犬に関する研究や実験は世界中で数多く行われていますが、家庭の中のお互いによく知っている犬同士の研究というのは非常に少ないのだそうです。
この記事では、そんな数少ない家庭犬の行動についての研究を紹介いたします。
2匹以上の犬がひとつの家庭で暮している場合、その力関係は家庭によって様々ですね。
その力関係や犬同士の対抗心が犬の行動にどんな影響を及ぼすのかを観察した結果をお伝えします。

同居犬の力関係が行動に及ぼす影響の研究概要

観察のための準備

研究を実施したのはアメリカニューヨーク州のカニシアス大学の2人の教授です。
犬を2匹飼っている37の家庭を訪問して、研究のための協力を得ました。
まずは、それぞれの犬がどれくらい競争心や対抗心が強いかを測定するために、飼い主にアンケートに答えてもらいます。
このアンケートは『犬の行動の査定及び研究のための質問事項(C-BARQ)』と呼ばれている決まった形式のものです。犬の行動についての研究でしばしば使用されます。
競争心や対抗心が強いか弱いかは、食べ物など犬にとって魅力的なものがある時に他の犬に対して攻撃的な行動を見せる頻度によって決定します。
こうして、それぞれの家庭のそれぞれの犬が、競争心や対抗心の「強い方」「弱い方」に分類された上で実験観察が行われました。

いよいよ実験

実験が行われたのはそれぞれの家庭。犬にとって日常的な環境です。
そこで実験助手が食べ物の入った2つのお皿を2匹の犬の前方のやや離れたところに置きます。犬たちは人間がリードを持っていて勝手にお皿の食べ物には近づけません。
次に1匹の犬だけがお皿に近づき食べることが許されます。食べ終わるとすぐに犬はリードを引かれて部屋を後にします。1匹目の犬が食べ終わって部屋を出るかどうかというタイミングで2匹目の犬が自由にされます。2匹目の犬は部屋を出て行く1匹目の犬に付いていくか、食べ物を食べるか自分で選ぶことができるというわけです。

準備段階で「競争心や対抗心が弱い方」に分類された犬のほとんどは、部屋を出て行く同居犬に付いて行きました。「強い方」に分類された犬の多くは食べ物の方に行きました。
けれど、2匹目に選択の自由を与えるタイミングを「1匹目が部屋を出るかどうか」という短時間から、「1匹目が部屋を出て5秒後」という少し考える時間の余裕を与えた場合、全ての犬は食べ物の乗ったお皿に直行しました。一連の実験で、1匹目の犬を人間に置き換えた場合でも、同じ結果が出ました。

実験観察からの考察

ごく短い時間で何らかの選択をしないといけない時、「競争心や対抗心の弱い犬」は反射的に無条件で仲間に付いていくことを選んでいると考えられるそうです。
けれど少し考える時間を与えられると、食べ物という自分だけのための選択をすることもわかりました。
「競争心や対抗心の強い犬」の場合は短い時間であっても、自分のための選択をする傾向が強く、反射的に仲間に付いていく行動は少ないようです。
これは「傾向」の話であって、実験観察の結果を全体的に見渡すと、犬が何かを選択や決定する方法は様々なバラエティがあります。特に短い時間で何かを決定しなくてはならない時、犬が普段どのように他者と交流しているかが大きな役割を果たすことが示されています。2人の教授は、より正確な結果を得るためにさらに調査と研究を続けていきたいと述べています。

まとめ

犬を2匹飼っている家庭の協力を得た実験で、対抗心の弱い犬は短時間で何かを決定しなくてはいけない時には、反射的に自分の利益よりも仲間に付いていく傾向が強いことがわかりました。反対に対抗心の強い犬は無条件に仲間に付いていくような行動は少ない傾向ですが、短時間でとっさに次の行動を決めなくてはいけない時、犬の行動を左右するのは犬が普段どんな風に他者と交流しているかがキーになります。
このような実験をこうして文字にすると、回りくどくてわかりにくい感じになるのですが、この結果は自分の犬の性格の傾向を正しく把握しておくことの大切さや、犬同士や犬と人間の健全な関係を作っておくことの重要さを改めて思い知らせてくれます。
それにしても、考える時間を与えられると全ての犬はまっすぐ食べ物の方に直行したというのはクスリと笑えて可愛らしいですね。

《参考》https://www.sciencedaily.com/releases/2017/04/170424142212.htm