G大阪戦では豊富な運動量と確かな戦術眼を活かし、チームを勝利に導いた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 8連勝を含む10戦無敗が止まった後、一時は勢いに陰りが見えていた柏だったが、直近の5試合は3勝2分と再び上昇気流に乗ろうとしている。
 
 中村航輔のビッグセーブ、中川寛斗のハイプレスなど、堅い守備で粘り強く勝ち星を積み上げてきた前半戦の連勝に対し、現在は下平隆宏監督が「ゆっくりした攻撃と速いカウンター、2つの攻撃を使えるようになってきている」と手応えを見せるように、攻撃面の充実が窺える。無敗を続けるこの5試合、神戸戦では3得点、清水戦では4得点と複数得点を叩き出し、今節は1得点に終わったものの、創出したチャンスの数ではG大阪を凌駕していた。
 
 なかでも突出した働きを見せるのが、ここまでリーグ戦全試合に出場し、10得点・9アシストを記録しているクリスティアーノである。柏の攻撃を牽引する背番号9は、試合開始早々からG大阪のウィークポイントを見抜いていた。
「相手の守備陣形を見た時に、ウイングバックの背後にスペースがあったのは即座に分かった。そのスペースに自分のパワーとスピードをうまく生かして、相手に脅威を与えるプレーができると思っていた」
 
 G大阪戦で、クリスティアーノは走行距離11.146キロ、スプリント回数29回というデータを残している。これは両チームを通じて最多の数字であり、同じくG大阪の攻撃のキーマンであるアデミウソンの走行距離8.960キロ、スプリント回数4回と比較すると、その存在感の大きさは一目瞭然だった。
 
「クリス(クリスティアーノ)は前を向かせた方が相手にとっては脅威。シンプルに背後を狙える時は、クリスを走らせることを意識していた」
 大谷秀和は、G大阪戦における攻撃の狙いをそう振り返った。一発で相手の背後を取れるなら、突破力に長けたクリスティアーノを使わない手はない。前節清水戦の2得点は、まさに彼の圧倒的な個の力から生まれたものだ。
 
 ただ、前線でエネルギッシュにプレーし、得点・アシストに絡むだけではなく、クリスティアーノはチーム全体の戦術にも好影響をもたらす。大谷は、さらにこう続ける。
「クリスがフィジカルの強さを生かして、幅広く走ってくれるおかげで、相手ディフェンスを引っ張ってくれる。そこでガンバの中盤が空いたら(キム)ボギョンを使い、さらにそこで相手が引いたら(小林)祐介を使う。空いていくところで起点を作り、落ち着いてゲームを進められた」
 新加入のキム・ボギョンがもたらす攻撃のアクセントは、柏に新たなる武器になりつつあるが、「クリスが前でディフェンダーを引っ張ってくれるのでスペースができる。自分はトップ下のプレーがしやすい」と、キム・ボギョンも円滑な攻撃が実現できている理由にクリスティアーノの存在を挙げた。
 
 したがってG大阪戦では背後を狙うだけのカウンター一辺倒に終始することなく、長短のパスを織り交ぜる効果的な攻撃が可能となった。前線の連係によってG大阪の守備を崩す場面も見られた。
 
 キム・ボギョンの加入や、怪我で出遅れたハモン・ロペスとユン・ソギョンの復調もあって、柏の外国籍選手の4つの枠をめぐる争いは激しさを増している。G大阪戦では昨季12得点のディエゴ・オリヴェイラですらメンバー外という状況だった。しかしその5人の外国籍選手の中でもクリスティアーノは絶対的な存在だ。個人で局面を打開でき、チーム戦術の幅を広げ、なおかつ守備も献身的にこなせるからだ。
 
 かつて柏がタイトルを獲得した時、北嶋秀朗、工藤壮人という「9番」を背負った“エース”の存在があった。リーグ戦は残り11試合。柏が6年ぶりのタイトルを手にするために、クリスティアーノの爆発は絶対に欠かせない。
 
取材・文:鈴木 潤(フリージャーナリスト)