『ジョジョの奇妙な冒険』に見た山崎賢人の飛躍 “マンガ実写界”を背負って立つ俳優へ

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 スペイン・カタルーニャ地方の海沿いの町・シッチェスに、架空の町・杜王町を再現。そこへ伊勢谷友介、神木隆之介、小松奈々、山田孝之といった原作顔負けのアクの強いスター俳優たちを溶け込ませ、実写ならではの強烈な世界観を構築した『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』。この強烈な世界観を背負って立つのが、マンガ実写界の一線を担う、山崎賢人である。

(参考:『ジョジョ』小松菜奈が語る、“原作もの映画”への取り組み方「どれだけオリジナルにできるかが肝」

 山崎といえば、『ヒロイン失格』(2015)や、『orange』(2015)、『オオカミ少女と黒王子』(2016)と、とりわけ少女マンガ実写化作品に立て続けに出演してきた。その後に続く、『四月は君の嘘』(2016)、『一週間フレンズ。』(2017)でも、そのルックスと爽やかなイメージが、ことごとく原作で登場するキャラクターに見事に当てはまり、どの作品も山崎の出演が発表された段階で納得の声が多く上がっていた。

 しかしながら、今まで山崎は主に、少女漫画原作のヒロインに対する相手役として、キャリアを築き上げてきた。そのため、本作で演じる東方仗助には、これまでの山崎が演じてきた少女マンガの中の王子様とのギャップを感じ、懸念を抱く声が多く生まれたのは、当然の流れといえるだろう。だが山崎は、彼なりの“東方仗助像”を作り上げ、作品の世界観に絶妙にフィットしている。

 杜王町に引っ越してきたばかりの高校生・広瀬康一(神木隆之介)は、不良2人組からカツアゲに遭う。そこへ偶然、仗助が通りかかる。「カツッ…カツッ…」とかかとを鳴らし、響き渡る靴音。その音は、山崎の登場を心待ちにしていた多くの観客の鼓動と重なったことだろう。足元や、身につけたキラリと光るバッジ、それらの細部を、重低音を伴ったBGMに合わせて、カメラはテンポよく、焦らしつつ捉えていく。ようやく山崎の全貌があらわになった時、カメラは煽り気味で自信たっぷりの彼に向かう。178cmの身体を、さらに一回り大きく見せるのだ。

 相手の不良にリーゼントヘアをけなされ、キレる仗助。眉間にシワを寄せ、めいっぱい凄み、さっそく自慢のスタンドを披露する。彼はたしかにぶちギレているのだが、山崎自身の持つ美しい瞳と柔らかい声音が、仗助の持つ根の優しさを、どこか垣間見せていた。

 山崎が最も親密な関係を築いていたのが、警官である祖父・東方良平(國村隼)だ。良平は、警官として町の平和を守ることに情熱を注ぎ、自宅に帰れば娘と孫と食卓を囲む見た目も普通の老人。山崎は奇異な学生服にリーゼントといったキャラの濃い姿で存在しているのにも関わらず、國村と並んで日常を過ごすシーンでは、2人の見た目の差に違和感を感じさせずに自然とそこに収まっている。それはこの2人の間で交わされる会話が、祖父と孫の純粋なそれとして見事に成立していたからだ。國村による山崎へのゲンコツと叱声、あるいは、國村の無理な筋トレを心配する山崎。いずれのシーンからも読み取れるのは、祖父と孫の自然な関係性。日常のささやかなシーンに見られる関係性の〈成立・機能〉が、観客にとって大仰な設定や展開を受け入れ易くしている。 同様にして山崎は、母である東方朋子(観月ありさ)や、康一らとのシーンでも、それぞれの関係性に見事に溶け込んでいる。家族間・友人間で交わされる日常会話こそ、ドラマを進行させる上では重要。こういった作風のものこそ、俳優・山崎の柔軟性が見てとれ、仗助という特異なキャラクターの存在を成り立たせていた。

 スタンドを使っても、祖父を救えないと分かったとき、山崎は涙を流して取り乱す。それまでにないほど感情的になる姿が、強く胸を打った。あのシーンで生まれた激しい感情は、山崎自身が関係性の中で育んできたもの。だからこそ、お決まりの「泣く姿」に収まらないリアルさがあった。いっきに湧き上がる「喪失感」と「自分の無力さ」への苛立ち。それらは山崎が突発的に演じようとして生まれた感情表現ではなく、劇中では本物の親子として2人が関係性を築いていたからこそ、山崎にできた優しい表現に見えた。

 映画の終わり近く、山崎は穏やかな海を前に大きな決意を覗かせる――。それはもちろん仗助の「この街を守る」という決意である。しかし同時に、この『ジョジョ』の強烈な世界観を、果てはマンガ実写界を背負って立つ、山崎自身の「引っ張っていく」という決意にも思えてならない。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

(折田侑駿)