新天地の札幌で2得点を挙げているジェイ。チームをJ1残留に導けるか。(C) J.LEAGUE PHOTOS

写真拡大

 23節を終了し、勝点20で15位の札幌はここ数試合、残留圏スレスレの状況を綱渡りで歩き続けている。降格圏の16位・大宮とは勝点1ポイント差、17位の広島とは同2ポイント差と危機的状況にある。
 
 ひとつでも多くの勝点を積み上げなければならないなかで、とりわけ直接対決は絶対に落とせない“大一番”となるが、22節の甲府戦もそう言えるゲームだった。1-1で引き分けたその試合は、甲府がグループでのパスワークを軸に札幌を圧倒。ホームの札幌は苦しみながらも相手のミスに助けられ、なんとか勝点1を拾った。厳しい表現かもしれないが、それが現実だった。
 
 だからこそ、開始10分に奪った先制点があまりにも貴重だったと言える。そしてそれを奪ったのが、この夏に加入した新戦力、元イングランド代表のFWジェイだった。
 
 エース都倉賢の出場停止もあって、背番号48は札幌加入後初先発。「コンディションはまだ100パーセントではない」としながらも、「やはり、スタートから試合に出られるのは嬉しい」と引き分けという結果には不満足気ではありながらも、初先発しての得点に喜びを隠さなかった。新天地デビュー戦となった7月29日の浦和戦でも途中出場から得点しており、出場4試合で2得点とまずまずの滑り出しを見せている。
 
 昨季まで2年間磐田でプレーし、この夏まではフリーの立場だったが、その理由を「Jリーグで引退したいと思っているので、Jクラブからのオファーを待ち続けた」とのこと。他国からのオファーは複数届いたが、それらはすべて固辞したという。
 
 そんなイングランド人FWだが、得点のことについて問うと常に素気ない。これは決して悪い意味ではなく、「得点を取るのが我々FWの仕事だよね? だから、得点を取ることは喜ばしいことではあるが、求められた仕事を果たしたに過ぎない。DFが相手のクロスを跳ね返すのと同じようにね」と、点取り屋として生きる以上は、得点を奪うことのみが自らの存在証明だと捉えている様子だ。
 前述の浦和戦で決めたヘディングシュートがホーム側のゴールに突き刺さったため、「ホームのサポーターに向けて、良い挨拶になったのでは?」と振ってみたのだが、「確かに、あちら側のスタンドにはウルトラ(欧州での熱心なファンの呼称)が集うから、彼らが喜んでくれたのならば、喜ばしいね」としたものの、直ちに「でも、自分としては得点を奪えるのならば、どちら側のゴールでも構わないと思っている」と強調した。
 
 さらに言えば、デビュー戦での得点も彼にとっては特別なことでもないらしく、「デビュー戦だろうと、5戦目だろうと10戦目だろうと、我々ストライカーに求められる仕事はまったく変わらない。後に振り返った時に、いろいろと回想するのかもしれないけれど、その時々にはデビュー戦だろうとなんだろうと関係ないよ。いつでも求められるのは得点。それがストライカーというものだろ?」とキッパリ。さながらマンガ「ゴルゴ13」の主人公のごとく、依頼主からの要求を淡々とこなすスナイパーのような物言いだ。
 
 現在、札幌はJ1残留を目指して奮闘中。ジェイ自身、昨季は磐田でJ1残留に貢献しているが、それを実現するためのポイントを聞いてみた。すると返ってきたのは、「そうだなあ…。まあ、ストライカーが点を取ることだな」とニヤリ。その責務を果たすにあたっての重圧は感じないのか? という問いには「何位を争おうとも、この世界では重圧から逃れられない。ストライカーが重圧から解放されたいのならば、得点を取るしかないね」とも続けた。
 
 これが本場、欧州のストライカーの矜持である。甘さをすべて排除し、ストイックにゴールだけを目指す。そうした欧州規格の本物の勝負師が、北国の雄を2001年以来のJ1残留へと導いてみせる。
 
取材・文:斉藤宏則(フリーランス)