FC東京から完全移籍で鳥栖に加入した河野が先発で新天地デビューを果たした。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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[J1リーグ23節]鳥栖 3-0 大宮/8月19日/ベアスタ
 
 大宮戦でMF河野広貴が先発で鳥栖デビューを飾った。6月末にフランクフルトへ移籍した鎌田大地に代わる攻撃の中心として、大きな期待を背負っての出場。チームは3-0で快勝したが、河野にとっては少しほろ苦い鳥栖でのデビューとなった。今季は怪我などもあり、FC東京での出場は8試合のみ。リーグ戦は6月25日以来の出場とあって、そのプレーに本来の輝きはなかった。

「コンビネーションはこれからもっと良くなると思うし、パスを出してほしいタイミングで出てこないというのもあったので、それは練習から言っていきたい。あとは自分のコンディションと、試合をやっていなかったので身体をちょっと整えたいなと思いました」と振り返った。そして、わずか49分間の出場で終えたことをこう説明した。

「ゲーム体力と身体がゲーム慣れしていないというのがあったので、ハーフタイムに監督と話して『あと何分くらいはいける』っていう感じでした。足も止まったので」

 ビクトル・イバルボとのパス交換からチャンスメイクしたり、個人技で突破を図ろうとしたり、時には中盤まで下がってビルドアップしたり。ゴールにこそ絡めなかったが、短い時間で見せたそのプレーは、今までの鳥栖の攻撃にプラスアルファの効果を加えるものだった。

 マッシモ・フィッカデンティ監督は試合後、「河野が交代した瞬間に戦術自体を変えないといけないくらい、彼がいたからこそできた戦いというのが前半にできた」と、前半は河野ありきの戦術だったことを明かした。
 
 また、2トップの一角として河野の前に入った豊田陽平は「相手DFがいても預けてキープなり、ターンして自分で仕掛けていくとか、タメの動きやワンタッチでフリックするとかアイデアはたくさん持っていると思う」と彼のプレーに理解を示す。攻守をつなぐアンカーの高橋義希は「中盤に下がってきてボールに触って、前に行くというのが好きな選手だと思いますし、そこでリズムを作ってという形がウチの良さになれば」と河野が中盤に下りてプレーすることも歓迎する。
 
 攻撃だけでなく、守備でも彼は貢献した。原川力や福田晃斗が前線に上がり、中盤の守備バランスが崩れた時にはボランチの位置までスムーズに下がっていき、高橋とダブルボランチのような形で大宮の攻撃の芽を摘んだ。FC東京時代にフィッカデンティ監督の下でプレーしていただけに、その戦術理解度は高く、チームへの献身性も持っているので守備に回ることもいとわない。
 
 河野のコンディションが上がるまでもう少し時間がかかるかもしれないし、チームメイトとお互いのプレーを理解し合う時間も必要になる。しかし、鳥栖の選手は試合中も練習中もよく話してお互いの良さを引き出そうとしており、河野も周りにプレーのイメージを伝えることができるので、チームにフィットする日も近いだろう。
 
 そうなれば、加入会見で河野が口にした「僕の良いところやハードワーク、そういうところを見せられればいいかなと思います」という言葉の実現とともに、今後の躍進を引き出すうえでのキーマンとなるに違いない。
 
取材・文:荒木英喜(フリーライター)