「ラスト、もう一本!」
 大阪駅の地下街。地下鉄御堂筋線の改札口脇にシレッと構える串処・松葉で往生際が悪い中年男、ひとり。
 ひょんな発見から、八尾空港のまわりを思いっきりさ迷い、熱くなった。
 きっかけは、上空から見えた見事なX字タイプの交差滑走路を発見したことから。生駒山上空をかすめ、伊丹空港へと着陸態勢をとった機内からだ。
(これ、ミニ羽田空港じゃん!)
 大阪での仕事を終え、気になっていた空港へ行ってみよう! というワケで、スマホの地図をプイプイやり、あのX字滑走路を持つ八尾空港を目指す。
 この空港は、大阪市営地下鉄谷町線の終点・八尾南が最寄り。地下鉄の駅なのに、地上にあって、スグとなりに車両基地がある。まず、駅から見える珍景に思わず「す、スゲエ!」。
 地下鉄の車両が地上で群れになっていて、そのバックには生駒山地。
「北にポコっと盛り上がってるのが生駒山、正面に見えるのが信貴山や」
 永遠と話し続けそうな駅前自転車駐輪場のおじちゃんから、レンタサイクルを借りる。この駐輪場の敷地も、もともとは八尾空港の前身、軍用空港のものだったと教えてくれたおじちゃんに「行ってきま〜す」と手を振り、空港のまわりをひたすら走る。
 エプロンには小さなプロペラ機がズラリと並んでいる。羽田に似たその空港は、いま、大きな旅客機などの飛来こそないが、一人・二人乗りの小型機の拠点として存在している。
 ここからひとつ、またひとつと、タクシングする小型機。滑走路を駆け、生駒山地に向けて飛び立つ姿を見ていると、時間を忘れて見入ってしまう。
「もうちょっと行ってみるか」

 空港と生駒山地の間にJR関西線や近鉄大阪線が走っている。
 小型機と同じようにチャリを生駒山地へ向けて走らせる。町工場が連なる道を東進、やがて線路にぶつかった。
 柏原という駅のまわりを徘徊。近鉄道明寺線という小さなローカル線と、JR関西線が接続している。近鉄側の小さなホームを見ると、石積みの古い停車場をかさ上げした痕跡、発見。
 「これまさか、蒸気機関車時代のもの、だったり、しない……!?」
 地図を見ると、藤井寺のほうには前方後円墳がいっぱいで、北にはかつて蒸気機関車時代に賑わった竜華操車場・機関区の跡地があることがわかった。が、おじちゃんにママチャリを返す時間が迫っている…。
 八尾南駅の駐輪場へ向けて、大和川の河川敷を伝って戻る。高校生たちの部活動タイムとなり、屈託のない笑顔に出会えて、なぜかホッとする。
 藤井寺の前方後円墳のほうから流れてくる、1500年の歴史をはらんだ南風を受け、北側にある竜華機関区の煙を妄想しながら、のんびりとペダルを踏む。生駒山地の稜線を背に…。

興奮と後悔、ノスタルジーとリベンジ

 串処・松葉──。隣りの客がトイレで呑み場を外したとき、スマホをまたちょっとペラペラとやると、「これは深すぎる」とひとり興奮する。
 なんと、八尾空港へ向けた引き込み線や、阪和貨物線という廃線跡が、存在しているらしい。しかも、地図をよ〜く見ると、JR関西線から八尾空港へ向けて、きれいな曲線を描いて延びるレールの跡が浮き出ているじゃないか! 
 「ええっ! やっぱりそうなの!?」
 思わず声を出してしまう。先の道明寺線は、明治時代の河陽鉄道が敷いた線路で、「近鉄の路線の中で最も歴史が古い」らしいのだ! ダメだこりゃ。もう一回、ゆっくりと巡らなきゃ。
 こりゃもう一本、呑むしかないやろ。
 いや、もう一度行くしかない八尾。

この連載は、社会福祉法人 鉄道身障者福祉協会発行の月刊誌「リハビリテーション」に年10回連載されている「ラン鉄★ガジンのチカラ旅」からの転載です。今回のコラムは、同誌に2012年11月号に掲載された第7回の内容です。

鉄道チャンネルニュースでは【ラン鉄】と題し、毎週 月曜日と木曜日の朝に連載します。

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