ロッシェル・カップ、大野 和基『僕英語の品格』(集英社インターナショナル)

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英会話について、「ブロークンでも気持ちが伝わる表現をすればいい」「英語は日本語よりもストレートな言語」と思ってはいないだろうか。しかし、それは勘違いだ。とくにネイティヴとのビジネスの現場では、英語にも「品格」が求められる。日本人が見落としやすい語彙や表現について解説した『英語の品格』(集英社インターナショナル)から、すぐに役立つ英語表現を紹介しよう。

■ネイティヴが聞いてビックリする表現

読者のみなさん、ちょっと質問させてください。以下の英語表現を聞いてネイティヴ・スピーカーがどのような印象を受けるか、お分かりになりますか?

1. 病気で会社を休んでいる人に電話をかけて、
Please get well.

2. アメリカ人が自分の家に来たときに、
Please take off your shoes.

3. アメリカ人に何か提案されて、それを断るときに、
We cannot do it now.

4. 相手の考えに賛成できないときに、
I disagree with you.

5. 誤解が生じてほしくないときに、
I really donʼt want to have a misunderstanding.

6. 「明日までにこれをしなければなりません」と言いたいときに、
You must do this by tomorrow.

英語としてはどれも間違っていないので、これでいいのではないか、という読者もいるでしょう。しかし、このように言われたアメリカ人はいい気持ちはしません。日本人が正しいと思っている英語が実際にはネイティヴにはどのように聞こえるのか、それぞれ説明しましょう。

■pleaseをつけると常に丁寧な言い方になるのか?

日本人が英語について勘違いしている例はたくさんありますが、その1つがpleaseの使い方です。人に依頼するとき文頭にpleaseをつければ、どんな場合でも丁寧になると思い込んでいる日本人が多いように思われます。

1つ目の例文ですが、病気で会社を休んでいる人に電話して、

Please get well.

と言うと、ネイティヴにはどのように聞こえるでしょうか。「どうか早くよくなってください」という意味になると思っている日本人が多いのではないでしょうか。

実はこれは「早く仕事に戻ってよ!」というような圧迫感のある命令口調に感じられてしまうのです。「早く回復してほしい」という気持ちを伝えるには、

I hope you feel better soon.

と言えばいいのです。決して難しい表現ではありません。pleaseは必ずしも丁寧に聞こえるとは限りません。場合によって失礼にあたることもあるのです。

最近は靴を脱ぐところが増えてきてはいますが、ご存知の通り、アメリカでは家の中でも土足が一般的です。そのため、訪問客に靴を脱いでほしい場合は、それをはっきりと頼む必要があります。お客様に失礼がないように靴を脱いでもらいたいとき、あなたならどんな言い方をしますか? 

2つ目の例文のように、

Please take off your shoes.(靴を脱いで)

と言うとこれも不躾(ぶしつけ)に聞こえてしまいます。以下のような言い方が丁寧な表現です。

I would appreciate it if you would take off your shoes.(靴を脱いでいただけるとありがたいです)
Would you mind taking off your shoes?(靴を脱いでいただけませんか?)

I would appreciate it if you …(……していただけるとありがたいです)は丁寧に頼みたいときに非常に便利な表現です。It would be appreciated if … はそれを受動態にした表現で意味は同じです。appreciateを用いた表現はよく使われるので、第4章でもまた説明します。

■英語は日本語よりもストレートな言語である、という誤解

▼a 「できない」「したくない」ことを伝えたい場合

ビジネスの世界でも、ジャーナリズムの世界でも、相手に何かを依頼して断られてしまう状況には数多く遭遇します。しかし、ネイティヴは断るときに、 3つ目の例文のように、

We cannot do it now.(今それはできない)

や、

I do not want to do it now.(今それをしたくない)

というようなストレートな言い方をめったにしません。普通は、

I would rather not do it now, maybe later.(今それをするのはやめておきます。あとでやるかもしれません)
Iʼm sorry but it is not possible given my schedule.(申し訳ありませんが、私のスケジュールからすると可能ではありません)

というように丁寧な表現で断ります。

繰り返しになりますが、日本では「英語はストレートな言語である」と思い込んでいる人が多いようです。

しかし、必ずしもそうではありません。社会的地位が高い人や能力のある人ほど間接的で婉曲的な表現を使います。丁寧に断るには状況に応じて次のような表現があります。

Iʼm afraid that we cannot accept your offer at this time.(恐縮ですが、今のところあなたの提案を受け入れることはできません)
Unfortunately, it would be too difficult to make it happen.(残念ながら、それを実施するのは難しすぎます)
We donʼt think that itʼs feasible.(それが実現可能だとは思えません)
It doesnʼt seem possible to do with our current resources.(現在のリソース[経営資源]では、それは無理のようです)
It requires more expertise than we possess.(我々がもっている以上の専門知識が必要とされます)
We need to take a pass on this one.(今回は遠慮させてください)
Thatʼs a tall order, more than we can handle.(それは我々ができる範囲を超えた難しい注文です)
Thatʼs going to be a tough sell in my organization. Iʼm sorry, but I just donʼt think itʼs possible.(私の組織にそれを売り込むのは難しいでしょう。申し訳ありませんが、可能ではないと思います)

▼b 賛成できないことを伝えたい場合

相手の提案や意見に賛成できない場合、もちろんそれをはっきりと伝えることは重要です。しかし、4つ目の例文のように、

I disagree with you.(賛成できません)

というようなストレートな表現は、実際はあまり使いません。相手の気持ちを傷つけないようにするためには次のような表現があります。

I have a different opinion.(違う意見をもっています)
I have a different view about this.(これに関して、違った見解をもっています)
I have a different point of view.(これに関して、違った視点で見ています)
Iʼm thinking of it in another way.(違った考え方をもっています)

さらに次のように言うと、相手は気持ちよく話を進めようとするでしょう。

Iʼm not sure thatʼs the best approach. Letʼs discuss it some more.(それが最善の方法かどうかよく分かりません。もっと話し合いましょう)
I have some concerns about that approach.(その方法に関して、いくつか懸念があります)
I think we need to give it some further thought.(それについてさらに考える必要があると思います)
I might have some trouble supporting that.(それはちょっと支持しがたいです)

▼c noやnotは非常にきつい拒絶の言葉

「アメリカ人はストレートな表現を好むので、断るときにNOと言えばいい」と勘違いしている日本人は多いと思います。

例えば、「どうしても誤解が生じてほしくありません」と言いたいときに、 5つ目の英文のように、

I really donʼt want to have a misunderstanding.

とストレートに言うよりも、

The last thing I want to do is to have a misunderstanding.(誤解だけは避けたいと思います)
Letʼs be sure to avoid any misunderstandings.(誤解を避けるように気をつけましょう)

というように言ったほうが丁寧な表現です。noやnotを使わないほうが表現がやわらかくなり、相手の感情を苛立たせません。たとえnotを使う場合でも、

I wouldnʼt do that.(私ならそうはしません)

とwouldを使えば、丁寧になります。また、

I would do it differently.(私なら違うやり方をします)

という表現を使うとnotを使わなくても同様のことが言えます。

▼d mustは脅迫的に聞こえる

need to、should、must、have to、had betterは「……する必要がある」や「……するべき」という意味をもつ言葉ですが、ニュアンスの強さが大きく異なります。

しかし、それを正しく使い分けていない日本人が多いようです。これらの単語を間違って使うと、とても失礼なことになりかねません。

日本の学校でよく教えられるhad betterやmustは「絶対にしなければなりません!」という脅迫的な響きがあり、大人同士ではほとんど使いません。

例えば、「明日までにこれをしなければいけません」と言うときは、 6つ目の例文のように、

You must do this by tomorrow.

や、

You had better do this by tomorrow.

ではなく、

You need to do this by tomorrow.

が適切です。

You should do this by tomorrow.

でも間違いではありませんが、shouldはやや強すぎます。これらの単語を強さの順に並べると次のようになります。

must>have to>had better>should>need to

need toが一番ソフトな言い方なので、他人に対して使う場合は最も適切です。ただし、自分の意思で「……しなければならない」という場合は、have toやshouldを使うこともよくあります。例えば、

I should hurry.(急がなきゃ)
I have to do my homework tonight.(今夜宿題をやらないと)

のように使います。

ここでは「……する必要がある」と言う場合にneed toを使うのが最も丁寧であるということを説明しましたが、「……が欲しい」という場合にneedを使うとわがままに聞こえてしまうので気をつけましょう。

例えば、レストランでコーヒーのおかわりを頼みたい場合、

I need more coffee.(コーヒーをもっと欲しいです)

と言うと、催促がましく聞こえます。より洗練された言い方には次のようなものがあります。

I would like some more coffee, please.(コーヒーをもっといただけませんか?)
May I have a refill?(おかわりをお願いできますか?)
When you have a chance, Iʼd like some more coffee.(機会があったらコーヒーをもう少しください)
Could you freshen up my cup?(新しく入れ直していただけませんか?)[まだ残っているのに入れ直してほしいときに使います。ファミリーレストランのようなカジュアルな場所で使うことがほとんどです]

また、誰かの家に招かれた際、コーヒーのおかわりをお願いする場合は次のように頼みます。

I wouldnʼt mind a little more coffee.(コーヒーをもう少しいただければうれしいです)
Do you have any more coffee?([コーヒーポットには]まだ残っていますか?)

ちなみに、カフェで、

I would like a café latte and this cake.(カフェ・ラテとこのケーキをいただきたいのですが)

のように注文すると、店員が、

Did you want this cake?(欲しいのはこのケーキですか?)

と過去形を使って聞き返すことがよくあります。日本語の発想から言うと「昔欲しかった」のではなく「今欲しい」のだから、

Do you want this cake?

ではないかと疑問に思うかもしれません。しかし、このような場合には過去形を使うことが一般的です。今ケーキを欲しくても、欲しいと思いついたのは「今この瞬間」ではないからです。似たようなケースに、

I wanted to let you know …(……についてお知らせしたいです)

があります。これも、知らせたいことを最初に思いついたのは今ではないので過去形を使います。

どうでしょうか。これらはほんの一部。日本人が身につけていない「品格」ある英語表現は、まだまだたくさんあります。ネイティヴとの会話に自信を持つためにも、ぜひ「英語の品格」を学んでみてください。

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ロッシェル・カップ
経営コンサルタント。1964年、ニューヨーク州生まれ。イェール大学歴史学部卒業。シカゴ大学経営大学院修了(MBA)。88年より、安田信託銀行東京本社などに勤務後、グローバル人材育成を支援するジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社を設立し、社長を務める。『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)、『製造現場の英語表現』(ジャパンタイムズ)など多数の著書がある。朝日新聞GLOBEで、英語表現に関するコラムを連載中。
大野 和基(おおの・かずもと)
国際ジャーナリスト。1955年、兵庫県生まれ。東京外国語大学英米学科卒業。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。現在、医療問題から経済まで幅広い分野に関して世界中で取材を行う。『代理出産―生殖ビジネスと命の尊厳』(集英社新書)、『マイケル・ジャクソン死の真相』(双葉社)などの著書、『そして日本経済が世界の希望になる』(ポール・クルーグマン/PHP新書)などの訳書がある。

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(経営コンサルタント Rochelle Kopp、国際ジャーナリスト 大野 和基)