ニック・キリオス【写真:Getty Images】

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W&Sオープン、1日で2試合をこなす強行日程の中で第1シードの難敵を撃破

 男子テニスシングルス世界ランキング23位のニック・キリオス(オーストラリア)は、ウェスタン&サザン・オープン準々決勝で同2位のラファエル・ナダル(スペイン)を6-2、7-5で破る大金星を挙げた。試合直後に、死者13人、負傷者100人以上を出すテロ事件が起きたバルセロナへエールを送る姿をATP中継サイト「テニスTV」の公式ツイッターが動画付きで紹介。悪童として名を馳せる男の粋な計らいに、称賛の嵐となっている。

 キリオスは17日に予定されていた3回戦の世界ランク44位イボ・カロビッチ(クロアチア)戦が雨天順延となったが、4-6、7-6、6-3とフルセットの末に逆転勝利。その7時間後に優勝候補の第1シード、ナダルとの準々決勝に挑んだ。

1日で2試合を戦う強行日程で疲労困憊のはずのキリオスだが、同じくダブルヘッダーとなった世界ランク2位のナダルを圧倒。6-2、7-5と1時間20分で難敵を撃破し、準決勝に駒を進めた。

「ナダルとシンシナティのセンターコートでプレーするなんて、子供に返った気持ちだよ。だから、最高のプレーが見せられたんだと思う」

 ATPワールドツアー公式サイトによると、キリオスは1日2試合の強行日程も、大観衆の中でレジェンドと対戦できたことがモチベーションとなったと語っている。

 そして、試合後には17日起こったテロで傷ついたバルセロナへエールを送った。テレビカメラのレンズにサインするテニス界恒例の勝利の儀式で、キリオスは自分のサインではなく、「Barcelona」の一言とハートマークをマジックで記したのだ。

ファンから称賛の声、「君の優しさと勝利に拍手」「偉大なトリビュート」

 22歳のキリオスは、華麗なトリックショットを得意とするなど高いポテンシャルを秘める反面、気分屋でたびたび素行の悪さが取り沙汰されてきたテニス界きっての“悪童”。昨年10月の上海マスターズでは、子どもが打つようなロブの軌道のサーブを打ったり、相手のサーブでもすぐに諦めて立ち去る無気力なプレーで罰金を科された。さらに、スタン・ワウリンカ(スイス)の恋人を侮辱するような発言をして1か月の出場停止処分を受けるなど、数々の問題を起こしてきた。

 しかし、バルセロナへの心温まる行動は人々の見る目を変えた。ATP中継サイト「テニスTV」が、公式ツイッターで「ニック・キリオスからバルセロナにスペシャルメッセージ」と動画で紹介。すると、ファンからは世界から称賛の声が相次いだ。

「よくやったニック! 君の優しさと勝利に拍手します」

「ニックは本当に素晴らしい。バルセロナに祈りを」

「リスペクトだ。大勝利おめでとう、ニック」

「泣いてしまう」

「一流に触れたね」

「ラファエル・ナダル戦後に、ニックからバルセロナに偉大なトリビュート」

「ニックは人生の悪い時期を抜け出したようだ。彼に幸運を、これからの数々の成功を祈ります」

 テニスは「紳士のスポーツ」と呼ばれる。ナダルやロジャー・フェデラー(スイス)というスーパスターたちは、そのジェントルマンな姿勢から世界中から尊敬を集めている。新世代の旗手と期待されているキリオスは、心温まる計らいとともに大器覚醒の予感を漂わせている。