米ジョージア州ジャクソンでの訓練に参加したミリシア「ジョージア治安部隊(GSF)」のメンバー(2017年7月29日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】米南部のジョージア(Georgia)州の人里離れた森の中で、クリス・ヒル(Chris Hill)さん(42)は毎月、友人らと共にキャンプファイアを囲んで語り合ったり、バーベキューを食べたりして数日を過ごす。滞在中、彼らは半自動ライフルを使った訓練も行っているが、これは政府が彼らから武器を取り上げる決定をしたときに対応できるようにしているのだという。

 戦闘服に身に包み、軍仕様の武器で武装した約20人のメンバーからなるグループ「ジョージア治安部隊(GSF)」は週末に集まり、焼け付くような暑さの中で、偵察や実弾を使った射撃の練習、さらには実物大模型家屋への襲撃訓練も行う。

「内戦、暴動、北朝鮮やロシアからの電磁パルス(EMP)攻撃、外国政府による侵略、そしてわが政府が武装解除を狙い国民に銃を向ける場合に備えている」とヒルさんは語る。

 普段は法律事務所で働いているというヒルさんは、2008年に自身が設立したグループで指揮を執るときだけは「ブラッドエージェント」という司令官としての呼称を好む。

 GSFは、現在米国で活動する推定165の「ミリシア」と呼ばれる反政府武装組織のひとつだ。グループの目標はそれぞれ異なるが、政府に対する不信、武装携行の権利をはじめとする個人自由への強い信念、そして昨年の大統領選挙以降は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に対する親近感という点での共通項がある。

 GSFのキャンプ地周辺には、南部連合(Confederate States of America)の旗がはためいている。この旗が想起させるのは、「オールドサウス」における人種差別だ。

■ファミリー

 最近グループに加わったルースター・ジマリア(Rooster DiMaria)さんと妻のイベット(Yvette DiMaria)さんは、隣接するサウスカロライナ(South Carolina)州在住だ。集まりがあるときに、この森で彼らの言う「ファミリー」と合流する。

「同じものを信じ、憲法を信じ、キリスト教を信じ、そして正しい行いをする仲間と過ごす」──これが、ここでの魅力だとルースターさんは語る。妻のイベットさんも週末の集まりに参加した。

 2人とも、昨年トランプ氏が大統領選挙に立候補宣言をするまでは、政治に幻滅していたと話す。

 イベットさんはこれまで、周りから人種差別主義者や同性愛嫌悪者などと呼ばれ小ばかにされることが多かった。しかし今では、同じ考えを共有する仲間がおり、自分たちも同じ気持ちだと明かす女性たちがいるのだという。

 米首都ワシントン(Washington D.C.)にあるアメリカン大学(American University)のキャロル・ギャラガー(Carol Gallagher)教授は、主流派政治家に愛想をつかした多くの超保守主義者は、不法移民や米企業の海外移転についてのトランプ氏のタフな物言いに引き付けられていると語る。

 その中には、反ユートピア的な未来に備える生存主義者(サバイバリスト)もいれば、時に白人至上主義者らをも含む強硬な右翼政治の信奉者もいる。

 ギャラガー教授は「米国史を振り返ると、このような武装した民間グループは当初から存在していた。入植当時、警察や軍隊が確立されていなかったため、人々は自衛のためにこういった組織をつくったというのも関係している」と語った。

■増大する脅威?

 公民権擁護団体の「南部貧困法律センター(Southern Poverty Law Center、SPLC)」が昨年実施した調査によると、米国には623の反政府集団が活動しており、そのうちの165団体がミリシアだという。

 今月12日、バージニア(Virginia)州シャーロッツビル(Charlottesville)で開かれた右派系デモ「ユナイト・ザ・ライト・ラリー(Unite the Right Rally)」で、白人至上主義者と反対派の衝突が起きた。この衝突で、反対派の女性が車にはねられて死亡したことを受け、ネオナチ(Neo-Nazis)や白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(u Klux Klan、KKK)」、「Alt-right(オルト・ライト)」運動、さらにはGSFのように「愛国ミリシア」とだけ名乗る極右グループなどの超保守勢力が改めて注目されることとなった。

 同日のデモにGSFのメンバーがいたのか、デモに治安目的でメンバーを送ったのかとの質問にヒルさんは「ノー・コメント」とだけ答えた。

 米国のミリシア史上、最も広く知られている存在の一人は、1995年のオクラホマシティー(Oklahoma City)連邦政府ビル爆破事件の実行犯ティモシー・マクベイ(Timothy McVeigh)元死刑囚(2001年に死刑執行)だろう。彼は、168人が死亡したこの事件を通じて、革命の火付け役となることを望んでいたとされている。

 ヒルさんは、自身のグループでは、そのようなことは絶対に起きないと主張する。そして、過激な兆候を少しでも示した人物は組織から追い出すと述べた。

 SPLCのベテラン記者であるライアン・レンツ(Ryan Lenz)氏は「こういった組織は米国の法の支配を損なうイデオロギーにより定義されており、その発生元は過激な『陰謀説の園』だ」と語る。そして「問題はそれが暴力に発展するのかではない。発展するのは分かっている。それがいつなのかが問題なのだ」と続けた。
【翻訳編集】AFPBB News