「治安が悪化する」などの理由で、自分の住まいの近くにカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)を整備することには反対と考える人が66.8%で多数を占め、賛成の人は22.8%にとどまることが、時事通信社の世論調査で分かった。

 IRに関する政府の有識者会議が、7月31日に報告書を公表した。その内容は、ギャンブル依存症対策を盛り込み「世界最高水準のカジノ規制」を謳った自信作のはずだったが、専門家を中心に「水際対策ばかりで根本の解決策が全く見えてこない」と懸念の声ばかりが聞こえてくる。
 「とはいえ、この報告書によって国内のカジノ導入は政府による実施法案作成という次のステージに進むことになります。昨年12月に国会を通過したカジノ推進法案を踏まえ、横浜市、大阪市、苫小牧市、和歌山県、佐世保市など全国各地の自治体が観光や地方経済活性化をもくろみ、カジノ誘致に名乗りを上げてきました。特に筆頭候補として常に名前の挙がる横浜市は、数年前から独自の調査、勉強会などを開き、誘致先は山下ふ頭、経営は民間に委託するなど、かなり具体的なところまで進めてきていました」(経済記者)

 ところが、潮流が変わり始めているという。7月に行われた横浜市長選挙では、従来、カジノ誘致推進派であった林文子市長が「カジノについては白紙」という中立のスタンスを訴え、三選を果たしたのだ。
 「カジノ法案が国会を通った際は『横浜の財政基盤を強固にするためにはカジノは必要』とまで言っていたのですが、選挙中のスタンスの変化の裏には“横浜港湾のドン”といわれる横浜港運協会の藤木幸夫会長が、突如、カジノ誘致反対の姿勢を示し始めたという背景もあったようです。藤木氏が反対の姿勢に変わった理由は、表向き『公募方式では港の先住民である港湾事業者が参入できない。トータルとして横浜にはマイナスと判断したから』とのことですが、一番の懸念は、やはりギャンブル依存症患者の増加や、治安の悪化というリスクの大きさ、市民にくすぶるカジノに対する嫌悪感でしょう」(同)
 圧勝した林市長でさえも、現状のような雰囲気や環境下では、大手を振って誘致に動きづらいのが現状のようなのだ。

 安倍政権の成長戦略の一つとして掲げられたIRだが、今はどこもかしこも外国人観光客で埋まっており、カジノを起爆剤にする意味も薄れてしまっている。国民にとっては、ギャンブル依存症対策が進み、カジノだけが“頓挫”という結果になるのが一番ありがたいのかもしれない。「日本にカジノができれば、行ってみたいか」との問いには「行きたいとは思わない」が76.6%に上り、「行ってみたい」は19.6%にとどまった。