“体にやさしい”という言葉がヘルススタンダードになりつつある昨今、無添加やオーガニックを銘打った商品が巷には溢れています。

しかし実際のところ、この言葉の意味を完全に理解している人はそれほど多くないのでは?

そこで今回は“無添加せっけんのパイオニア”を謳うシャボン玉石けん株式会社に取材を依頼。

無添加の条件や、無添加製品を作り続けるためにどのような企業努力をしているのかなど、同社のこだわりについてマーケティング部の南 藍(みなみ あい)さんにお話を伺いました。

汽車を洗うための石けん

――まずは、シャボン玉石けん株式会社の看板商品「シャボン玉石けん」が生まれたきっかけを教えてください。

シャボン玉石けんを発売したのは1974年です。それまで当社では合成洗剤を製造・販売していたのですが(当時の社名は「森田商事」)、ある時、国鉄(現JR)から「合成洗剤で汽車を洗うとサビるから、無添加石けんを製造してほしい」と依頼がきたんです。

試行錯誤を重ねた末、出来上がった試作品を先代の森田光徳社長が使ってみたところ、何と10年来の悩みだった肌の赤い湿疹がきれいに治まったらしいんです。でも合成洗剤で洗った衣類を着るとまた湿疹が出始めたため、合成洗剤に疑問を持ち調べることに。

その結果、先代社長は「環境や体に悪いと分かったものを売るわけにはいかない」と、全商品を無添加石けんに切り替える一大決心をしました。それが「シャボン玉石けん」の始まりです。

シャボン玉石けん「シャボン玉浴用」/商品パッケージ

価格か安全性か

――それが爆発的人気となったのですね。

いえ、それほど簡単ではありませんでした。原料にこだわり手間ひまかけて作られた石けんは合成洗剤より割高になったことで、流通業者や世間からは見向きもされませんでした。また、当時は「無添加」や「エコ」という言葉も浸透していない時代だったこともあり、売上は一気に100分の1まで激減してしまったんです。100人いた従業員もわずか5人になるなど、苦しい状況が続きました。

それでも先代社長は信念を貫き、石けんへの理解や商品を普及させるための活動を続けました。ブレイクスルーとなったのは1991年、自身で執筆した『自然流「せっけん」読本』の発売です。それまで17年ずっと赤字で苦しい状況が続いていましたが、この本の出版が口コミを呼び、無添加石けんに切り替えて18年目にしてようやく黒字となったのです。

――当時と今とでは“健康意識”に差があったと。無添加が体に良いという認識を広めるまでに、かなりの時間を要したんですね。

はい。その後も地道な講演活動や書類の出版、周囲の協力もあり、今日まで無添加せっけんの製造を続けることができたという感じです。

シャボン玉石けん/発売当初の商品

合成石けんとの違い

――無添加を掲げる「シャボン玉石けん」の特徴は?

シャボン玉石けんには大きく3つの特長があるのですが、まず1つ目は「肌にやさしい」こと。低刺激で無添加(香料・着色料・酸化防止剤・合成界面活性剤を含んでいない)のため、お子様やご年配の方、敏感肌の女性などにも使えます。

2つ目は「昔ながらの石けん」であること。無添加石けんは絹やウールなどおしゃれ着などを含め、何でも洗うことができます。衣類はふっくらと洗いあがるので柔軟剤の必要がありません。

3つ目は「環境にやさしい」こと。当社の石けんは短期間のうちに大部分が水と二酸化炭素に分解されるため、石けんカスも海や川の微生物や小魚のエサになり環境にやさしいのです。

シャボン玉石けん/商品イメージ

――製造方法も従来の合成洗剤とは異なりますか?

当社の無添加石けんは昔ながらの釜炊き製法(ケン化法)を起用し、油脂に含まれていた保湿成分が含まれているので、洗い上がりがしっとりしてツッパリ感が少ないのが特徴です。

シャボン玉石けん/工場写真

また石けんづくりは4~5時間で完成するものが主流ですが、シャボン玉石けんでは1週間から10日間かかります。作り方も機械まかせではなく、熟練の釜炊き職人が五感(見る、聞く、匂う、触る、味見)を使って丁寧に製造しています。

シャボン玉石けん/工場写真

愛犬の毛もふわふわ

――顔や体、衣類を洗うほか、無添加ならではのエピソードがあれば教えてください。

愛用者の方からは、ペット(犬猫)を洗うとき、当社の石けんを使用しているというご報告をいただくことがあります。普通のシャンプーは嫌がるけど石けんだとぺろぺろ舐めているとか、洗い上がりの毛がふわふわになるとか。動物は本能で良いものが分かるのかも…なんて声もありましたね。

ちなみに我が家のペットはモルモットですが、石けんで洗うと臭いも取れて毛がふわふわになりますよ。

シャボンちゃんは41歳!?

――ところで「シャボン玉石けん」といえば、CMでお馴染みのほんわか系キャラクター「シャボンちゃん」も有名ですが…

実はシャボンちゃんのモデルは故先代社長の娘さんなんです。当時0歳だった娘の笑顔を見て「屈託のない赤ん坊の笑みは、世代を問わずみんなをとりこにする。いつの時代にも愛される存在=赤ちゃん」という思いから、先代社長は赤ちゃんをモチーフにしようと決めたそうです。

シャボン玉石けん/シャボンちゃん

キャラクターは企業の「看板」として末永く付き合う存在のため、デザインは何度も推敲を重ね細部にまで注意が払われました。そしてついに「シャボンちゃん」が1975年(昭和50)4月に誕生しました。

現在、シャボン玉石けんの工場の壁には大きなシャボンちゃんが描かれており、社員も工場見学に訪れたお客様も、あの無邪気でさわやかな笑顔に癒されています。

積み重ねた日々が自信に

――今回伺った商品開発にまつわるお話もそうですが、曖昧な表示で“自然派”を謳う商品が増えているなか、これだけ明確に無添加であることを消費者に向けて発信しておられるのは頼もしい限りです。

当社の目標は“世界イチの石けんメーカー”ですからね!これは単に売上を追い求めるだけでなく、その技術で世界中の人々に貢献することを目的としています。

例えば日用品以外では、いま世界中で深刻になっている森林火災の場面で、環境に負荷をかけない石けんの消火剤の開発に力を注ぐなど、新たな分野へ貢献すべく日々研究に努めているんですよ。

そして“無添加石けんのパイオニア”という看板に恥じないよう、これからも肌にやさしいこだわりの石けんづくりを伝え続けていきたいと思っています。

コツコツと築いてきた信頼がロングセラーの道へ。いま世の中に“ヘルシー”という概念が当たり前のように存在するのは、きっとこうした企業の隠れた努力があったからではないでしょうか。

自分の体を磨くように、地球もキレイに。そんな心の美しさがお肌を内側から輝かせる秘訣かもしれませんよ!?