ネイマールはPSG加入後すぐに圧巻のパフォーマンスを披露している【写真:Getty Images】

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デビュー戦から傑出したパフォーマンスを披露

 2億2000万ユーロ(約290億円)の移籍金でバルセロナからブラジル代表FWネイマールを獲得したパリ・サンジェルマン(PSG)。モナコに所属する18歳のフランス代表FWキリアン・ムバッペまで加入するのではないかという噂もあるが、移籍市場が閉まるまでにどのような動きがあるだろうか。(取材・文:小川由紀子)

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 8月13日に行われた第2節のギャンガン戦で、この夏PSGに移籍したネイマールが、リーグアンデビューを飾った。

 アウェイ用の黄色のジャージに身を包み、左サイドで先発、フル出場。62分、カバーニの得点をハーフライン付近からのロングパスでアシスト、82分には自らが起点となった攻撃を、カバーニのパスを受けてフィニッシュと、デビュー戦で1ゴール1アシストの結果を出した。

 残念ながら現地へ行けずにこの試合は映像で見たのだが、画面で見ていても際立っていると感じたのはネイマールの視野の広さだ。フランス人には、一般的に視野の広い選手が少ない。やはりこの点でずば抜けた優れたヴェッラッティもイタリア人だ。かつてリーグアンに所属した松井大輔も、絶好のポジションでフリーになってもなかなか仲間が気づいてくれない、というジレンマをたびたび感じていたことと思うが、これは一種のお国柄、あるいは民族性ではないかと思う。

 たとえばレストランのウェイターさんやショップの店員さんが(その道の専門家であるギャルソンと呼ばれる人たちを除き)いくら合図を送ってもまったく気がつかないといった経験を、フランスを訪れた方はしたことがあるのではないかと思う。

「全体を見回すってことをしない人たちなのかな?」と思う場面は、日常生活でもよくあるから、サッカーにも当然それは表れているのだが、そこへいくとネイマールのレベルは別世界だった。

 前半、残念ながらマルキーニョスのヘディングシュートはポストに当たったが、同胞DFへ出したパスもタイミングや距離感は絶妙だった。

 さらに素晴らしいのは、パスを出した後の動きだ。パスを出した瞬間に次の場所に移動、しかもあの瞬発力とスピードでこなすから、ここにいたと思ったらもうあそこに…という、いわゆる『ユビキタス』な存在になる。

 選手はパスを出すときには次の動きを計算しているものだが、そのスピードと正確さ、実際にそれが攻撃アクションにどう直結するか、といった点で、ネイマールの動きは、特にこのリーグではずば抜けていると感じた。

デビュー戦は左サイドで出場。組み合わせはどうなる?

 クラブ側の目論見どおり、チアゴ・シウバやマルキーニョス、ダニ・アウベス、チアゴ・モッタ(イタリア代表だがブラジル人)らブラジル軍団との呼吸も合っているから、チームへの順応も問題なさそうだ。

 デビューを迎えてメディアでも話題になっているのが、ネイマールのポジションについて。

 ギャンガン戦は予想どおり左サイドでのスタートだった。しかしもともと広く動き回るタイプの選手だ。そしてコンビを組むカバーニは、センターフォワードのポジションを好む。ただそれは、彼の発言やプレーから推察する限り、「ボックス内のゴールに近いところから的を狙うのが得意なので真ん中に張っていたい」ということであって、ポストプレーを担う純粋なセンターフォワードというタイプとは違う。

 むしろ献身的なカバーニは守備貢献やセットアップにまわる動きも多く、前任者のブラン、そして現在のエメリと、指揮官たちもカバーニのプレースタイルを高く評価している。よって0トップ気味になっていくのが現実的な方向性という気がする。

 右サイドには、この試合ではディ・マリアが入った。PSG加入後について言うなら、彼はとんでもない神がかり的なプレーを見せることもあれば、透明人間になることもあり、その差が人並み以上に大きい選手であるから、ルーカスがいることは心強い。

 ルーカスは縦の突破に関しては、スタジアム中をドッと沸かせる痛快なプレーを見せるが、いかんせんその後のフィニッシュに(めったに)結びつかないので、そこへネイマールのような相棒がいれば、ルーカスの花道プレーが結果につながるチャンスも増えるだろう。

昨冬に加入のドラクスラー、昨季奮闘も夏に移籍?

 となると気になるのは、昨季の冬に加入した23歳の若きドイツ代表、ユリアン・ドラクスラーの処遇だ。左サイドがネイマールの固定ポジションになるなら、彼の出番は激減する。

 昨冬の入団後、初の国外移籍、しかもシーズン途中からの参戦だったにもかかわらず、彼が時間を置かずに順応して戦力となったことは、PSGの後半戦の奮闘に大きなプラス材料となったと感じた。彼が2点目をマークしてPSGがホームで勝利を挙げた(4-0)、チャンピオンズリーグのバルセロナ戦でのプレーは中でも印象的だった。

 いま現在、『バルセロナがリベンジに奪い取る』、など移籍の噂も出ている。出場機会が減ってしまうのなら、W杯を控えたこのシーズン、よりプレーできるクラブへの移籍を本人も考えることだろう。パリで「おっ!?」という好パフォーマンスを何度も見せてくれたので、去ってしまうのは残念だが。

 それにしても、イブラが去って、PSGのエースとなったと思ったのも束の間、わずか1シーズンでネイマールを迎えることになったカバーニ。

「良い人なんだけどね……頑張ってるし」と、認められながらもなぜか主役になれないタイプ、というのは、どの世界にもいるのかもしれない。

 彼は、たとえメディアから批判されている時であっても、やさしい笑顔でミックスゾーンを通り過ぎるナイスガイだ。でもやはりアスリート。負けん気は強い。イブラがいた時代も「彼の影に隠れた存在にはなりたくない」という思いはしっかり発信していた。

 今回のネイマール人事には、クラブのために良いことと頭で理解はしていても、胸の中にはさざ波が立っているのではないかと勝手に想像してしまう。

貴重な存在だったフランス代表MFも放出

 そして、マテュイディは1年経ってようやくユベントスへ移籍となった。昨年の夏、ポール・ポグバをユベントスからマンチェスター・ユナイテッドに移籍させたタイミングで、マテュイディをユベントスに動かすというのが、2人を預かる辣腕エージェント、ミーノ・ライオラの青写真だったと言われている。

 そしてエメリ監督は、昨夏PSGの指揮官に着任したとき、自分の構想にマテュイディは必要ないと考えていた。彼が使いたかったのはアドリアン・ラビオ。今季も、開幕前のスーパーカップ(対モナコ)から第1節、第2節とマテュイディはベンチスタートだった。

 たしかに90分落ちない体力が売り、というフィジカル派のマテュイディは、エメリ監督の好みではないかな、という感じはあったが、選手にとっても監督の構想から外れるのは仕方のないこと。

 しかしブラン監督時代にPSGの絶対スタメンとして切磋琢磨したおかげでフランス代表でもレギュラーの座を築いたのだ。新たな戦場でのチャレンジで、さらに一回り成長できることだろう(と願う)。

 外国人部隊ばかりのPSGで、マテュイディはフランス人報道陣にとって、唯一、自国語でコメントをくれる貴重な存在だった。彼自身もそれを自覚していたようで、難しいゲームの後、誰もが立ち止まらず過ぎ去っていく取材エリアで、彼はそれが自分の任務とばかりに足を止めて取材に応じていた。今後はラビオが、その役割を引き継ぐことになるのだろうか……。

ムバッペ加入の可能性。驚きのシナリオも?

 そして、移籍マーケットも残り10日という時点で焦点となっているのが、キリアン・ムバッペのPSG移籍が実現するか否か。

 先日、新たにPSG育成部門のダイレクターに就任した、選手としても監督としてもPSGのOBであるルイス・フェルナンデスは「ファイナンシャルフェアプレー違反を避けてムバッペを獲得するためにはあと3、4人、あるいは5人を放出する必要がある」とスペインのメディアに話している。

「いま、彼が現実的に考えているのは、2、3のクラブ(PSGを含む)。そのうちのひとつはモナコでの盟友バンジャマン・メンディが移籍したマンチェスター・シティだ」

「しかし、フランス代表、そしてW杯のことを考えれば、あと1シーズン、モナコに残るのは決して悪い決断ではない」

 心の迷いがコンディションにも影響しているのか、開幕戦のトゥールーズ戦は先発したが75分に退き、第2節のディジョン戦はベンチスタートで出場はなく、第3節のメス戦はメンバー入りもしなかった。モナコのジャルディム監督は「我々には彼を守る必要がある。彼の周りにはいろいろなことが起きていて、まだ18歳の彼が100%のコンディションを保てないのは当然だ」と擁護している。

 仮にムバッペがPSGに加入すれば、ネイマール×カバーニ×ムバッペという、超強力攻撃ラインが誕生することになるが、個人的には、有能な育成者であるジャルディム監督や大先輩ファルカオのもと、モナコであと1年、成長を続けて欲しいと思う。

 とはいえ、何が起こるかわからないのがサッカー界。ディ・マリアやドラクスラーらを手放して、ムバッペを獲得!?、というのも、なくはないシナリオだろう。

(取材・文:小川由紀子)

text by 小川由紀子