北朝鮮に面した中国の港で、ディーゼル油の荷積み作業中だった船で火災が発生した。死傷者は出なかったが、船は全焼し、沈没した。ディーゼル油は、北朝鮮向けの密輸品だった。

事故が起きたのは、国境の川・鴨緑江を挟んで北朝鮮と向かう合う遼寧省丹東の東港でのこと。中国のデイリーNK対北朝鮮情報筋によると、今月8日、タンクローリーから40トンのディーゼル油を船に積み込む作業を行っていた途中、いきなり火の手が上がった。タンクローリーにも引火したが、関係者が消火作業を行った結果、タイヤが燃えるにとどまり、爆発も起きなかった。しかし、船は全焼し、沈没してしまった。

それでも、関係者は胸を撫で下ろしている。

爆発しなかったことで、公安当局にバレなかったからだ。

もし大事故となっていれば、公安当局が調査に乗り出し、密輸であることが発覚していただろう。中国政府が対北朝鮮経済制裁を強化している中での密輸だけに、罰金刑では済まない可能性もある。

このような中朝間の密輸には、両国の国境警備隊が関与していると伝えられている。

中国当局は5月から密輸を厳しく取り締まるようになったが、中国商人は辺防隊(国境警備隊)を抱き込み、石油製品など様々な製品の密輸を続けている。また、北朝鮮の国境警備隊も、密輸船と接触し違法なビジネスに手を染めている。

国境警備隊は、最近まで国境を守るとの名目で何隻もの船を出動させていたが、燃料不足で1隻しか運航させられなくなった。今や、中国の業者に「助けてほしい」と泣きつく有様だ。

火災の原因は明らかになっていないが、ディーゼル油に混ぜられている廃油に火がついたものと見られている。制裁により燃料不足が深刻さを増す北朝鮮では、廃油が混ぜられたディーゼル油が大々的に売られている。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、中国の商人は油に廃油を混ぜたものを北朝鮮に密輸する。それを受け取った北朝鮮の商人は、さらに廃油を混ぜて市場に流通させる。

低質のディーゼル油のせいで、車のエンジンが故障したり、部品が摩耗したりする事態が続発している。そのため、ディーゼル油の値段は下がっているが、部品の値段は高騰する現象が起きている。

今年1月から5月までの5ヶ月間、中国が北朝鮮に合法的に輸出したディーゼル油、重油、ガソリンの量は6万5000トンあまりに達する。これには、年間50万トンと言われているパイプライン経由の原油供給は含まれていない。

これを考えると、今回、海の藻屑と消えた40トンは微量だが、喉から手が出るほど燃料を欲しがっている北朝鮮にとっては、非常にもったいない話となった。

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