、一致団結したタイミングで出来た曲です。

――松川さんはその時の話し合いはいかがでしたか?

松川ケイスケ そうですね。「溜まっていた物が出たんだな」という会ではありました。それと同時に「ここから何かまた生まれるんだな」と、その瞬間に思える様な場でしたね。僕は爆発していません(笑)。僕は僕なりの爆発の仕方をしたのかな。やっぱりメンバーでも役割があって、全員が全員爆発する人でもないので、そういう意味では正直になれた時間だったと思います。

16歳で高校にいかない選択もある

――その他にできた曲は?

塩崎啓示 「火花」ですね。

松川ケイスケ 「火花」は大変でしたね。真一ジェットは曲を作る時にあまり僕のブレス(息継ぎ)の事を考えない。この曲はその真骨頂というか、超人でも多分歌えないと思います(笑)。これは結構変な録り方でレコーディングしましたね。1行ずつ録っていったりして。ライブでは何とかやると思うのですが、さすがにレコーディングとなると…。「遥」以外はまだライブで披露していないので。

――「遥」は「薄紅」に続き、再びの『ドラゴンボール超』のエンディングテーマとなりますね。

松川ケイスケ 書き下ろした曲ではなかったのですが、お話を頂いて「是非やらせてください」という事で実現しました。2回目という事もありまして、番組に対して家族感があって(笑)。親近感が沸いてしまって。自分の作品みたいな感覚もあったり。タイミング的にも、僕らが丁度小さい頃観ていた天下一武闘会のストーリーで、それもありがたいですね。単純に嬉しいです。

塩崎啓示 ラフの絵コンテしか見ていなかったので、7月2日の初回をテレビで観て感動しましたね。「薄紅」の時も花びらが舞ったり、感動したのですが。悟空と悟飯が出てくるところにぐっときちゃって。

――アニメのテーマに抜擢される事によって、一気に世界のアニメファンが聴く裾野が広がると思いますが、その辺はいかがでしょうか?

塩崎啓示 初回放送の夜くらいから、色んな外国の方が歌っている映像を見かけました。ちょいちょい違っていたりするのですが、日本語で。すごく感動しました。

松川ケイスケ 結構、色々な国の方が投稿してくれていました。歌っている方は中南米系の人が多かったですかね。

――ということは、ワールドツアーも?

塩崎啓示 そうですね、やりたいです。

松川ケイスケ 前も、アジア圏の方が「こちらの国でLACCO TOWERのファンクラブを作ったので、ライブしに来てください」という連絡を頂いたんですが、ちょっと怪しい部分もあって、勇気を持って行けなかったですね(笑)。行けるなら海外よりも、3日間くらい沖縄に行きたいですね。ライブじゃなくて、休みたい(笑)。

――ちなみにこの夏、休みがあったら何を?

松川ケイスケ 沖縄に行きたいです。

塩崎啓示 沖縄じゃ暑いよ(笑)。地元の群馬は内陸なので、海より川の方が良いですね。あとは山。地元の奴とバーベキューやったりできれば満足ですね。

――バンド結成からの15年を改めて振り返るといかがですか?

塩崎啓示 7月に15周年のワンマンライブ『黒白歌合戦』をおこなったばかりなのですが、10年目の時は「LACCO TOWERがいつの間にか自分たちそのものになっていた」と思えました。15年目は「もっと大きくしたい、もっともっと皆を巻き込みたい」とより強く思える様になりました。10年から15年は、自分達も会社化して、メジャーデビューもしたので、飛躍的な5年ではありましたね。

――人間でいうと15歳ですから、次は高校生ですね。

塩崎啓示 進路はそれぞれじゃないですか。別に高校行かなくても良いですし。どの道へ行くのかという話し合いもしっかりできました。この先を見据えた16年目、2020年くらいまでの何となくの夢を、「何となくじゃなくしようぜ」と。本当にLACCO TOWERはここからだと思います。

――ワンマンツアー『遥なる軌跡』も決定していますね。

松川ケイスケ そうですね。これだけの数をワンマンで周るのはLACCO TOWER初だったりもします。僕らの世界観が味わえる、僕らだけの日なので。ファンの方も入ってきたばかりの方も、きっと来て良かったと思って頂ける様な気が今からしています。「こういう楽しみ方をしなきゃいけない」という事も決めていないので、それぞれの感覚で楽しんで貰えればと思います。ファイナルのZepp DiverCity TokyoはLACCO TOWER史上最大キャパの会場となるので、一緒に最高の日を作って頂けると嬉しいです。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

塩崎啓示 15周年を迎えた新作『遥』は、1曲目の「遥」から聴きやすいものになっていますが、僕らが持っている黒い部分と白い部分の両方がLACCO TOWERです。出始めのバンドとはちょっと違いますが、コクがある一枚になっています。これを聴いてワンマンに来て頂ければ嬉しいです。

【取材=小池直也】

作品情報

メジャー3rdアルバム

・タイトル:遥
・発売日:8月23日
・商品番号:COCP-40093
・価格:3000円+税
・収録曲:

1.遥(はるか)【フジテレビ系TVアニメ「ドラゴンボール超」エンディング主題歌】
2.喝采(かっさい)
3.純情狂騒曲(じゅんじょうきょうそうきょく)
4.葉桜(はざくら)
5.夜鷹之星(よだかのほし)
6.火花(ひばな)【ザスパクサツ群馬 2017公式応援ソング】
7.擬態(ぎたい)
8.夕顔(ゆうがお)
9.葵(あおい)
10.夕立(ゆうだち)

M1 作詞:松川ケイスケ/作曲:LACCO TOWER/編曲:亀田誠治
   プロデュース:亀田誠治
M2〜10 作詞:松川ケイスケ/作曲・編曲:LACCO TOWER