個性的な作家の日記

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日記は、その人の生活の様子や人となりがわかる貴重な記録です。エッセイなどで身辺雑記が語られることはありますが、日記だとほぼ毎日の記録が記されているので、背景を知ることができます。さらに作家の場合は、創作の秘訣のようなものもうかがえるでしょう。

西村賢太の世界

西村賢太による『一私小説書きの日乗:不屈の章』(角川書店)には、芥川賞作家の日常が記されています。果たしてどんな世界があるのかといえば、そこにあるものはとても地味な世界です。著者は長らく日雇い労働をしながら、自分の実体験をベースとした私小説(わたくししょうせつ)を多く発表しています。そこには、うらぶれた生活や罵詈雑言などがあり、荒れた日々が記されているのですが、どこかおかしみがあります。

酒を飲む

著者の生活はとてもシンプルです。昼過ぎに起きて、サウナや野暮用などで外出、帰宅後は夜遅くになってから創作活動をはじめます。ワープロを使えない著者は、ノートに下書きを書いて、その後、原稿用紙に清書を行います。締切から逆算したギリギリの日程でアイデアをひねりだす様子が記されています。一日の終わり、といってもすでに朝から必ず晩酌をしており、焼酎のホッピー割などを楽しんでいます。シンプルながらも、まとまった記録となるとぐいぐい読める不思議な味わいのある作品です。