前節のG大阪戦に続き、中村俊輔の左足から貴重なゴールが生まれた。 (C)J.LEAGUE PHOTOS

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 [J1 23節] ジュビロ磐田 1-1 セレッソ大阪/2017年8月19日/ヤマハ
 
 0-1で迎えた試合終盤、磐田は最後の3人目の交代枠を使い、急成長を遂げる2年目のドリブラー荒木大吾を投入する。しかし――投入から7分後の82分、その荒木が足首を痛めて担架で運び出される。
 
 10人対11人――。苦境に立たされたなか、起死回生の一撃をもたらしたのが中村俊輔の左足だった。
 
 この日の背番号10はムサエフとのパス交換のミスから失点に絡み、後半はあまりいい傾向とは言えない低めのポジションでのプレーが続き攻撃に厚みを出せずにいた。珍しく感情を露にし、悔しさからピッチを叩くシーンも見られた。
 
 それでも「最近は(荒木)大吾や(上原)力也といった途中出場の選手がとても良い流れを作っていた。そういう試合の『温度』に入ってきていたから」と、荒木の無念の退場をも無駄にせず力に変える。

 86分、ショートコーナーから川辺駿のリターンを受けて、「パッと顔を上げたら川又が見えた。この前(G大阪戦)と同じように、あまり前には行かないように狙った」と、ファーサイドにややゆったりしたクロスを放つ。そこにジャンプヘッドで合わせたのが川又だった。

「あのクロスに、首を振って持っていけるのは、なかなか日本人にはいない。彼の良さが出た」

 そのように中村も絶賛する、下がりながらの難しい態勢から叩き込んだ技ありの一撃。磐田が土壇場で1-1に追い付いてみせたのだ。
 
 中村俊輔が再びチームを助けた。しかし一方で、この日は、磐田の全員で中村俊輔を救った。そんな展開とも言えた。

 そのように補完し合い、刺激し合い……相乗効果により、今季の磐田は進化を遂げている。C大阪との壮絶なハードワーク対決で、まさかの数的不利な状況になりながら追い付いた執念のドロー劇。チーム一丸で掴んだ、大きな勝点1だ。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)