ある大型施設に突如現れた、色あざやかなアート。蛍光塗料で描かれた7メートル以上ある大きな作品は、昼と夜でちがう表情を見せます。

ほかにも、ライトアップされるオブジェや、何十メートルある並木沿いに連なるアート作品の数々…。すべては、音楽フェスで展示されるものなのです。

一流クリエイターたちが、会場を盛り上げる

このような作品が展示される『SONICART(ソニッカート)』は、幕張メッセとZOZO マリンスタジアムで行われる『SUMMER SONIC 2017』の会場内で同時開催されます。

なぜ音楽フェスでアートを展示するのか。SONICART代表の沼野高明さんと、アドバイザーを務める水野健一郎さんに話を伺いました。

(右から)沼野高明さん、水野健一郎さん

ーーまずはじめに、なぜ音楽フェスにアートを展示しているのですか。

沼野:雰囲気作りとして、アート作品を展示するという企画は、実はほかの音楽フェスでも行っていることです。しかし多くのケースでは業者さんに発注していたりして、あくまでも『修飾』という役割になってしまいます。私はそれにあまり共感できなかったので、「サマーソニックでやるんだったら、一流のクリエイターさんにやってもらおう」という所から始まりました。

美術館など、アートの作品だけの展示だと、アートが好きな人しか来ません。サマーソニックという音楽を目的に来た人に作品をアピールできるというのは、いい機会だと思っています。アウェイな環境なのですが、お客さんに合わせるのではなく、SONICARTとして、日本の作家さんやアートを発信していこうという挑戦を続けています。

ーー水野さんがアーティストをセレクトしていると聞きましたが、どのような基準で選んでいますか。

水野:かたよらないように、幅広い世代やスタイルが集まるようにしています。お客さんの目の前で絵を描き上げる『ライブペイント』では、ロックフェス・音楽フェスということで、アート作品からロックを感じるような人に、声をかけています。

沼野:ほかの展示でも、我が道を行きながらも、アートを知らない人も気になる作品を作るアーティストをピックアップしていますね。

ーーライブペイントでは、1人あたり何作描くのですか。

水野:横5.4m、高さ1.8mのキャンバスに2日間かけて描き上げます。5人が並んでそれぞれ描くので、フェスの終わりに5つの作品ができあがります。

SUMMER SONIC 2016より

ーーちなみに水野さんは、自身を『ロック』だと思いますか。

水野:ロックの中でも、パンク寄りな精神はあるかもしれないです。常に破壊願望をはらんでいるところはあります。フェスでは、音楽が圧倒的に魅力的ですし、音楽のフェスだからお客さんも音楽を聴きに来ている。そういう場所で絵を描くということは、余計というか異物的だと思うんです。「別になくてもいいじゃん」という状況なわけですよ。

そこで僕の『壊したい願望』がポジティブな方向に働くというか、「ここに一石を投じたい」という気持ちがあります。

ーーサマーソニックでライブペイントする時、どのような風にやっていますか。

水野:あらかじめ「こういう絵を描く」と決めてきて、それを2日間コツコツ描き上げるというのも1つのやり方です。私も1回目の参加ではそのように描いたんですけど、実際やってみると音楽も聞こえてくるし、その場の空気もあります。

それを実感して「あらかじめ決めていくのはもったいないな」と思いました。なのでそれ以降、何も考えないでその場で描き始めるということをやるようになりました。

ーー現場の空気に反応して表現するって、ちょっとミュージシャンっぽいですね。

水野:そうですね。例えば途中でドラえもんに似たキャラクターを描くと、後ろで「あ、ドラえもんだ」という声が聞こえたり、反応をうかがえたりします。普段は1人で描いているので、声が聞こえてくると「孤独じゃないんだな」って感じます。楽しいですね。

地味なコミュニケーションというか、こっちは背中を向けているのにコミュニケーションできている、みたいな。一方的なのに一方的じゃない、という感覚ですね。

ーーライブアートをするほかのクリエイターの特徴を教えてください。

水野:高松徳男くんは、写真を元にペインティングとしてコラージュをしていく感じです。ウエオカケンタくんは、スタイリッシュな方向でエロティックな素材をまとめ上げることをやろうとしています。毎回、時代背景などをテーマにすることが多いので、メッセージ性を『隠し味』にしています。ロックみたいですね。

植村泰英くんは、抽象表現を得意としています。去年、壁紙のような抽象的なパターンを画面に描き上げましたが、今年は何が飛び出すか…私も分からないですね。サイトウユウスケくんは、ミュージックマガジンの表紙デザインをやっていたこともあって、音楽絡みの仕事が多いアーティストです。今回のラインナップのなかでは、一般の人にとっても分かりやすい絵を作ってくれると思います。

SUMMER SONIC 2016より

ーーサマーソニックでは、なじみのない音楽に触れるキッカケを作ってくれます。SONICARTも、アートを知るキッカケになりそうですね。

水野:音楽って、ジャケットやミュージックビデオなど、ビジュアルがついてくるじゃないですか。そういう密接な関係があるので、ミュージシャンやバンドだけではなく、CDジャケットにも愛着がわいてくる、ということもあります。逆にジャケットだけでCDを買う人もいます。みんなビジュアルが嫌いなわけではないので、ジャケ買いと似たような現象がSONICARTでも起きたら面白いなと思います。

ーーサマーソニックに来るかたたちに、メッセージをお願いします。

沼野:まず、5.4mx1.8mというサイズは、展示会をしたくても「置けない」といわれてしまうケースが多いんですね。そんな特殊な大きさのキャンバスに、2日間で描くというのは、描き手にとっても特殊なことです。それを見て欲しい。

水野:ほかのメンバーは分からないですけれども、どうしても気になることがあれば、その場で直接聞いてもらっても構わないです…集中しすぎて気づかないこともあるかもしれませんが。

ーーSONICARTではほかにも、病院から出ることのできない子どもたちに絵を描いてもらう企画や、若手アーティストの発掘、発信場所としての場も提供しています。SUMMER SONIC 2017に行ったら、音楽だけではなく、アートにも目を向けてみてください!

SUMMER SONIC 2017
2017年8月19日(土)・20日(日)の2日間開催
東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪会場:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)

[文・構成/grape編集部]