アルゼンチン自然科学博物館に展示される恐竜「チレサウルス」の骨格標本(2015年6月23日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】チリ南部で13年前に化石が発掘された、体の輪郭が肉食恐竜ベロキラプトルによく似た風変わりな草食恐竜は、恐竜の進化の「ミッシングリンク(失われた環)」だとする研究結果が16日、発表された。

 英国王立協会(Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)に掲載された論文によると、カンガルーほどの大きさのこの恐竜「チレサウルス」の分類を再評価した今回の研究は、今年発表された新説を補強するものだという。この新説は、長年支持されている恐竜の分類法を書き換える可能性があるとされる。

 論文の共同執筆者で、英古生物学会(Palaeontographical Society)の会長を務める英自然史博物館(Natural History Museum)の研究者、ポール・バレット(Paul Barrett)氏は「チレサウルスが、恐竜の2つの大分類間にある進化の隙間を埋める助けになるのは間違いない」と話す。

 チレサウルスは2015年に初めて世界に公表されたが、その際は草食傾向にもかかわらず、肉食恐竜が属する獣脚類の仲間として扱われた。獣脚類は俊足のベロキラプトルや究極の肉食動物ティラノサウルス・レックス(T・レックス、Tyrannosaurus rex)なども含まれる肉食恐竜の亜目だ。

 だが専門家らは当時、この分類に違和感があることを認めていた。専門家の一人は、チレサウルスを「これまでに発見された中で最も奇妙な恐竜」と表現した。

 チレサウルスの特徴のうち、直立の姿勢、力強い後肢、短い前肢などはすべて、獣脚類を連想させる。だが、骨盤の向きが獣脚類とは逆構造で鳥類に似ていることや、歯が植物のみを食べていたことを示す扁平(へんぺい)で木の葉状の形をしていることなどは、恐竜のもう一つの大分類である鳥盤類と共通の特徴を持っていることを示唆していた。

 よく知られた鳥盤類恐竜としてはトリケラトプスや、推定体重3トンで背中に大きな骨板が並び、脳がクルミ大のステゴサウルスなどが挙げられる。

 バレット氏は、AFPの取材に「チレサウルスは当初、獣脚類系統の初期の派生種のように見えたが、植物を食べるためのこれらすべての適応を獲得したとするのは疑わしく思われた」と語った。

 チレサウルスが生息していたのは約1億5000万年前で、少数の獣脚竜が肉食から離れたことが知られているよりもはるか前だとバレット氏は指摘する。

■共通の祖先

 バレット氏と英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のマシュー・バロン(Matthew Baron)氏は、チレサウルスが恐竜の系統樹のどこに位置づけられるかを確認するために、初期の恐竜の解剖学的特徴を450点以上分析した。そして分析結果は、直観を裏づけるものだった。

「チレサウルスは、草食性の奇妙な初期の獣脚竜ではなく、鳥盤類から分岐した奇妙な草食動物だったことが明確になった」とバレット氏は述べた。

 20世紀の大半を通じて、獣脚類は3つ目の主要な進化系統である竜脚類とより近い類縁関係にあるという点で、専門家らの意見は一致していた。竜脚類には、長い首を持つ恐竜のディプロドクスやブラキオサウルスなどが含まれる。

 だが、どっちつかずで得体の知れなかったチレサウルスは、獣脚類に分類される恐ろしい殺し屋たちが実際には、おとなしい鳥盤類の風変わりな恐竜グループとの間により大きな類似性を持っていたことを示している。

 この大胆な仮説は、バレット氏とバロン氏が3月に他の共同研究者らとともに英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した画期的な研究論文の中で提唱されたものだ。

「われわれが行った分類の再編成は、鳥盤類と獣脚類をこれまでよりも、はるかに近くに位置づけるもので、新種恐竜チレサウルスはこの関係性を強固につなげる助けとなる」とバレット氏は説明する。「これら2つの分類グループにみられる特徴を併せ持つチレサウルスのおかげで、この再編成が正しかったというわれわれの確信はさらに深まっている」

 恐竜が最初に登場したのは約2億2800万年前。その恐竜の時代の到来からそれほど経っていない約2億2500万年前には、鳥盤類と獣脚類が共通の祖先を持っていたとする説を、今回の最新研究結果は後押ししている。
【翻訳編集】AFPBB News