アフリカの米生産量を10年間で倍増するーー。

 日本政府が掲げた意欲的な支援構想が、実を結びそうだ。稲作にとって厳しい環境のサブサハラ・アフリカで、来年には計画した2800万トンの生産量を達成できる見通し。栽培技術や優良種子の普及、人材育成など日本の援助が貢献した。ただ、当初描いたほどの単位収量の向上は実現できず、作付面積の拡大が増産の決め手となった。

 「来年のサブサハラ・アフリカの米生産量目標はおおむね達成できると考えている」。

 国際協力機構(JICA)農村開発部の丸尾信課長はあっさりと言い切った。日本政府は2008年に横浜市で開いた第4回アフリカ開発会議の横浜宣言で「今後10年間でアフリカの米生産量倍増を目指す」ことを内外に約束した。この発足時点で統計が整っていた生産量1400万トン(もみ換算)を基準に、18年に2800万トンを目指す構想だ。

 国連食糧農業機関(FAO)の統計で、14年には2500万トンを上回るまで増産した。大きな災害などがなければ目標数値の実現は十分可能だというのがJICAの判断だ。

 08年に発足したアフリカ稲作振興のための共同体(CARD)は、JICAが国際機関などと協力し、サブサハラ・アフリカ諸国に米増産の自助努力を支援する組織として動き始めた。「各国で稲作の国家戦略を作り、目標に沿った基盤整備や種子生産、人材の育成などを進めた」(JICA)。高収量が特徴のネリカなど優良種子の普及や水の豊富な地域での増産など、単位面積当たり収穫量の大幅な引き上げを目指した。

 日本が国際社会に掲げた野心的な支援プロジェクトは、数字の上では達成する見通しとなった。単純な生産増ではなく、精米技術の向上によって米の品質向上などの面でも効果があったとJICAでは説明する。

 しかし、課題も残った。当初、アジアに比べ著しく低い単収を改善することで増産する計画だったが、「実際には単収よりも収穫面積の伸びの方が貢献した」(JICA)。むやみな農地開発を避けるという考え方を貫くことはできなかった。

 CARDの目的だった増え続ける米輸入を減らすという目標も、生産を上回る消費の伸びに押されて実現できなかった。多くのノウハウを持つアジア諸国を巻き込んだ協力構想も、計画通りには進まなかった。

 CARDは今年末に会合を開き、18年以降の計画を話し合う。課題の米単収をどう引き上げていくのか。稲作農家の収益性を改善していくのかなどが課題になりそうだ。

<ことば> サブサハラ・アフリカ

 エジプトやシリア、モロッコなど北部の諸国を除いたサハラ砂漠以南の国々。多くが後発開発途上国に分類される。