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 マネジメントにおけるコーチングのアクションは、マネジャーが業績などの事実を把握すること、マネジャーが解決策の仮説を立てること、マネジャーとメンバーとで方向性のすり合わせをすること、マネジャーとメンバーとで方向性の合意を形成することに分解できる。方向性のすり合わせは、コーチングのための5つの質問を繰り出すことができるようになると、各段に実現できるようになる(第44回)。

 すり合わせをした上で、メンバーと合意形成していくわけだが、この段階では異論や懸念の解消を行うことが、合意形成の確度を上げるということが、演習を積み重ねる中からわかっている。

 異論や懸念を解消するスキルを分解した結果、解消度合を高めるために最も効果のあるコアスキルは、合意形成のための4つの質問のスキルである。日経ビジネスリーダーシップセミナーの講師を務めさせていただいているが、同セミナーでは、「1時間で必ず合意形成できる質問スキル」と銘打ってくださっている。

◆4種類の質問を繰り出していく

 4つの質問とは、次の質問だ。

(1)洗い上げ質問
・「気になる点はありませんか」、「ひっかかる点はありませんか」というような、異論や懸念を洗い出す質問で、答え方が自由な拡大質問のスキルを用いる。

(2)掘り下げ質問
・「洗い上げ質問で出したくださった意見のうち、最も心配な点はどの点ですか」、「ご意見のあったAとBでは、どちらを先に検討したいですか」というように、最も深刻な懸念は何かを掘り下げていく質問で、答え方が絞られる限定質問のスキルを用いる。

(3)示唆質問
・最も深刻な懸念に対して、例えばそれが「時間がないからできない」という問題であれば、「もし、スケジュールを調整することができれば、やってみますか?」「もし、他の業務の調整ができて、この課題に取り組む時間を捻出できれば、取り組みますか?」というように、ある前提をおいて、合意形成をしていく方法だ。

(4)まとめの質問
・最後に行う合意の確認も、「ではやりなさい」という命令ではなく、「では、スケジュール調整する前提で、実施するということでよろしいでしょうか」、「では、他業務の調整をする前提で、取り組んでみるということで、どうでしょうか」というように、質問により合意確認する方法だ。

◆トップダウンだけではパフォーマンスは上がらない

 読者の中には、「なんとまどろっこしいことをやらねばならないのか」と思う人もいるに違いない。「上司の命令に従うのは、部下の義務だろう。なぜ、命令してはいけないのか」と思う人もいるに違いない。

 その答えは、どちらのやり方が、パフォーマンスを上げるかということにあると、私は思う。1から10のスケールで、マネジャーはメンバーに、10のレベルのパフォーマンスが発揮されることを期待しているとしよう。

 マネジャーが10をやれと、命令をする。一方的に命令されたメンバーは、腹落ちも、納得もしておらず、もしかしたらいやいやアクションしているのかもしれない。パフォーマンスは6しか上がらないとしよう。

 一方コーチングを行い、4つの質問で合意形成したとしよう。メンバーが改善したいこと、メンバーがマネジャーにサポートを得たいことをふまえて助言し、さらに異論や懸念を解消するための4つの質問をしていく中で、マネジャーが期待する10のレベルは、その時点で例えば7程度に低下しているかもしれない。マネジャーがやってほしいことと、メンバーが実行したいこととずれが生じているからだ。

 しかし、コーチング手法を用いれば、すり合わせと合意形成が緊密にできているので、メンバーのパフォーマンスは上がり、8のパフォーマンスを実現できる。命令による6のパフォーマンスよりも、コーチングによる8のパフォーマンスの方が高いので、コーチングを実践する価値がある。